1938年に、女子の商業高校として創立してから80余年の時を経て、男女共学の進学校として大きな変革を遂げたのは「社会に貢献できる人間」という建学の精神を大切にしながらも、時代の変化に合わせて、能動的にアップデートを続けてきたからです。
CHALLENGE、CHANGE、CONTRIBUTIONという3Cをベースに常に進化しています。
▲高2の修学旅行最大の目的でもある「アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所」の歴史を真剣なまなざしで見学し、心に刻む生徒の姿がありました。|青稜中学校・高等学校|東京都品川区
今しかない感性での体験 アウシュビッツへの修学旅行
青稜では、20数年前から修学旅行を核とする平和教育を行ってきました。グローバル教育が進む今、国内にとどまらず、世界の平和に目を向けようとの思いから、これまでの沖縄・石垣島コースのほか、2019年度はポーランドとドイツをめぐる国外コースも選択肢に加えました。
ヨーロッパでは大学卒業までに一度は訪れることが多いポーランドのアウシュビッツですが、日本の学校の修学旅行先としては、ほとんどない試みです。しかし、高校生の感性で感じてほしいという考えから、2017年の発案後、2018年には教師陣による視察が行われ、2019年には実現という、青稜らしいスピード感と実行力で実現しました。
現地の学生との意見交換で広がる 問題意識と解決に向けた視野
アウシュビッツ強制収容所は、第2次世界大戦中、ポーランド南部にヒトラー率いるナチス・ドイツによって作られ、人種差別によるホロコーストと強制労働で多くの命が奪われたことでもよく知られています。
その90%はユダヤ人、そして政治犯や同性愛者、聖職者などの理由でポーランド人も収容されました。「人類史上最大の負の遺産」を残す資料館等を見学した生徒たち。想像を絶する悲惨さや平和の意味など、それぞれが感じた衝撃を胸に、ポーランドの大学生との交流会へと向かいます。
▲日本語を学ぶポーランドの学生との交流ディナー会。|青稜中学校・高等学校|東京都品川区
いくつかのグループに分かれて行う意見交換で聞いた学生たちの考え方は、過去のドイツの行動に対する固執した怒りや偏見ではなく、「歴史は同じ過ちを繰り返さないために学ぶべきで、肝心なのは次にどう進めばいいのか」というもの。新鮮な驚きをもった生徒は少なくありません。
また「戦争は国を挙げての喧嘩で、自分たちのAという意見に対して、相手がBと言うことを想定できるか?Cという新たな考えでお互いに歩み寄れるか?が肝心で、想像力とコミュニケーション力があれば起こらなかったのかもしれない」「きめ細かで勤勉という意味で日本人と国民性が似ているとされるドイツ人が、あそこまで残虐な行為を行ったのはなぜか?」などの疑問にもつながり、この修学旅行がグローバリゼーションのなかでの真の平和教育であることを実感します。
さらに、ポーランドの同年代の学生たちが、自国や世界の未来、そして平和や政治に深い関心をもっており、日常的な話題に上る点にも日本との違いを感じました。
帰国後はそれぞれがレポートとしてまとめ、プレゼンテーションをします。これによって、生徒全員の意識共有がなされ、真の平和教育へとつながっていきます。