- 1 ウチの子、大丈夫?臨床発達心理士が答えます
- 2 何を言っても「いやだ」とか「だめ」が 返ってきます。(2歳男児)
- 3 第2子が生まれてから、上の子が甘えてきたり、下の子にいじわるをしたりするようになりました。(3歳女児)
- 4 入園当初は問題がなかったのですが、最近、 保育園に行くのを嫌がります。(3歳男児)
- 5 お友だちと遊ばず、一人でいることが 多いのですが。(2歳女児)
- 6 幼稚園で落ち着きがなく、ずっとうろうろしているようです(4歳男児)
- 7 お友だち同士でいるとき、 「うそ」をつくようになりました。(4歳女児)
- 8 カッとなりやすく、お友だちに 手を上げることもあるようです。(3歳男児)
- 9 引っ込み思案でなかなか 前に出ようとしません。(3歳女児)
- 10 子どもがいじめの対象にならないか 心配です。(4歳男児)
- 11 お話を伺ったのは
ウチの子、大丈夫?臨床発達心理士が答えます
赤ちゃん返りや自我、うそ、いじわるなど、わが子の発達に関する心配事は後を絶ちません。でも、大丈夫。それにはちゃんと、子どもなりの理由があるのです。
そんな不安の数々を、神奈川県私立幼稚園連合会で教育相談員を務める臨床発達心理士の鈴木敦子先生が解消します。
何を言っても「いやだ」とか「だめ」が 返ってきます。(2歳男児)
はじめて「ママ」とか「パパ」のような言葉らしきものが出るのは1歳ぐらいと考えると、2歳はまだ言葉を操るようになって1年程度です。そのころになると「まんま食べようね」と声をかけながら食事をしたり、子どもに呼ばれて振り向いたりと、言葉でコミュニケーションがとれるようになってきます。
それで親はもう言葉で伝えて大丈夫と錯覚してしまうんですね。親としては難しいことを言っているつもりはなくても、子どもにとっては複雑なことも。そこを理解したうえでのコミュニケーションが大切です。
また、この「イヤイヤ期」は自我の芽生えの証しでもあるのです。何でも「いやだ」と言われるのは精神的にきついと思いますが、それに対してとがめるようなことはせず、自立への一歩と思って受け止めてあげてください。
第2子が生まれてから、上の子が甘えてきたり、下の子にいじわるをしたりするようになりました。(3歳女児)
甘えてきているわけではなく、クリアするべきゴールを親が高くしてしまっているのではないでしょうか。
たとえば、これまでママ、パパが手伝って着替えさせていたのに、いきなり「お兄ちゃん、お姉ちゃんになったんだから自分で着替えてね」と言われても上のお子さんは戸惑い、「できないからやって」となるのは当然。親にしてみるとそれが甘えに見えるのかもしれません。
たとえば上の服を自分で着たら、ズボンはママと一緒にやろうね、など、一段階下のゴールを設けてみてはいかがでしょうか。いじわるについては、本人にその意識はないと思います。上の子が遊んでいるおもちゃに下の子が手を出す、それを阻止しようとしているシーンが「いじわる」に見えるだけでは?
下の子がハイハイしたり、歩いたりするようになると必ず起きます。上の子が下の子に対して怒っているときに「お兄ちゃんだから優しく」と声をかけても、パニック状態で思考が停止しているので情報として入っていきません。
そこでは「お兄ちゃん、せっかく遊んでいたのに嫌だったよね」となだめてあげて、冷静になってから「まだ小さいから邪魔しちゃうかもしれないけど、許してあげてね」と本人の意思を尊重してあげましょう。
入園当初は問題がなかったのですが、最近、 保育園に行くのを嫌がります。(3歳男児)
それは成長した証しです。入園当初は環境の変化を自分の中で処理できておらず、ぼーっとしているような状態なんです。
時間が経つにつれて「ママがいない」「人がいっぱいいる」「みんなで歌を歌ってうるさいな」「やることがたくさんある」などを理解し、それらに適応できない自分がいることがわかって通園が嫌になるんだと思います。
登園時間になると泣いて嫌がるというお子さんも多いですが、そこで何を言っても無駄です。泣いている間はパニック状態ですから。また嫌がるのを無理やり連れて行くのは親として気が引けるところですが、ワーキングマザーの場合は休むわけにもいかないと思いますから、園に相談してください。
園選びの際に、わが子がこういうときどんな対応をしてくれるのかを聞いてみるのもいいかもしれません。
お友だちと遊ばず、一人でいることが 多いのですが。(2歳女児)
2歳くらいは、一人でも楽しく遊んでいるのでしたら、なんの心配もありません。人見知りかと不安に思うかもしれませんが、安心してください。知らない人を前に泣いたり嫌がったりするのは、2歳にしてパパやママなど、知っている人の顔をしっかり認識している証拠です。
幼稚園や保育園に通う4歳くらいのお子さんでも、一見、一緒にブロックで遊んでいるようですが、実は共同ではなく個々で好きなものを作っていることもよくあります。
子どもの発達は発達は十人十色。多様性や個性を大切にし、それぞれの子どもに合った育て方、対処ができるよう、発達への理解を深め、子育ての不安を減らしていきましょう。 これまで発信した「発達」に関する記事の一覧 これまで発[…]
幼稚園で落ち着きがなく、ずっとうろうろしているようです(4歳男児)
睡眠時間をちゃんととっていますか?4歳児だと10時間以上眠らないと脳のメンテナンスができないと言われています。21時に布団に入ったとしてもすぐには寝ません。でも次の日は7時に起きると、10時間を確保していないことになります。
たとえ30分足りないだけでも、日中の集中力の低下や多動の原因になることも。3歳を過ぎたら昼寝をさせないようにし、夕方眠くなりそうだったら先にお風呂と食事を済ませ、いつでも寝られる状態にしておきましょう。
ご相談を受けたお子さんで、午後4時に食事をし、6時に就寝という生活をして落ち着くようになったというケースもあります。子どもの睡眠は大人が考える以上に大切だということを知っておきましょう。
お友だち同士でいるとき、 「うそ」をつくようになりました。(4歳女児)
希望や願望がごちゃまぜになっているだけではないでしょうか。女の子で年中、年長さんぐらいになるとお友だち同士のグループができ、その中で仲間外れになりたくないという気持ちから、無意識に話を合わせ、結果として「うそ」になることがあります。
たとえば遊園地に行っていないけれど、お友だちの前で「行ってきた」と話すとか。でもこれはだまそうと思って「うそ」をついているわけではなく、その遊園地が楽しかったという会話に入りたい、自分も行きたい、という思いから出た「うそ」なのです。
ですから、それを注意しても本人は「うそ」をついている意識がないので効果はありません。
背後には子ども同士の人間関係が絡んでいることもあるので、じっくり話を聞き、「今度、行こうね」などと声をかけてあげるといいでしょう。男の子の場合は「うそ」をつくことは女の子と比べて少ないようですが、手が出てしまうこともあるようです。いずれも、子どもに社会性が芽生えていると思ってください。
カッとなりやすく、お友だちに 手を上げることもあるようです。(3歳男児)
場面によりますが、「想像力の問題」と「新情報の処理困難」というふたつの理由が考えられます。
「想像力の問題」はお友だちとすれ違うときに、目が合っただけでにらまれたと思って手を上げてしまうもの。目はすごく圧力があるものですから、相手は見ただけのつもりでも、「想像力の問題」があるお子さんにとってはにらまれたと思ってしまうのです。
「新情報の処理困難」は、普段やっていないことをやるときに、それを受け入れられなくて手が出てしまうもの。たとえばいつもの鬼ごっこを今日は人数が少ないから、ちょっとルールを変えようとなったときそれが受け入れられなくて暴力につながってしまうのです。
どちらの場合も、脳が成熟するにつれて(小4ぐらいまでには)、そういう行為が徐々に減っていくはず。今はなるべくその子がパニックを起こさない環境を作ってあげてください。
引っ込み思案でなかなか 前に出ようとしません。(3歳女児)
お母さんの価値観を投影していませんか?積極的に前に出る子がうまくいくとは限りません。心配なのはわかりますが、まずはお子さんが好きなことを好きなだけさせてあげましょう。好きなことをするとモチベーションもパフォーマンスも上がります。
以前、超未熟児で生まれたお子さんのお母さんから受けたご相談で、順調に発育し、普段は大人が見ていれば一人ですべり台をすべれたり、ちょっと手伝えば着替えられたり。けれども、お母様は大人がサポートせずに積極的に何でも自分からできるようになってほしい、とおっしゃいます。
その気持ちはわかりますが、まずは超未熟児だったわが子がそこまでできるようになった成長をよろこんでほしいのです。
お子さん一人一人に個性があり、お母様の価値観どおりに育つかどうかはわかりません。お子さんが持っているものを開花させるためには、安心・安定の環境で脳を十分に成熟させることが重要です。
子どもがいじめの対象にならないか 心配です。(4歳男児)
いじめについては親が心配してもしょうがないことです。引っ込み思案な子、積極的で出しゃばりな子、容姿、服装、髪型など、なんでもいじめの対象になりえます。
子どもは4歳ぐらいから、自分と人は考え方が違うものと理解し始めます。この年齢以前だと自分はイチゴが好きだから、まわりのみんなも好きだと思っていて、他者に対する理解がまだ未熟です。
難しい問題ですが、いじめられる側だけでなく、いじめる側にもならないような配慮をしながら、他者の気持ちを理解できるようになるまでやさしく粘り強く諭すしかないでしょう。
お話を伺ったのは
東京大学大学院教育学研究科学校教育学専攻修了後、桐朋学園芸術短期大学特任教授や千葉大学、日本女子大学、東京都市大学、和光大学で心理学・教育学の非常勤講師を務める。教育学修士、特別支援教室巡回相談心理士、臨床発達心理士。
子どもの発達は発達は十人十色。多様性や個性を大切にし、それぞれの子どもに合った育て方、対処ができるよう、発達への理解を深め、子育ての不安を減らしていきましょう。 これまで発信した「発達」に関する記事の一覧 これまで発[…]