皆さんは中学受験に対してどんなイメージをもっていますか?
ご自身やご家族などが経験者で、中学受験が身近な方もいれば、地元の公立中学校以外の選択肢をあまり意識したことのない方もいらっしゃるでしょう。
では、そもそも、中学受験とはどんなものなのでしょうか?
受験が伴う中学への入学
私立中学校
一言でいえば「義務教育だけど授業料を支払って通うのが私立中学校」です。
しかし、それだけではありません。私立中学校には独特の理念があり、それに基づいた教育が行われています。また、私立中学の多くが高等学校との一貫教育を行っているので、高校受験がないのも特長です。
さらに、大学付属の学校も多くありますが、内部進学率は学校によって大きく異なります。
公立中高一貫校
6年間一貫型と3年+3年の併設型があります。地元だけには限らず広域に生徒を募集します。
選抜には、適性検査や内申書、特別活動の記録、面接やプレゼンテーションなどが行われます。志願者倍率が高く、狭き門となっているところも少なくありません。
なんで中学受験するの?
私立中学校がたくさんあり、選択肢が多い地域でより私立中学への進学率が高くなっています。私立中学は大都市に集まっているので、これは当然のことと言えます。
ではなぜ、多くの家庭が学費を払ってまで私立中学へ入れようとするのでしょうか。
私立中学校 | 公立中学校 | |
教育方針 | 建学の理念があり、事前に学校案内で志願者に説明している教育方針を貫いている | 国が決めた基準をはみ出ることができない。先生方に転勤があり、校長先生が替わると校風が替わることもある |
教育内容 | カリキュラムがしっかりしていて、シラバスを公開している。先進的な取り組みを取り入れやすい。授業時間が公立より1~2割多い | 教育指導要領を逸脱できない。先生の裁量の余地が少ない。前例がないと新しいことを始めるのは難しい |
生徒 | 選抜を受けて入学しているため、生徒の学力が一定の範囲に収まっている。授業もしやすい | 地域によっては授業が成立しにくいところも。学ぶ環境が整っていない場合もある |
校舎・設備 | 施設・設備、自然環境などが整っている | 予算の範囲内で整備して行くため、実行しにくく時間もかかる |
進学 | ほとんどが中高一貫校なので、高校受験の心配がなく、部活や大学進学に力を割ける。また、学校も進路指導をしっかりサポートしてくれる | 高校受験があるので、受験勉強が必要となる。また、内申書を良くするために、勉強以外の活動にも力を入れなくてはならない。多くの生徒が高校受験のための塾に通う |
オンライン授業対応 | 私立中学の実施率は約70%(2020年6月首都圏模試センター調査) | 公立中学校の実施率は約10%(2020年6月文科省調査) |
公立中高一貫校とは?
近年、公立中高一貫校(一部国立大学付属も含む)が注目を集め、入試倍率も高くなっています。
特に私立中学という選択肢がほとんどない地方都市では、さらに高倍率になることもあります。
一言でいうと、公立中高一貫校の魅力は、学費の安い公立なのに私立の良い点を享受できるということです。
私立中高一貫校 | 公立中高一貫校 | |
応募資格 | 住所の制限はほとんどない。新幹線通学などの生徒もいる | 自治体で指定されている |
入学者選抜 | 入学試験を実施する。面接のある学校も多いが、試験が重視される | 適性検査を実施するが、報告書や学校での活動、自己プレゼンなどの要素も評価される |
受験準備 | 小学校の授業だけで、入学試験を突破するのは難しいので小3の2月くらいから通塾する子どもが多い。近年は、思考力入試を実施する学校も増加している | 教科書の範囲内から出題される。ただし、読解力と記述力が必要。多くの志願者は塾に通うが、公立中高のみの単願だと5年生くらいからが多いが、私立との併願が多いのが現状 |
教育方針 | 私学としての建学の理念がある | 21世紀のリーダーを育てる・国際貢献できる人材など各校の方針が明確 |
進路指導 | 大学受験も視野に入れて指導している学校が多い。進路情報センターのような部署を持つ学校もある | 必ずしも大学受験を視野に入れているわけではないが、高い進学実績を示す学校も多い。また国公立大学志望者が多い傾向がある |
中学受験する人が増えているってホント?
2021年度入試では、首都圏の1都3県の卒業生に占める私立中学入試受験者の比率は前年並みでした。コロナ不況で家計の悪化がなかったら、もっと上がっていたと思われます。
なぜ義務教育である中学で、私立を選ぶのでしょうか。
もっとも大きいのは、世の中の流れと関係です。ICT(インターネットと通信)とAI(人工知能)の時代に求められるのは、これまでとは違う能力や意識をもつ人たちです。思考力や創造力を養い、アウトプットする力を育てるには、アクティブラーニングなどの新しい教育法が必要です。
公立中学は、そうした教育を取り入れことが難しいのに比べ、私立は時代の流れを敏感に察知しながら、柔軟に対応できるのが最大の強みと言えるでしょう。
また、コロナ禍での双方向オンライン教育への取り組みを見ても、私立にアドバンテージがあることは明白です。
中学受験スケジュール
現在多くの進学塾が標準的カリキュラムとしているのが、小学3年生の2、3月の入塾です。なぜこの時期かと言えば、中学受験は2月中にほぼ終わるからです。
入室テストがある塾には、低学年のうちから「塾に入る準備」を始める子もいます。また、同じ系列の塾でも合格実績が高い校舎を選んで通塾するという人もいます。
●1~2年生
進学塾の低学年コースに通う家庭も。
●3年生
3学期の2月に入塾が多い。
●4年生
基礎力の定着。オープンスクールや学園祭で学校を訪問しておく。
●5年生
応用も入ってきて内容も難しくなる。
なるべく5年の内にオープンスクールや学園祭で学校を訪問しておく。
志望校もおおまかに候補を出しておく。
●6年生
模擬試験が頻繁に行われる。学校別特訓やそっくり模試などを受けることも。
保護者は学校説明会に行き、願書を入手する。
ほとんどが複数校受験するので、保護者はスケジュール管理や手続きで忙しい。
中学受験に向いている子
中学入試の問題は、基本的には小学生で習う範囲ですが、その知識をフルに使って考える難関な問題も多くみられます。
一例を上げれば、次の問題は、過去に灘中学校で出題されたものです。整数も四則演算も小学校の範囲ではあるのですが、決して易しいものではありません。
<例>
「1からある数までの整数をすべてかけあわせた数を、割り切れる限り12でくりかえし割ると、商が25025となる。ある数はいくつか?」
国語については、長文読解で引用される問題は、物語であれば小学校高学年から中学生が主人公のものが多く取り上げられますが、内容は精神的に幼い子には難しいものです。説明的文章も、社会や科学的な話題に敏感な子どもでないと、触れたこともない話題でしょう。
つまり、私が考えるに、中学受験には「ませた子ども」が向いているのかもしれません。いずれにしても、家族でよくよく考えて、最良の道を選択することが大切です。
高橋公英