~先生が教える学校から生徒が自ら学ぶ学校へ~ 桐蔭学園中等教育学校4年間の軌跡

桐蔭学園中等教育学校 ビタミンママ
2019年に男女共学の新たな進学校として生まれかわった桐蔭学園中等教育学校。
「自ら考え判断し行動できる人材の育成」を目標に、「アクティブラーニング型授業」「探究」「キャリア教育」の3つを柱とする教育を展開しています。生徒と共に新しい学校づくりに尽力してこられ、現在5年生の主任もされている教頭の橋本先生に、これまでの軌跡を振り返っていただきました。

「傾聴」と「承認」の姿勢育み
「互いに認め合い、共に学び合う」教育を推進

「見える学力」だけでなく、思考力や判断力といった「見えにくい学力」や、学びに向かう姿勢や人間性といった「見えない学力」を重視する教育に舵を切って4年。生徒たちは主体的に活動するようになり、学園全体に活気があふれ、新しい教育の先にある明るい未来がより身近に感じられるようになってきました。

「互いに認め合い、共に学び合う」教育スタイルは、先ずは人の話をしっかり聞いて受け入れる「傾聴」と「承認」の姿勢を身に付けることから始まります。

入学前の新入生オリエンテーションでは、先ずはそっぽを向いたり、手悪さをしながら聞いてもらう体験をした後に、話し手の目を見て相槌を打ちながら聞いてもらうという体験をしてもらいます。こうした活動を通じて、相槌を打ちながら聞くと、興味が湧いてきて、もっと聞きたくなってくることが実感でき、「傾聴」の姿勢が身に付いていきます。

桐蔭学園中等教育学校 教頭先生 ビタミンママ

5年生の学年主任も兼務する教頭の橋本雄介先生。担当科目は国語、3年生と5年生の探究、模擬国連部の顧問も務める。

朝のホームルームで1年生から取り組む「1分間スピーチ」は、「傾聴」と「承認」の姿勢を育てる代表的なプログラムです。

テーマは「将来の夢」や「私の宝物」など学年や時期によって変わり、聞き手は、しっかりと話し手の方を向いてうなずきながら耳を傾け、発表後には拍手やメッセージを送ります。話し手はみんなから承認されていると感じることができ、自己肯定感が醸成されていきます。

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入学当初は自分中心だった生徒も、「傾聴」と「承認」の積み重ねにより、人にはいろいろな思いや考えがあって、それぞれが尊いということを体得し、視野を広げていきます。思春期真っ只中の2~3年生では、ケンカや意見の衝突もありますが、こういった日常もすべてが大切な学びの機会です。

社会に出る準備段階の今のうちにたくさん失敗して、そこから学んでくれればいい。他者とぶつかることで多様性を知り、お互いに認め合える「承認」の姿勢も育っていきます。

桐蔭学園中等教育学校 教頭先生 ビタミンママ

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様々な課題解決能力を育む「探究」プログラムで
社会との関わりを実感

1年生から行う「探究」では、1年生では学校、2年生で地域に、3年生で世界へと、取り組むテーマを広げていきます。国際課題に挑む3年生の「15歳のグローバルチャレンジ」は、4人1組のグループにそれぞれ担当国が割り振られ、自国だけでなく、他国への理解も深め、最終的には学年全体で模擬国連会議を行い、全会一致での問題解決を目指すというプログラムです。

全部で70か国ほどのグループがそれぞれの政策を持ち寄り、他国の意見に耳を傾けながら立場の違いを超えて議論を重ねる活動を通して、グローバルな視野はもちろん、リーダーシップや交渉力、多様性、戦略的な思考など、社会に出たら必要となる能力を身に付けていきます。

もちろん、ここでも先に述べた「傾聴」と「承認」は不可欠で、このプログラムをきっかけに大きく成長する生徒もいます。この議論での発言をきっかけに、どちらかというとおとなしかった生徒が、積極的に自分の考えや意見を発言するようになったという事例もあります。

 

おそらく、自分は意見が言えるんだ、言ったら周りが受け止めてくれるんだという「承認」を実感できたのでしょう。これがきっかけで成績もぐんぐん伸長し、今では模擬国連部の副部長になって、全国で行われる会議に参加するようになりました。

探求学習 桐蔭学園中等教育学校

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生徒が自ら考えたくなる環境を用意し
一人一人の夢の実現をサポート

私たち教員は工夫を凝らし、「生徒が自ら考えたくなる環境」を用意しています。

桐蔭横浜大学をはじめとするさまざまな大学が主催するコンテストやコンクールへの挑戦を後押ししていることもその1つです。コンテストやコンクールは、理系の競技大会やスピーチコンテストなどさまざまあり、中には、参加すると大学入学後に単位認定してもらえるものや、総合型選抜に利用できるものも。生徒たちは自分の興味関心はもちろん、進路や将来も視野に入れながら積極的に参加しています。

昨年、4年生以上を対象に、心理学、環境学、生物学、建築学を大学で学ぶプログラムと、学園内に移築された陪審法廷で模擬裁判を行うプログラムへの参加を募りました。予想をはるかに上回る、100名以上の希望があり、驚きました。我々が思っていた以上に生徒に自ら学ぶ意欲が備わっていることを実感した出来事でした。

参加後は、「何のために学ぶのか」「どういう風に社会と繋がったら自分は幸せなのか」を考えるようになったなど、嬉しい報告も寄せてくれました。

一人一人が輝ける
生徒主体の学校作り

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生徒主体の学校作りを行っていることも特長です。教員は全生徒が学校作りに関わるという意識をもてるよう、入学したときから「一緒に学校を作っていこう」と繰り返し話しています。
そのため、生徒たちには「自分たちで意見を出す」「自分たちで変えていく」という思考が浸透しています。

5年生の3学期にある修学旅行もそのひとつです。当初、旅行会社と教員でプランニングをしていたところ、生徒たちから「自分たちで考えたい」と熱心な要望があがり、生徒に任せることになりました。修学旅行委員を中心にアイディアを募り、旅行会社と話し合いを重ね、高野山は全員で、その後方面別(白浜、鳥羽、大阪、奈良)に分かれて行動するというプランを作り、現在は実現に向けて進行中です。

我々教員は、それぞれがリーダーシップをとるよう指導しています。ここでいうリーダーシップとは、トップダウン型(全体の意思決定をリーダーのみで行うもの)ではなく、シェアド・リーダーシップ型(全員がリーダーシップを発揮する)を意味します。

生徒たちは「自分たちで決めていることには、大きな責任があり、いい加減なことはできない」と、責任感をもって熱心に取り組んでいます。こうした主体的に取り組む姿勢や協働性は一人一人のステップアップだけでなく、学校全体の活性化にもつながっています。下級生にも受け継がれていってほしいところです。

進路を決める上で欠かせないのは
自分の価値観を見つめ、生き方を考えること

「行きたい大学やなりたい職業ではなく、君は何を大切にして生きていきたい?」「どのように社会と繋がりたい?」という問いかけを続けていたら、大学入試のその先を見据えた広い視野をもつ生徒が増えてきました。

また、自分の考えを書いたり発表したりという日々の自己表現の積み重ねにより、自身の価値観が明確になっていき、文理選択や志望する大学、学部の選択においても、「自分はどんな学問を学んだら自分らしく社会と繋がっていけるのか」という視点で、より深く考えることができるようになってきました。

各学期の面談でも教員はあくまでも聞き手に徹し、自分の言葉で思いや考えを話すよう促します。集大成となるのが5年生3学期の「プレゼン型3者面談」で、生徒が自分自身の進路に関する資料を準備し、親と教師に向けてプレゼンするのです。

「私は〇〇に興味があって、大学で〇〇を学びたい。だから模試の成績は〇〇だけど、これからをこういうプランで挑戦していきたい」と、この先の道筋を熱く語る我が子の姿に感激して涙する保護者の方もいらっしゃいます。

桐蔭学園中等教育学校 教頭先生 ビタミンママ

個々の違いを認め合い、尊重し合う教育を推進するに当たり、入学試験も2科目、4科目に加え、探究型入試、グローバル入試と多岐にわたる入試を導入しました。より多彩な個性が集まり、ますます活気に満ちた学園となることを期待しています。

桐蔭とは「鳳凰のひなが育つ場所」という意味で、鳳凰は「世の中に幸せをもたらす鳥」です。新生桐蔭学園中等教育学校で自らの人生を切り拓いていくための資質・能力を養い、未来へと羽ばたいていってほしいと願っています。

桐蔭学園中等教育学校 LINE ビタミンママ

お話を伺ったのは

桐蔭学園中等教育学校 教頭 橋本雄介先生