日本女子大学附属中学校・高等学校では、創立者である成瀬仁蔵の言葉「自学自動」を教育の原点とし、約9万坪の緑豊かな敷地内で附属校ならではのゆとりある6年間を過ごします。
中学3年生が取り組む「年間研究」は、チャレンジ精神や好きなことにとことん取り組む姿勢を育むとともに、論理的思考力や表現力も身につきます。
どのような取り組みが行われているのか社会科の宮崎可奈子先生にお話を伺いました。
年間研究の指導やサポートを行っている社会科教諭の宮崎可奈子先生(日本女子大学附属中学校・高等学校)
何を選ぶかは自分次第
自由に研究できるのが楽しい!
体験型の学びを重視する日本女子大学附属中学校での3年間は、「なぜ? どうして?」に溢れています。
中学3年生で行う「年間研究」は、3年間の学びの集大成となる取り組みです。日ごろの学校生活や勉強したことの中から、自分が興味のあるテーマを自由に選択。1年の期間をかけて調査・研究を行い、3学期に論文にまとめてその成果を展示・発表します。
この日は、2回目の中間発表が行われていました。クラスの枠を超えた十数人のグループごとに、担当教員が1人つきます。
社会科の宮崎先生が担当するグループでは、「建物のリノベーション」や「満員電車を解決するには」といったテーマで、各自が作成したスライドをもとに発表を行っていました。
「私が担当するグループには、街づくりや社会課題を解決するテーマの生徒たちが多く集まっています。他には、理科の実験的な内容が多いグループや、家庭科に関連した食、服飾、メイクなど、ジャンルは多岐にわたります」。
ある程度、分野や系統が似たテーマの生徒を同じグループにしているため、中間発表を通して、友だちの視点や意見を取り入れられるのも大きなポイントだといいます。
グループのメンバーは、仲間の発表に熱心に耳を傾けます。自分とは異なる視点や意見があることに気がつくのも大切なポイント。それをまた自らの研究に反映させて、よりよい論文に仕上げていきます。(日本女子大学附属中学校・高等学校)
2025年度は初の試みとして、日本女子大学の協力を仰ぎ、何人かの生徒が夏休み期間中に大学の先生からお話をうかがうことになっているそう。
「リノベーションをテーマにした生徒は、建築デザイン学科の教授のところにうかがう予定です。専門家のアドバイスを受けて、さらに研究に意欲的になってくれるのでは、と期待しているところです」と宮崎先生。
未来へとつながる学び
興味関心を継続する生徒も
2月には、全員の作品が中学3年生のフロアに展示されます。
また、特に秀でた研究を行った生徒は、全校生徒の前でプレゼンテーションをします。
それを見た中学2年生は、「私はこんなことをテーマにしようかな」と、自身が年間研究でやってみたいことを考え始めます。
中学1年生は、上級生への憧れのまなざしとともに、「いつか自分もこんな研究をするんだ」との思いを胸に刻みます。
「建物のリノベーション」をテーマに、中間発表を行う生徒。リノベーションとは何か、そのメリット、社会への影響など、約半年の成果を発表します。わかりやすい伝え方やスライドの作り方といったスキルも向上します。(日本女子大学附属中学校・高等学校)
宮崎先生に、これまでに印象に残った研究についてうかがいました。
「京都が大好きで、オーバーツーリズムについて研究した生徒がいました。夏休みには現地に出かけ、自分で写真をたくさん撮影してきたり、京都検定まで取得。その検定のための講座を主宰している会社の代表取締役の方に自分でアポイントメントを取り、インタビューに出向いたりもしていました。最終的に、論文は5冊にもなり、よく調べまとめたなと感心しました」。
今後の研究の進め方として、「アンケートを取る予定」と発表した生徒。発表後、「アンケート項目はどのような内容を考えていますか?」、「何人くらいにアンケートを送るのですか?」と、グループのメンバーから活発な質問が寄せられていました。(日本女子大学附属中学校・高等学校)
その生徒は現在高校1年生に在籍。年間研究は終わりましたが、この夏休みも「初めて祇園祭にあわせて京都に行きます」と、京都への愛は変わっていないとのこと。さらに、「せっかくオーバーツーリズムについて見識を深められたので、今後は海外の事例など、さらに幅を広げて研究してみたい」と話しているそうです。
「年間研究で選択したテーマがきっかけで、大学の学部を決めた生徒や、❝将来はこんな職業につきたい❞と思うようになった生徒を今までにたくさん見てきました。
年間研究は中学3年生の1年間で完結するのではなく、新たな疑問や課題を得て、さらに学びを深め未来につながっていくということを肝に銘じて、これからも生徒たちの研究をサポートしていきます」(宮崎先生)。
全員の作品が展示されます。特に秀でた研究を行った生徒は、全校生徒の前でプレゼンテーションをします。(日本女子大学附属中学校・高等学校)
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