都会の喧騒を離れ、緑豊かなキャンパスでカトリックの教えに基づく「心の教育」を実践する聖ドミニコ学園小学校。他者を思いやる心と個性を育む同校が、2026年度より本格導入するのが、英語「で」学ぶ学習法「CLIL(クリル)」です。
単なる語学習得に留まらず、算数や図工といった教科内容と英語を融合させることで、思考力と実践的なコミュニケーション力を同時に引き出すこの試み。導入の旗振り役である英語科の横山先生に、新たな学びの全容をうかがいました。

「CLIL」をメインで担当する横山先生(写真左)と、言語学者のCorey先生(写真右)。授業の後は、「次の授業に繋がるように」と、図書室などで綿密に打ち合わせをします
実生活に即した身近な題材で、より効果的に英語を習得
さまざまな教科を英語で学ぶメリット
聖ドミニコ学園小学校では、2026年度から、新しい試みの一つとして、英語の授業に「CLIL(クリル)」を導入します。「CLIL」とは、「Content and Language Integrated Learning」の略で、日本では「クリル」あるいは「内容言語統合型学習」と呼ばれています。
定義としては、さまざまな教科やテーマの内容(content)と、外国語(language)を組み合わせた学習方法で、言語は英語に限りませんが、聖ドミニコ学園では最も身近な外国語である英語から取り組みを開始します。
単に「英語を学ぶ」のではなく、例えば、「算数を英語で学ぶ」ことにより、実生活に即したより効果的な英語の習得や、教科の枠を超えた学びの相乗効果が期待できます。

1年生を対象に、横山先生が算数で行った「CLIL」の授業。基本は英語ですすめられますが、ときには日本語でも説明を加え、算数と英語の両方が無理なくトータルで学べるように考えられています
CLILを担当する英語科の横山先生に導入に至った経緯をうかがいました。
「以前、在籍していた学校で、算数の授業を英語で行うといったCLILの効果を実感しており、ドミニコでもできれば、と思っていました。
英語科で使っているオックスフォード出版の教科書は、CLILがベースになっていますし、中高のインターナショナルコースでは、すでに数学と理科でCLILを取り入れています。
ということは、小学校から行うことで、土台作りができるのではないか、と。そこで校長先生や他の教科の先生方と相談し、2026年度からスタートすることになりました」。

「CLIL」の授業では、横山先生が独自に作成したプリントを使用。黒板を参考に算数の数式を書いてみたり、「まずはヒマワリに好きな色を塗ってみて」と先生から英語の指示があったり、児童を飽きさせない工夫が随所に見られます
本格的な開始に備え、2025年度には、算数、社会、図工で実験的なCLILの授業を行いました。図工では「フィーリング」をテーマに、ますば、子どもたちがさまざまな色を使って思い思いに絵を描きます。
その絵をクラス全体で鑑賞し、それぞれがどのような感情でその作品を描いたのかを日本語で発表。その後、発表した内容をできるだけ英語を用いて表現する、という授業を行いました。
「思っていた以上に、子どもたちは楽しんでいたと感じます。日本語と英語の垣根を越えて意欲的に発表していたし、お友だちの発表にしっかりと耳を傾けていました」。
言語学のスペシャリストとの協同で、中高へとつながるCLILの土台を作る
「CLIL」の授業には、毎回、INIAD(東洋大学 情報連携学部)で助教を務める言語学博士のCorey Fegan 先生が立ち会います。Corey先生は直接児童を指導するのではなく、研究者としての立場から、その日の授業を分析し、フィードバックします。
「Corey先生は言語学のスペシャリストであり、中高のCLILも1年ほど見ていただいてきたので、心強い存在です」と横山先生。
「CLILというもののフレームワークがあり、自分なりにそれに添って、工夫もしつつすすめています。Corey先生からは、ここがよかった、ここはもう少し改善して、など具体的なアドバイスをいただけるのでありがたいですね」。
現状では、小学生を対象にした具体的なCLILの指導書はなく、横山先生が他の教科の先生方と相談しながら、オリジナルの指導内容を作り上げているといいます。
「最も苦労するのは題材選びです。これまで、算数では数式を作る、社会科ではゴミ問題をテーマに取り上げましたが、その内容やテーマが本当に英語とフィットするのか。事前にかなり慎重に検討しました。
準備は大変ですが、他の教科の先生方とのチームティーチングという楽しさがあり、また、それに見合うだけの子どもたちの反応が返ってくるので、CLILを始めてよかったと思っています」。
試行錯誤を繰り返しつつ、いずれは、「私だけではなく、他の先生方もCLILの授業ができる形にしたい」と横山先生。
「まずは中高へとつながるベースを築き、それがひいては子どもたちの将来の可能性を広げられたら嬉しいです」。