“人を満腹にできるのは最高の武器!”
たくさんの人々や地域のママたちの協力で 育ち盛りの子供たちの孤食を解消
東急東横線・大倉山駅前の商店街にある花屋&カフェ「ラプティフルール」。
毎週木曜日の定休日を利用して週1日だけ営業する「ごはん屋MOGU」は、学校や習い事帰りの小中学生で賑わう食堂です。ここでのスタッフのあいさつは「いらっしゃいませ」ではなく「お帰り!」。訪れる子供たちも「ただいま」と元気よくお店に帰ってきます。
ごはん屋MOGUを立ち上げたのは、中川陽子さん。
中学生になったお子さんが、学校、部活、そして塾と忙しい毎日を送るようになりました。またご自身も大病を患った経験があり、規則正しい生活の大切さを痛感していました。
「塾が終わる夜遅い時間に、スーパーで空腹を満たすべく集まっている中学生の姿をよく目にしました。次の日は6~7時、朝練がある子は5時起きで、前夜に食べたものが消化しきっていないから、まともに朝食も食べられない。成長期なのに大丈夫なの?という疑問と心配がきっかけでした」。
▲今日の献立は味噌ガーリックチキンと新じゃがのポテサラ、かぶの中華和えに、野菜たっぷりの味噌汁。メインディッシュ以外はおかわり自由です!
「ママ友に話したところ、同じように考えている人がとても多いことに気付いたんです」。そこで数人で手を組み、ごはん屋MOGUをスタート。栄養士の資格を持つママが献立を考え、中川さんをはじめとする3人のスタッフがキッチンに立ち、17時から、学校や部活そして塾を終えて帰ってくる子供たちを迎えます。
「共働きの家庭も増えて、孤食の子供も多くなりましたが、ここに来ればみんなで楽しくご飯を食べられます」。
献立には肉料理に加えて小鉢が2つ、さらに具だくさんのお味噌汁がついて、子供は1食500円。つなぎに高野豆腐を使ったハンバーグや、もち粉を使った鶏のから揚げなどおいしくボリュームがあり、消化がいいメニューが揃います。
食材は近隣の商店街の肉屋さんが安く卸してくれたり、横浜市のシェア畑で自分たちが育て収穫した野菜を使ったり、金沢区の農家さんが提供してくれたりと、ごはん屋MOGUを利用する子供たちのために、さまざまな人が協力しています。
▲中川さん(前列左)の想いに共感して集まったスタッフ。みなさん、この活動がとても楽しいと話します
2016年のオープン以来、宿題を片付けてから食事を注文する中学生、食事を済ませて友達とゲームに興じる小学生のほか近所のご家族など、老若男女、さまざまなお客さんが店を訪れます。
「不機嫌そうな顔をしてくる子も中にはいます。学校で何かあったんだろうなって。でも食べたらリラックスして、自分から『今日、学校でね』って話してくれる。食べることで元気になってくれるのはうれしいですね。人を満腹にできるのは強い武器です(笑)」。
今後はここに来る子供たちが、考えたこともない発想の人や、すごいパワーのある人など、いろんな大人と出会える環境を作り、自分の将来を選択するヒントを見つけてほしい、と中川さん。先日、中学生が文化祭で流す動画を作りたいと言ったので、動画編集のプロに来てもらったそう。
「その方の指導を受けながら、文化祭の動画を作ったんです。とっても素敵な仕上がりでした。まわりで見ていた小学生たちもとても興味を持って。『自分たちもやってみたい』『じゃあMUGOの宣伝動画を作ろう』と盛り上がって、本当に完成させたんです。なんだか私のほうが感動しちゃって。これからも子供たちが素直に感動したり、実行したりできるような環境を作りたいと思います」。
▲子供が満腹になった顔を見ると元気をもらえる、と中川さん。「食べたら元気になる法則、というのがあるんです!」