【がんサバイバーが語る絶望からの輝く未来】うつとがん、そして 出産で変わった私の価値観

現代は2人に1人ががんになると言われる時代。特に30代から50代の女性に多いのが乳がん・子宮がん・卵巣がんなどの女性特有のがんへの罹患です。

家族の笑顔を支える私たち母親ががんになったら…。誰もが自分の心配事として心の片隅にあるはずです。「一般社団法人ピアリング」は、会員・スタッフともに、がんサバイバーが中心に運営する支えあいの場所です。

子育て中にがんに罹患しながらも、それを乗り越え、元気に活躍するみなさんに、体験談をお聞きしました。

 

出産のあと、同じ手術台でがん切除
だから、息子の誕生日は私のセカンドバースデー!

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ピアリング運営スタッフ
福田ゆう子さん
(42)
東京都日野市 在住


待望の妊娠!しかし、そのほぼ同じ時期に乳がんの宣告を受けた福田ゆう子さん。

進行が早く、自分か?赤ちゃんか?の決断を迫られる悪夢も経験しました。

しかし、決してあきらめず、ご主人と赤ちゃんとの3人4脚で乗り越え、8年たったいまは、仕事に、趣味に、子育てにと忙しくも、充実した日々を送っています。

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生涯忘れられない悪夢の数日間
運命を変えるさまざまな出会い

妊娠と乳がん発覚がほぼ同時期。34歳の時でした。

右胸の上の方に痛みを感じることがあったのですが、あまり気にしていなかったんです。しばらくして妊娠していることがわかり、胸の痛みもその影響なんだと思いました。でも、次第に歩くだけでも痛むようになり、触ると小さな消しゴムくらいのしこりがどんどん大きくなっていくのを感じ、精密検査を受けたんです。

主治医からは「結果はご家族も同席で」との指示。数日後、夫、母とともに行った病院で告げられのは、悪性の乳がんでとても進行が早いため出産を待ってから抗がん剤治療を開始したのでは手遅れになるかもしれないこと、さらに、妊娠中は抗がん剤治療ができないという内容でした。

子どもをあきらめて治療に専念することが最善策で、治療後は抗がん剤の影響で閉経する場合もあるので、もう妊娠は難しいかもと。「次回の診察までに『どうするか』、治療の方針を決めてきてください」。わたしたちは言葉を失いました。

 

頭が真っ白でした。でも、不思議と子どもをあきらめるということは考えませんでした。どうにか妊娠中も治療ができないかと、とにかく必死で情報を集めました。

本を読みあさり、友人や知人のつてを頼り、SNSを検索して。でも、妊娠中のがん治療に関する情報は、見つかりませんでした。タイムリミットが目前に迫ったある日、がんに罹患しながらも出産した人のブログを見つけたんです。

そのブログには妊娠中に抗がん剤治療をし、無事出産ができた病院のことが書いてありました。その病院はうちからも通院できる距離にある、都内の大規模な総合病院でした。

運命の出会いの始まりですね。

大病院はセカンドオピニオンの予約も取りにくいと聞いていて、その病院に電話をかけてもなかなか繋がりませんでした。そこであきらめずに何度も電話をかけ続けたところようやく繋がり、今の現状、そしてセカンドオピニオンを希望していることなど、緊迫している状況を伝えました。

通常は数週間待ちのところをすぐに来るようにと言っていただき、数日後、私はその病院の診察室にいました。不安で押しつぶれそうな私に先生は「妊娠おめでとうございます!」と言ってくださったんです。そして「これから治療していくんだけど、母親であるあなたが頑張って生きなければ、お腹の赤ちゃんも助からない。2人で一緒に頑張れる?」と。

悪夢としか言いようがない、果てしなく長かった数週間が、この瞬間にすべて帳消しになった気がしました。私は強くうなずくしかなくて、その先はよく覚えていませんが、とにかく「この先生が私たちを助けてくれるんだ」って、強く感じました。妊娠3カ月ごろのときです。

妊娠中の抗がん剤治療とはどんなものでしょうか。また、胎児への影響など不安ではなかったですか?

私の病名は「トリプルネガティブ乳がん」。進行が早く、転移もしやすいと言われているタイプのものだったのですが、抗がん剤が効きやすいという特徴がありました。まず抗がん剤でがんを小さくしてから切除する方法をとることになり、3カ月間抗がん剤治療を行ったところ、なんと画像上消失していたんです。

胎児への影響はとても不安でした。でもアメリカではその抗がん剤は妊娠中の胎児への影響はないということがわかっており、すでに妊娠中のがん治療が行われていたので、アメリカの病院と連携を取りながら、治療を進めてくださいました。

心身ともに全く余裕がなかった私のために、夫は父親学級やプレパパの集まりに参加したり、出産後3人で暮らす家を購入するための不動産屋回りをしてくれたり。私たちには素敵な未来が待っていると思えるような支えをさりげなくしてくれたので精神的にも救われ、私も治療と出産に向けて前向きに頑張れたと思います。

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そして迎えた帝王切開での出産
一瞬のわが子との出会いの後
そのまま乳がん手術へ

分娩台と手術台が同じだったそうですね。

出産は、部分麻酔での帝王切開でした。看護師さんが「元気な男の子ですよ」って笑顔で赤ちゃんに会わせてくれましたが、感動の余韻に浸る間もなく、次の先生に交代して、同じ手術台で今度は全身麻酔で乳がんの手術です。

そのときはわかりませんでしたが、後にして思うと、元気に生まれた赤ちゃんに一瞬でも会うことで、「絶対に病気に勝ってこの子を育てるんだ」という力が湧いたのかもしれません。

そして数時間後、目を覚ました私は、全身がドレーンだらけの重病人スタイル(笑)でした。胸と帝王切開の傷口がとにかく痛かったです。産後の抗がん剤治療が始まるまでの間に母乳育児ができるというので、最初は手術していない側で、母乳をあげましたが、赤ちゃんの口が小さくうまく飲むことができずに、紙コップに母乳を絞り哺乳瓶に入れてあげていました。

一方手術した側は、乳腺を切除したので母乳はあまり出ないのですが、残った乳腺から滲み出て、さらにどんどん母乳が作られ傷口を圧迫し始めました。そして、夜眠れないほどの激痛に。医師に相談すると「このままだと傷口が開いてしまい、再手術になる可能性もある」と言われたので、母乳育児をあきらめミルクにしました。

育児と抗がん治療、たいへんなご苦労でしたね。

出産後は、これまでの抗がん剤より強いものを使用したので、倦怠感や脱毛、むくみ、味覚障害なども起こり、妊娠中よりつらくなりました。思うように新生児の面倒を見てあげられない辛さも重なって、毎晩泣いてました。

でも、ある日病院の待合室にいると先生が「この人も妊娠中に乳がんの治療をしたんだよー。」と赤ちゃんを抱いた人を紹介してくれたんです。その人と出会えたことが大きかったですね。

抗がん剤治療の次は、放射線治療です。これがまた大変で。家族が増えるので、出産前に新居を購入していていたんですが、引っ越しの片付けもろくにできないまま、生後5カ月の赤ちゃんを抱っこして、電車で自宅から1時間以上かけて毎日通院。おむつやミルクなどの大荷物だし、季節も真夏。暑さだけでなく台風の日もあって、外に出るだけでも大変な時期で、本当にしんどかったです。

 

息子の誕生日に私は生まれ変わりました
出産もがんの治療もあきらめなくてよかった!

現在の福田さんは明るくてとてもパワフル。もともと、ポジティブな性格だったんですか?

独身時代はうつになったこともあります。出産した後も、薬の副作用で顔もむくんでしまって、髪もすべて抜けてウイッグの生活。いつも不安で、疲れ果てているのに、副作用で夜眠ることもできないんです。誰かと会話すれば気もまぎれたかもしれませんが、共感してくれる人はいません。

赤ちゃん連れのママが「育児が大変」と愚痴るのを聞くと、「でも、あなたはがんじゃないでしょ?」なんて思う自分に、なおさら落ち込むこともあって、引きこもり気味の日々でした。

そんな私が少しずつ元気になれたのは、たくさんの人たちの助けがあったからです。一度は「死」を身近に感じ、そして子どもをあきらめることも考えた私が、いま普通にご飯を食べられて、家族3人で幸せに暮らせている。そう思うと、いろいろなことへの感謝の気持ちも強くなり、前向きになることができました。

出産と手術を同時に行った日は、子どもの誕生日でもあり、私のセカンドバースデーでもあるんです。

この後は、どんな自分が目標ですか?

いまは、行政施設のお手伝い、ライター、ピアリングの運営スタッフなどの仕事、6歳になった息子の子育てと家事など何足ものわらじを履く日々です。

学生のころから、写真を撮ったり絵を描いたり、楽器演奏や登山などたくさんの趣味がありましたが、社会人になってからは仕事の忙しさにかまけて「いつかそのうち」って後回しにしていたことを「いまやろう」って。がんを経験する前より元気で忙しい日々です。

これからも、普通の生活ができる喜び、たくさんの人に支えられている感謝の気持ちをもって、人の役に立ちながら、常に新しいことにチャレンジしていきたいと思っています。

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