2024年に創立70周年を迎えた「聖ドミニコ学園」。カトリックの精神に基づいて「真理を求め、自由に生きる」を教育理念として、中学高等学校では「高雅な情操と豊かな教養を具えた自覚ある女性」の育成を目指します。
6年間を通じて取り組む独自の総合的な学習・探究プログラム「ドミニコ学」について、探究学習主任の土居嗣和先生にお話を伺いました。
探究学習主任 土居嗣和先生(聖ドミニコ学園中学高等学校)
6年間のプロセスが育む「探究の精神」
2019年、「聖ドミニコ学園中学高等学校」で生まれた独自の総合的な学習・探究プログラム「ドミニコ学」。実社会における諸問題などに探究的に取り組み、主体的に思考を深める力を育むと同時に、課題の設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現といった大学進学後や社会に出てからも求められるアカデミックスキルの基本を身に付けます。
中学1~2年はワークシートを用いたグループワークやインタビュー調査などで情報収集の基礎を学習。中学3年においては、自分の将来像をイメージできるよう職業をテーマとしたプログラムを履修します。高校1年では、沖縄への修学旅行(1月)の事前事後学習としてテーマを決めてグループ学習を実施。情報の収集やまとめ・表現の手法を学びます。
中学2年生のドミニコ学における「地域調査」。周囲に多くの文化施設があるという地域の特色を活かし、アポイントや実地調査、インタビューを通じて地域の学びを深めます。
より主体的な探究姿勢引き出す「ドミニコ学」
集大成となる高校2年では、これまでの学びを基盤に、自ら決めたテーマで個人探究に挑みます。
2023年からは、さらに改良を加え「与えられた課題」から、「生徒が自分で課題を設定する」形にシフトチェンジ。一人ひとりが決めた課題をジャンル分けし、研究領域が近い者同士で思考を高め合う「ゼミ」という方式を導入しました。
「自分で考えていくことと、グループで議論することの双方を、生徒たちが伸ばしていけるようにしました」と土居先生。
(聖ドミニコ学園中学高等学校)
自分で課題を設定する点が、ドミニコ学の大きなポイント。
課題の設定には1学期丸々費やすそう。思いついたキーワードや物事を書き出し、それらをカテゴライズするなかで自分の課題意識を整理する手法を導入。自分の考えを言語化し、体系立てて可視化することにより、自らの関心領域が明確になり、テーマを絞り込むことができるといいます。
その後、生徒たち自らが決めた「課題」を大まかにジャンル分けし、7~8人程度の「ゼミ」としてスタート。それぞれのゼミに、学年担当の先生が一人ずつついて伴走します。
ポスターセッションが養う「伝える相手を意識できる力」
2024年度は睡眠、芸術、流行や「推し」などのゼミを設定。高校2年の2学期には、ゼミ内で「中間報告」として各々が作成したポスターを発表し、その後、ブラッシュアップした成果を、「ポスターセッション」という形で3学期に学年内で発表しました。
高校3年によるポスターセッションの様子。一人5分の持ち時間内に「伝える力」も養われます。(聖ドミニコ学園中学高等学校)
高校3年生では、それまでのテーマを発展的に引継ぎ、前年度のポスターセッションを再びブラッシュアップ。
高2、高3の4つの教室を使用し、高校全学年に向けてポスターセッションによる個人探究成果発表を実施しました。
セッション後は質疑応答が活発に行われていました。(聖ドミニコ学園中学高等学校)
テーマは「金縛りが起こる理由~なぜ夢を見るのか、夢とは~」「佐藤さんはなぜ日本一多い苗字なのか」「性格と知能は遺伝するのか?」「パーソナルカラーが人々の化粧行動に及ぼす影響」など実にさまざま。
どの生徒も、聞き手の生徒とアイコンタクトをとりながら、研究成果を堂々と発表する様子が印象的でした。
真剣に聞き入る同級生や下級生たち。セッションが終わると、各自のiPadでポスターに掲示された二次元コードを読み込んでフィードバックを行います。(聖ドミニコ学園中学高等学校)
ポスターセッション形式を採用した理由として、「スライドショーは何枚でも増やせますが、ポスターという限られたスペースにまとめることで、要点を絞り込み、簡潔に情報を“まとめる”“選びとる”力を伸ばしてほしいと考えました」と土居先生。
また、目の前にいる人に説明するポスターセッションによって、生徒たちは「伝える相手をより意識できる力」を養ったそう。「高2のポスターセッションと比べると、高3では、わかりやすさを意識して改良が加えられた発表が多く見られました」。
「自らの興味・関心を整理し、思考を深めるスキルや他者に伝える力を育むことが、学ぶ意欲を高める方法として有効であると実感しました。こうした学びが普段の教科学習にも生きてくると確信しています」。
(聖ドミニコ学園中学高等学校)
2025年3月には新しい「ドミニコ学」を学んだ生徒たちが卒業。自分の興味・関心の方向性をより明確にできたことで、具体的な夢や希望を持って「行きたい学部」に進学する子が確実に増えたそう。
「指定校推薦入試などで、“高校時代一番印象に残った授業”を問う大学がありますが、“総合的な探究の時間(ドミニコ学)”と書いたという生徒が複数いました。嬉しいことですね」
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