地域の小学校4校、中学校2校の校医をしている鈴木毅先生。「子供たちは本当にかわいいです」と、顔をほころばせ愛おしげにお話してくださいました。父がそうであったように、子供たちの成長を見守りながら、みなさんから信頼されるまちのかかりつけ医でありたい、との強い思い。開業から45年を経て、今では地域住民にとっておなじみ、なくてはならない存在となっています。
小さい頃から医者になろうと思っていた
――医者を目指した理由はお父様の存在が大きいのでしょうか?
そうですね。父親が耳鼻咽喉科の医師だったので、小さなころから将来は医者になろうと思っていました。でも、しっかりと決めたのは中・高校生になった頃です。
ものごころがついたときには父がこの柿生で開業していましたし、母が病院を手伝っているときは、病院で母の仕事が終わるのを待っていることもありました。そのときに父の仕事を近くで見たことが、医師になることに大きく影響していたと思います。
耳鼻咽喉科を選んだのも、父の仕事を間近で見ていたので、どんなことをするのかが分かっていたことが大きいですね。自分の働いている姿が想像しやすかったですし。
また、子供の患者さんが多いというのも理由のひとつです。父親は子供の患者さんに対してとても優しく接していました。父の働く姿を見てきて、これが一番印象に残っていることです。子供であっても丁寧に話し、しっかり症状を聞いてあげて治療をしていました。お母さんや地域の方たちからも、とても信頼が厚かったので、自分もそんな医師になりたいと思うようになりました。
鈴木耳鼻咽喉科医院(川崎市麻生区)
患者さんが納得できる治療を行なうことがモットー
――診察で心がけていることを教えてください。
大学病院や総合病院の勤務医時代に、終末期の患者さんに携わった経験から、患者さんに寄り添い、しっかり向き合う姿勢を学びました。
心がけているのは、「患者さんに納得していただける治療を行うこと」が第一です。もちろん症状が治まれば患者さんは納得されますけど、残念ながらなかなかよくならないこともあります。そんなときでも、よく説明をして、原因としてどのようなことが考えられるのか、どのような治療、薬が有効かなどできることを探し、患者さんの意向も聞いて治療方針を決定していくようにしています。
例えば、のどに違和感があって、自分はのどのがんなのではないかと疑って来院される方がいます。診察するとがんでないことはすぐに分かるのですが、「がんじゃないですよ。大丈夫です」とだけ言っても、患者さんの不安を払しょくすることはできないので、何故がんではないと診断できるのかを患者さんに分かっていただけるように丁寧に説明しないといけません。時にはファイバースコープや鼓膜鏡を使って、モニターに映しながら詳しく説明したり、保存してある以前のデータと比較したり、資料をお渡ししたりしながら、できるだけ分かりやすい説明を心がけています。
――医者の仕事について思うことはありますか?
3歳のお子さんを診察した時の話ですが、40度前後の熱が2、3日下がらず、小児科でも原因が分からなかったと来院されたことがありました。診察すると中耳炎になっていてその影響で高熱が出ていたことが分かりましたので、鼓膜切開をしました。その日のうちに劇的に熱が下がったことで、患者さん自身も、ずっと心配されていたご両親も本当に喜んでくださいました。
街の耳鼻咽喉科ですので、手術などの大きなことができるわけではないですが、患者さんの痛みだったり、熱だったり、違和感だったりを少しでも解消することができ、「ありがとう」と言ってもらえることが何よりの喜びです。人に心から「ありがとう」と言ってもらえる職業はそう多くはないですよね。やりがいは大きいです。
鈴木耳鼻咽喉科医院(川崎市麻生区)
一人一人の患者さんを大事にしたい
――増えているなと感じる病気はありますか?
小学生以下の子供さんですと、アレルギー性の病気が増えていると思います。アレルギーの中でも花粉症は本当に増えていて、また低年齢化しているのも気がかりです。生活環境、食事の変化、原因はさまざまだと言われていますが、悪化すると生活に支障が出てきますし、小さい子は特にかわいそうなので、早め早めに治療をしていただきたいと思います。
大人の病気に関していえば「低音障害型難聴」の患者さんが増えています。「耳がつまったような感じがする。耳垢がつまっているのでしょうか?」とか、「耳に水が入ったような感じがするのですが」という違和感で来院されます。
突然発症する病気なので、気付くのが遅れることもあるようです。原因ははっきりとは分からないのですが、ストレスや過労と考えられています。風邪をひいたあとなどに発症する突発性難聴や耳管狭窄症などとは違う病気です。よくなったり、悪くなったりを繰り返すこともあるのですが、症状が進行してめまいを伴う場合には、メニエール病になることもあるんです。いつもと違うように感じたら、早めに診察を受けられることをお勧めします。治療法は薬や生活環境の改善になります。どの世代でもかかることがありますが、どちらかといえば女性が多いですね。
――子供たちに伝えたいことはありますか?
私は子供時代をこの病院のある柿生(麻生区)で過ごしました。その頃からしたら、ずいぶんと発展をして景色も様変わりしていますね。昔は自然が豊かな地域だったので、子供時代は野山を駆け回って遊んでいましたよ。しかし、私が友達と遊んでいた池も現在は住宅地になっていますし、環境は大きく変わっています。どの地域でも昔のように子供たちが伸び伸びと遊ぶことはできなくなっているのかもしれません。
それでも、子供たちには与えられた遊びではなく、子供たち自身の持つ豊かな発想で遊びを考え出してほしいなと思います。そして友達とかかわり合いながらたくさん自然に触れてほしいです。
子供たちは本当にかわいいです。中には小さい頃、耳や鼻の病気でしょっちゅう病院に来ていた子もいて、大きくなった姿、立派に過ごしている姿を見ると、うれしくなります。
父がそうであったように、子供たちの成長を見守りながら、みなさんから信頼されるまちのかかりつけ医でありたいですね。
2児のパパでもある鈴木先生は「一番リラックスできるのは子供と一緒にいるとき」とのこと。優しいパパの横顔が垣間見えます。木曜と日曜の休診日には、小2の息子さんが所属するサッカークラブの練習に引率。少し早めにグラウンドに行って一緒にボールを蹴っている時間が何より楽しいそうです。その他、小6のお嬢さんに勉強を教えたり、時には一緒に難問にチャレンジしたり。楽しみながらお子さんと接しています。
▲鈴木耳鼻咽喉科医院 院長 鈴木 毅 先生 (川崎市麻生区)
聖マリアンナ医科大学卒業後、同大学院博士課程修了。横浜総合病院、町田市民病院、稲城市立病院耳鼻咽喉科医長を経て、1971年に開院された鈴木耳鼻咽喉科医院を、先代の院長より引き継ぎ、2000年にリニューアル。2013年院長就任。日本耳鼻咽喉科学会認定耳鼻咽喉科専門医。医学博士。