映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で見た光景を現実に
お話
▲日本環境設計株式会社 取締役会長
岩元 美智彦(いわもと みちひこ)さん
日本環境設計株式会社 取締役会長。北九州市立大学を卒業後、繊維商社を経て2007年に衣類のリサイクル事業を主とする日本環境設計設立。著書に『「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる』(ダイヤモンド社)がある
▲映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で有名なタイムマシーン「デロリアン」
全世界で3億8000万ドルもの興行収入を記録した「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。1985年に公開されたとき、それから30年後の未来では、ゴミを燃料に車が飛ぶシーンが描かれていました。
1985年に公開された映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。発明家ドクがデロリアンをタイムマシーンに改造し、高校生のマーティが過去へ、未来へと飛び回る痛快活劇の大ファンである方も多いのではないでしょうか。
特に印象的なのがエンディング。未来の世界から戻ってきたデロリアンが、集めたゴミを燃料に宙を舞い、2015年の未来へと向かいました。
30年後は「ゴミが燃料になる!?」と心躍ったことを思い出します。しかし、2019年になった今もなお、ゴミを燃料に走る車は存在しません。
「だったら自分が、いらなくなったものを燃料にデロリアンを走らせよう!」
と思い立ったのが、日本環境設計株式会社の取締役会長、岩元美智彦さんです。
「繊維商社に長年勤めてきたなかで、1995年に容器包装リサイクル法が制定され、ペットボトルは繊維に生まれ変わるようになったのです。でもその後、繊維製品はどうなっているのだろう。ペットボトル→繊維、その先の循環を何とかしたい」
そう考え起業した岩元さん。地球の環境を考えると、リサイクルは重要で『正しい』ことです。
誰もが興味があるのに、実践している人は全体の5%。残りの95%をどう動かすかが最大の課題と、会社のホームページや講演などを通して、リサイクルの仕組みをわかりやすく示してきました。
さらに「もっと楽しくリサイクルを!」と考えたとき、頭に浮かんだのが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のシーンを再現することです。衣服を回収し、燃料に変えてデロリアンを走らせる「BTTF×Fuku‒Fuku」プロジェクトは、良品計画やイオン、セブンアンドアイ、ユニーなどからの大きな協賛、協力を得ることができ、店頭に回収ボックスを設置しました。
「着なくなった服を持って来て、デロリアンに乗って写真を撮ろう!」という呼びかけで、3カ月で約6万人もの協力を得ることができました。
そして2015年10月21日。そう、映画の中でデロリアンが向かった30年後の未来の日付。この日に綿をリサイクルして作ったバイオ燃料でデロリアンを走らせることに成功したのです。このイベントにはBBCやCNNなど海外からの取材陣も詰めかけるなど、世界中の注目を集めました。
「人はやっぱり楽しい、おもしろいに集まるということを確信しました」
岩元さんの視線は常に未来に注がれています。欧米の企業を中心に、製造業界では再生でできた素材や再生ができる素材を原料に用いることを宣言する企業が増えてきています。温室効果ガスの削減目標を達成するためです。
「これからはサステナブル(持続可能)であることに価値が見いだされる時代になります。私たちには、回収した服から取り出したポリエステルの繊維を再生する技術があります。皆さんが近い将来着る服には、リサイクルでできた糸が当たり前のように使われるはずです。普段身に着ける服にはもちろん、高い機能性が求められる選手のユニフォームもスポーツ用品メーカーと手を組み、回収した衣類をリサイクルして作ります。」
理想とする循環型社会のスタート地点に、ようやく立ったと語る岩元さん。2020年には日本航空とバイオ燃料で飛行機を飛ばすことも計画しており、消費者を中心とした循環型社会の確立は日本だけでなく、フランスをはじめ世界からも注目を浴びています。