中学受験について、あまり深く考えたことがない人もいるかもしれません。もちろん地元の公立中学校への進学も選択肢のひとつですが、子どもに与えられる選択しとして、「中学受験」について少しでも迷いがあるなら、最低限知っておきたいことについて見ていきましょう。
小学校卒業後の進路_どんな中学校に行きたい?
小学校卒業後は、地元の公立中学校か、受験を伴う中学校かで進路が分かれます。小学生のうちから受験のことを考えなくても、進学先はあるのだからそれでいいというのも考え方のひつとですが、その選択がその後の人生を分けることもあります。
進学にあたって受験が必要なのは、私立中学校、公立中高一貫校、国立中学校の3つ。私立高校の中には、中高一貫制度をとっていることで高校からの入学を受け入れていないところも多く、希望校によっては高校受験時の選択肢が狭まることも。
また私立大学の付属中学校なら大学までの入学が担保されるところもあり、子どものその後の学生生活に大きく影響します。中学校でどのような学生生活を送りたいか、どんな学校で、どんな友だちと過ごしたいかなど、総合的に考えて決めるとよいでしょう。
公立中学校 | 私立中学校 | 公立中高一貫校 | 国立中学校 | |
受験の有無 | 受験なし | 受験 | 受験 | 受験 |
応募資格 | 基本的に学区制 | 住所制限などは ほぼなし |
募集地域が限定されていることが多い。 原則として居住自治体に限定 |
通学区域の限定 あり |
選抜方法 | 選抜なし | 入学試験を実施。 面接、書類選考のある学校も多いが、試験の結果を重視 |
適性検査(作文含む)や面接を実施。 小学校の報告書や活動実績などの要素も評価対象 |
入学試験を実施。 内容は学校ごとに異なる (筆記、運動能力試験、面接、小学校の報告書など) 志願者多数の場合、抽選の可能性も |
教育方針・ 内容 |
国の学習指導要領に準拠。 教員の異動が多い |
建学の理念があり、一貫した独自の方針をもつ。 宗教系の学校、男女別・共学校など選択肢は豊富。 独自のカリキュラムで手厚い教育支援を整備 |
将来のリーダー育成を目指す。 中学と高校が併設された「併設型」と6年制の「中等教育学校」があり、 それぞれ先取り学習など独自のカリキュラムで指導 |
国立大学法人が運営。 教育水準が高く、大学の教育研究や大学生の 教育実習の場として機能 |
校舎・設備 | 予算の範囲内で整備するため自由になりにくく、 改善実行に時間がかかる |
施設・設備・自然環境などが整っていて、 部活動など課外活動で使える資材も豊富 |
中・高一緒に使える設備の多く、 普通の公立校よりも整備されていることが多い |
公立校に比べると設備・環境は整っており、 教育実験校として最新の指導法・設備が 導入されることも |
進学先 | 高校受験が必要。 中学校での内申点が大きく影響するため、 中学生活での受験対策が必須 |
中高一貫校では高校受験は不要。 提携私立大学への推薦制度なども多く、 大学の付属校であれば大学進学まで受験不要の学校も。 高校・大学への内部進学の選抜有無については、要事前チェック |
高校受験は不要。 大学への高い進学実績が人気で、 特に国公立大学志願者が多い傾向がある |
高校進学時に試験があり、 不合格の場合は進学できないので、 場合によっては高校受験も視野に。 また、大学への内部進学はできない |
費用 | 無償 | 入学金、授業料など、各学校の規定による。 海外研修や独自プログラムなど、 校外活動費も視野に入れておく |
中学校の授業料は無償で、高校も安価。 ただし、海外研修や独自プログラムなど、 校外活動費は普通の公立校よりも高め |
中学校の授業料は無償。 高校も比較的安価だが、 教育後援費など+αがある場合も |
中学受験のシステム_中学入試ってどんなもの?
どんな試験なの?
中学入試の試験形式は、学校ごとにさまざまなパターンがあります。科目の筆記試験のほか、面接 書類選考などがあり、場合によっては作文などの独自試験を設けているところも。スタンダードなのは、国語・算数・理科社会の4教科型。次に多いのが国語と算数の2教科型。そのほか、3教科選択型や1教科受験など学校によって異なります。 国語と算数を基本として複数の科目を選択させる学校も多く、最近は英語を試験科目に取り入れる学校も増えています。
いずれにしても、慣れていないと解けない問題が多く出題される傾向にあり、小学校でどんなに優秀な成績を収めていても、中学受験では太刀打ちできないことがほとんどです。中学受験をするなら、事前にきちんと備えておくことが重要です。
●中学入試試験科目
試験科目 | 特徴 | |
4科目型 | 国語・算数・理科・社会 | 最もスタンダートなパターン。 難関校・上位校に多く、全教科の対策が必要。 |
2科目型 | 国語・算数(あるいは国算理社 から科目を指定・選択) |
中堅校に多いが、 その教科を得意な子が集まるので、 難易度が上がる可能性も。 |
帰国子女型 | 面接や英作文など | 帰国子女や外国人向け。 英語力を測る試験、あるいは 科目試験の合否ラインを一般受験と区別することも。 |
適性検査 | 公立中高一貫校の科目横断型テスト | 複数の強化の組み合わせ問題で記述式。 発想力や表現力が問われるため難易度は高い。 |
その他 | 3科目選択や1教科受験など | 音楽や体育の実技試験、作文、英語試験が加わることも。 |
入試日はいつ?
入試日は学校によって異なります。地域ごとに多くの学校が同じタイミングで試験日を設定しており、首都圏では、千葉・茨城・埼玉は1月前半から試験が始まり、東京・神奈川の入試が本格的にスタートするのは2月1日です。その日を皮切りに、5、 6日までに受験を終了します。
学校によっては入試日が複数設定されており、受験日ごとに偏差値や倍率が違うことがあります。また、試験日が同じ複数の学校に出願しておいて、当日の朝までに、それまでの受験結果を踏まえて受験校を選ぶ「ダブル出願」や、午前入試、午後入試を導入している別々の学校を、 同日の午前・午後で受験する「同日ダブル受験」という方法も。公立中高一貫校は都道府県によって日が決められているので、公立中高一貫校同士での併願はできません。
●併願校試験スケジュール例(東京・神奈川の場合)
1月中 | 2月1日 | 2月2日 | 2月3日 | 2月4日以降 | |
チャレンジ校 | チャレンジ校① 第1志望校 |
チャレンジ校② | |||
実力相応校 | 実力相応校① 腕試し受験 |
実力相応校② | |||
安全校 | 安全校① 保険 |
安全校② | 安全校③ |
志望校はどう決める?
上記の内容を踏まえ、志望校選びは、試験日が重ならないように 「第1志望校」「併願校」などを選択する必要があります。日程のほか、子ども本人の心と体の負担と経済条件などを考えて戦略的に行いましょう。
まず決めるべきは「第1志望校」。通学の利便性や校風、カリキュラムなど総合的に考えて、子どもがいちばん行きたいと思える学校を選びます。 次に併願校。1枚だけに絞って受験するのは、精神的にもつらく、本番用に入試慣れをしておくためにも複数校受験するのが一般的です。
選び方はいろいろですが、学力的に難しいかもしれない「チャレンジ校」偏差値的には十分合格圏内の「堅実校」、学力に見合った「実力相応校」など、いくつか選択肢を検討しましょう。
自分のレベルをどうはかる?_偏差値って何?
偏差値って何?
偏差値とは、その試験を受けた集団の中で、自分がどのくらいに位置しているのかを示す数値です。真ん中が「偏差値50」で だいたい25から75ぐらいまでの値で示されます。平均点=偏差値50になるように換算し、平均からどれぐらい差があるかを数値化したもので、偏差値70になると受験者の上位2%、偏差値60で上位15%に入る成績ということです。テストの難易度によっても変わるので、同じ点数を取ったからといって、偏差値が同じになるとは限りません。
偏差値の算出方法は、「偏差値 =(得点 平均点) 標準偏差× 10+30」。標準偏差は、データのばらつきをみる値で、100点 の人もいれば、0点の人もいるなど、各人の得点に差が大きいほどその値も大きくなります。 逆に多くの人が同じぐらいの点を取った場合、標準偏差の値は小さくなり、1点の差が大きな違いになるということです。
偏差値はどうみればいい?
勉強を続けるなかで現在の自分の実力をどう見積もるかの指標になるのが偏差値です。 「チャレンジ校」「安全校」など志望校を選択する際も、模試などで示された偏差値を基準に検討します。偏差値は、そのテストを受けた人たちの中での評価ですから、母集団がどういうレベルかによって数値は変動します。
中学受験では日々塾などで学習する一部の子どもたちが母集団になるわけですから、レベルが高く、偏差値は低めに算出されます。特に、難関校志望生が多い有名塾で行われる模試などでは低い数値が出ると言われています。
どんな模試を受ければいい?
首都圏には「四大模試」と言われる模試があります。
・全国公開模試(日能研)
・サピックスオープン(サピックス)
・統一合判(首都圏模試センター)
どの模試も母集団が違うので、算出される返済も変わってきます。できれば同じ模試を続けて受け、自分の実力の伸展を見極めるのがよいでしょう。
ただ、試験の合格不合格は模試の偏差値だけでは測れません。試験当日の体調や心理的な問題も影響するので偏差値はあくまでも参考程度にして、数値の上下に振り回されず、地道に学習することが大切です。
『ビタミンママ Vol.94 いま、中学受験が増えている理由』では、いま中学受験をする小学生が増えている理由に迫りつつ、中学受験を考えるなら知っておきたい基礎情報や、注目の中高一貫校を紹介しています。