テストの点数だけで
子どもの頭の良し悪しは決まらない
多くの子どもにとっての「勉強が苦手」は、テストでいい点数がとれないことに直結しているように感じますが、そもそもテストというものに対しての誤解があります。本来、小学校の単元ごとに行われるテストや中学・高校の定期テストなどは、選抜のために使われる入試問題のような点数の良し悪しで外部から評価されるためのものではなく、自分の理解できていない分野をしっかりと把握することを目的としたもので、子どものためのものです。
ですから、ぜひ親子で学校のテスト結果を分析するようにしてください。単に知識が足りていないのか、内容は理解しているのに解答として表現できていないのか、問題を解くスピードがゆっくりで時間が足りないだけなのか、点数だけではわからない子どもの真の学習理解度が見えてくるはずです。弱点が分かれば、その子にあった対策を考えることができます。闇雲に勉強するといった間違った努力によって、学ぶ意欲を削がれることもなくなるでしょう。
また、「評価の多様化」を進めていくことも大切です。例えば、最初に受け持った教科担当教員の授業の印象だけで、その科目に対する好き・嫌いを決めてしまうなど、たった一人の大人との出会いでそのもの全体の評価を確定してしまうのは、もったいないです。学習面だけでなく日常生活でも、一面だけをみて「だめなやつだ」といわれ、自分でもそう思い込んだり、たかだか30人前後のクラスメイトとうまくいかないから「自分は人付き合いが苦手だ」と決めつけたり。
世界は限りなく広く、その子が持つ素敵な部分や感性を「すごい!」「おもしろい!」と言ってくれるヒトが必ずいるはずなのに、単なる勘違いや思い込みで可能性の芽を摘んでしまっていることが、教育現場では(家庭でも!)多いと感じています。テストの点数も人の評価も、それだけがすべてではないことを忘れないでください。
子どもの教育環境は
「家庭×塾×学校」のチームで整える
私は常々、子どもが学びに取り組む姿勢は、「環境」次第だと考えています。ハード面、ソフト面の両方を含めた「環境」によって、子どもの学びに対する意識が大きく変わります。つまり、子どもに楽しく学んでほしいなら、「楽しく学べる環境」を整えればいいのです。逆に、「勉強には忍耐がつきものだ」という環境で育てば、子どもは学ぶことを辛いものと捉えたまま成長していくでしょう。
そこで大切なのが「チームで取り組むこと」です。家庭だけでできることには限りがありますから、学校や塾の力を借り、チームで子どもの教育環境を整えるのがおすすめです。本格的な体験学習や、仲間と学べる充実した教育環境は、学校ならではの大きな魅力ですし、塾に通い始めて「学ぶ楽しさ」や「解ける喜び」に気づく子どももたくさんいます。
中学受験塾を選ぶ際は、中学進学後も見据え、どのような環境で子どもを育てていきたいのか、先ずは各家庭でしっかり話し合いましょう。私がもっとも大切だと思うのは、子どもが「楽しめる」こと。楽しく学んでいる子は自ずと成績も上がってくるものです。保護者の方に中学受験の経験がなくて不安だったり、勉強を楽しめなかった過去があったりするなら、勉強に関しては塾や学校に任せ、家庭は安心できる場所として環境を整えていくのも良いと思います。ハード面だけでなく、声かけや接し方などソフト面にも気を配ってあげてください。
我が子には何が必要か、親である自分たちに何ができるのかを見極めて、塾やその先の学校選びを行いましょう。ご家庭の方針に合った子どもの学びの環境を実現するために、最高のチームメイトを見つけてください。
子どもの成長は、目の前の成果だけでなく長期的な視点で見守ってください。そして最後は、お子さんへの「愛」が何よりも大切です。子育てに迷いはつきものですが、愛情さえあれば必ずなんとかなります。一番の味方として、お子さんを見守ってあげてください。
「学ぶようにあそび、あそぶように学ぶ」
千代田中学校・高等学校(予定)で実践する新しい教育のカタチ
私が委員として関わった経済産業省の「未来人材ビジョン」(2022年)には、さまざまな調査結果が掲載されています。日本の18歳に行った実態調査では、「将来の夢をもっている」「自分で国や社会を変えられる」と感じると回答した若者が、諸外国のなかでもっとも低い割合でした。高水準の学力を仕事に生かしたいと考える子どもの割合も低く、グローバルに活躍できる人材が育っていないことが浮き彫りになりました。
これらの結果からも、日本の教育には大きな改革が求められています。次の社会を形づくる若い世代に対しては、「常識や前提にとらわれず、ゼロからイチを生み出す能力」 「夢中を手放さず一つのことを掘り下げていく姿勢」 「グローバルな社会課題を解決する意欲」 「多様性を受容し他者と協働する能力」といった、根源的な意識・行動面に至る能力や姿勢が求められています。
千代田では、好きなことにのめり込んで豊かな発想や専門性を身に付け、多様な他者と協働しながら、新たな価値やビジョンを創造し、社会課題や生活課題に「新しい解」を生み出せるようになるための環境を用意しています。
本来、学ぶことは楽しいこと。その原点に戻って、子どもたちが自ら楽しんで学ぶために私たちができることを追究し続けていきます。
お話を伺ったのは
千代田中学校・高等学校(予定)校長 (現:千代田国際中学校・武蔵野大学附属千代田高等学院)木村健太先生
広尾学園中学校・高等学校で医進・サイエンスコースを立ち上げ、学習者の主体性を軸とした研究的な学びを進めてきた。学外では、内閣府総合科学技術・イノベーション会議、経済産業省産業構造審議会、同省未来人材会議、同省未来の教室、科学技術振興機構次世代科学技術チャレンジプログラム等の委員を歴任。初等中等高等教育と社会の連続性を意識しながら学びの本質について多方面から追求している。2024年度より現職。
- 1
- 2