横浜市青葉区の緑豊かな環境にある桐蔭学園中等教育学校は、従来型の教育から大きく舵を切り、生徒主体の教育を推進してきました。
2025年春、男女共学になって初めての卒業生を送り出した同校。新時代を生き抜く力を伸ばす教育の道のりについて、校長の玉田裕之先生にお話を伺いました。
「個」と「協働」で自己探究する6年間

(桐蔭学園中等教育学校)
桐蔭学園中等教育学校は、「自ら考え判断し行動できる子どもたち」を教育ビジョンに、「アクティブ・ラーニング型授業」「探究(未来への扉)」「キャリア教育」の3つを柱に、生徒主導の学校づくりを行なっています。
「アクティブ・ラーニング型授業」は、授業のはじめに目標を設定した上で先生による講義があり、その後のペアワークやグループワーク、プレゼンテーションといった「協働」の学びがメインになります。
大切にしているのは、授業の最後には必ず個人に戻って「ふり返り」を行い、目標が達成されたかを確認する点です。
この作業には「ふり返りシート」が使用され、生徒はこの用紙に今日学んだ成果を書き記していくことで、「協働」での学びが定着していきます。

2年生の探究は、3~4人のグループで地元・青葉区の防災や子育て、地域活性化などの課題に取り組みます。(桐蔭学園中等教育学校)
「探究(未来への扉)」は、1年生では自分の興味があることをテーマに情報収集や考察、発表などの基本を学習し、2年生では地元・青葉区の課題に取り組み、そして、3年生では世界に目を向け模擬国連を開催します。
生徒が各国の大使になりきり、担当する国について理解を深め、自国の利益を守りながら、よりよい世界の実現にむけての議論を交わします。
自分の身の回りからグローバルな課題へと、様々な視座を養ってきた生徒たちは、4年生でいよいよ個人で「自らのあり方・生き方と密接に関わる課題に基づく研究」=「ウェルビーイング探究」に挑んでいきます。

(桐蔭学園中等教育学校)
「アクティブ・ラーニング型授業」や「探究(未来への扉)」は生徒主体で授業が進められていきます。グループで協働し、自らの頭で考えて課題に取り組んでいくので、受身型の授業では得られない、確かな記憶として定着していきます。
また、キャリア教育の一環として、1年生から朝のホームルームの時間に「1分間スピーチ」を実施しています。テーマは学期ごとに変わりますが、「将来の夢」や「今一番興味があること」など、毎日1人ずつスピーチし、発表者にはクラス全員からメッセージカードが届き、自身のスピーチをふり返ります。
聞く側も傾聴(聞く力)と承認(認める力)を学び、その後、質問、対話へと時間をかけて発展させていきます。自分の考えを発表する時間は、自身と向き合い、内面にあるものを素直に発信していく力になっています。

1年生から6年生までが取り組む朝の1分間スピーチ。スピーチが終わったら拍手を送る、メッセージカードには批判的なことを書かない、がルールです。(桐蔭学園中等教育学校)
社会とつながり自己をみつめるさまざまなプログラム
海外研修や大学との連携にも力を入れています。3年生で行う全員参加の海外語学研修では、韓国の英語村で英語漬けの日々を送り、他国の同世代と交流を深めます。
この経験を経た生徒たちの海外への興味関心や英語学習への意欲が一段と高まるので、4年・5年を対象に、アメリカ・ニュージーランド・シンガポールなど、多彩な海外研修(希望制)を用意しました。
4年生を対象に行う、大学の研究室を訪問し最先端の学びに触れる「アカデミック・キャンプ」は、希望制にもかかわらず毎年100人以上の生徒が参加します。

3年生全員参加の海外語学研修。韓国英語村内にある語学学校のドミドリーで生活し、英語の学習をはじめ海外の文化に触れ、グローバルな視座を養います。(桐蔭学園中等教育学校)
また、桐蔭には「アフタースクール」と呼ばれる放課後の活動があり、前期課程では90%を超える所属率の部活動のほか、教科学習の枠を超えた体験講座がほぼ毎日実施されています。
このようなさまざまな活動からも、自己をみつけるヒントを見出してほしいと考えています。

部活動を含め、放課後の時間を活用し、生徒の学びや興味・関心を広げるアフタースクール。好奇心を刺激する様々なプログラムが連日開催されています。(写真はアジの解剖)(桐蔭学園中等教育学校)
デフォルトになったアクティブ・ラーニング
生徒の協働活動に委ねることが、アクティブ・ラーニングの要です。2015年にはじめた当初は、従来の指導方法とは全く異なるものでしたので、我々教師も手探りでした。しかし、私自身の授業では、半年ほど経った頃、ペアワークやグループワークの様子が明らかに活発になってきて、アクティブ・ラーニング=生徒主体の学びが動きはじめたと感じました。
今年、共学化に移行してから初めての卒業生を送り出しましたが、受験においても結果を残すことができました。難関大学への進学が増加するとともに、航空系学科や獣医学系学科など、バラエティに富んだ進学実績となり、生徒たちに、自身の将来について深く模索し、実現しようとする力が育まれていることを実感できました。
生徒主体のアクティブ・ラーニングがデフォルトになったのです。

桐蔭学園中等教育学校の修学旅行委員(桐蔭学園中等教育学校)
「アクティブ・ラーニング型授業」「探究(未来への扉)」「キャリア教育」の3つの学びから、自分の考えを他者に発信する力を日々身につけていきます。そして、5年生の学期末にむかえるのが「プレゼン型三者面談」です。
「将来、自分はどうありたいのか」「どんな職業に就きたいのか」「そのために、どの学部をめざすのか」など、自分の成績を踏まえた上での学習計画まで盛り込んだ資料を作成し、保護者と担任の前で生徒自らプレゼンします。
1年生から続けてきた主体的な学びにより、自己を発見し、自分の進む道が明確になるからこそ行える、この「プレゼン型三者面談」を経て、受験にも主体的に取り組むことができます。

5年の学年末に行われるプレゼン型三者面談(桐蔭学園中等教育学校)
桐蔭学園が考える、新しい時代に必要な力は6つあります。それは、「協働力」「エージェンシー(自分ごとにする力)」「チャレンジ力」「キャリアデザイン力(未来を描き人生を切り開く力)」「思考力」「探究力」で、生徒主体の教育でこそ実現できる目標です。
共学化してはじめての卒業生を送り出した今、この6つの力を今後もぶれることなく伸ばすことを目標に、生徒一人ひとりの夢の実現をサポートしていきます。
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