川崎市宮前区の幼保連携型認定こども園「ゆりかご幼稚園」の園長 荒井先生と園児との思い出が絵本になりました。
えほんのタイトルは「ゆきだまのまほう」。
荒井先生が先代から幼稚園を受け継ぎ、園長として就任した当時の出来事です。
大学や大学院で幼児教育や心理学の研究をしていたとはいえ、現場での経験がなかった荒井先生は、子どもたちとうまく接することができず、思い悩んでいたと言います。
ある雪の日の朝、園庭で遊ぶ園児たちをただ眺めている園長先生に、一人の女の子が雪玉を差し出し、自分のスカートを広げ「ここに当てて」と促しました。言われるままに投げた雪玉がスカートに命中したことをきっかけに、まわりの園児たちも加わって雪合戦が始まりました。
子どもたちと一緒に雪まみれになって走り回ったその日から、子どもたちとの距離が一気に縮まった気がしましたと園長先生。
「遊びの輪の中に引き入れてくれ、子どもたちと打ち解けるきっかけとなった女の子のさりげない優しさに、人としてもっとも大切なことを教わりました」。
ちょっとした気配りで人との距離が縮まることを実感した荒井先生は、それ以来、園児だけでなく、人とのコミュニケーションを深める上で、この日の出来事を指針としているそうです。
今も園長先生の心を照らし続けるこの思い出を、機会がある毎に周囲の人に伝えているうちに、感銘を受けた卒園児の保護者から絵本にしては?と話が舞い込んだといいます。
「『ゆきだまのまほう』のストーリーさながらに、一人の想いが人から人へと伝播して、多方面からの協力を得て、絵本の完成へと漕ぎつけました」と園長先生。
「私の教育者としての原点となった出来事が、半世紀もの時を超えて絵本となり感無量です。子どもだけでなく、人間関係に悩んでいる大人の方にもぜひ読んでもらいたい」と呼びかけます。