「正しい言葉と語彙力を身につけることは、受験対策はもちろん、子どもの成長にも必要」と語る、富士チャイルドアカデミーの校長、前宏美先生に詳しく話を伺いました。
意識的に対話することが子どもの「言葉」を育てる
普段から、お子さんとの会話を心がけていますか? 近年、よく感じるのは正しい言葉を使えていない子どもが多いことです。
その理由はさまざまで、そのなかでもとりわけ考えられるのは、新型コロナウイルスの蔓延とスマートフォンの普及です。
まず、「新型コロナウイルスの蔓延」について。最近になってようやく収まりを見せ、マスクをつける機会も減ってきましたが、一時期はマスクの着用は当たり前の世の中でした。
この状態で会話をすると口元が見えなかったり、声がはっきり聞き取れなかったり。この影響でお子さんが言葉を誤って覚えてしまうのです。
例えば「ラクダ」を「ダクダ」と発音するのが典型的な例で、教室のレッスン中、しりとりをしたときに、誤りに気付かされるのです。
先にも言いましたがマスクをする機会が減ってきました。少しずつ、正しい言葉の理解は改善されていくと思います。これからはお子さんが発する言葉にしっかり耳を傾けて、正しく言葉を発することができているかを確認しましょう。
次に、「スマートフォンの普及」によって考えられるのは対話の減少です。思い出してみてください。以前は夫婦のやりとりも、しっかり会話で行われていたのではないでしょうか。
「今晩、帰りは何時くらいになりそう?」「残業だから20時くらいかな」という具合に。
でもスマートフォンの普及によって同じやりとりも「何時くらいになりそう?」「あとでラインする」という形に変わっていませんか?
また、実家のご両親とのやりとりも、以前は固定電話でコミュニケーションを取るのが当たり前でしたが、近年はメールなどでやり取りをすることが増えているのが現状です。
子どもは親が思っている以上に、ママやパパの言葉のやり取り、つまり対話を聞いています。
そこで言葉を覚えることも少なくありません。これは受験対策に限ったことではなく、お子さんの成長にも必要不可欠な要素なのです。
これからは少し意識的に、声でコミュニケーションをとる対話を増やしてみてはいかがでしょうか。
まずは問いかけてみる
考えることが記憶につながる
正しい言葉とともに育てたいのが語彙力です。言葉をたくさん知ることは、対話や会話を広げることにもつながります。
ただし気をつけたいのが教え込みでは語彙力は育たない、と言うこと。教室でもよく「言葉を教えるのですが覚えないんです」と言う相談を受けます。
そういったお悩みに対して「投げかけるだけでなく、対話しましょう」とお答えしています。
例えば絵本を見ながら「これはゾウ」「こっちはキリン」と話すだけでは頭に入っても記憶にはなかなか残らないものです。
そうではなく、「これはなんだと思う?」と問いかけることが大切なのです。
そして正しく答えられたらたくさん褒めてあげる。
間違ってもすぐに否定せず、正しい答えに導く。これが教え込みではなく投げかけであり、記憶へとつながっていきます。
道を歩いているときに咲いている花を指さして、「これはなんの花?」と聞いてみたり、豆まきや節分など、季節の行事に絡めながら立春から春になっていくことを教えてあげたり。実体験を交えながらいろいろな言葉を伝えると、お子さんの記憶にしっかりと刻まれるはずです。
また、受験においては「昔ながらのもの」もよく出題されています。最近は畳やふすま、押し入れなど和室が減ってきてはいますが、こういった言葉も実際に見る機会をつくって教えてあげるといいでしょう。
本物を見ながら、まずは問いかける。そうすることで対話も増えます。普段からこの意識でお子さんと接してあげることが大切です。