1997年から青葉区でバレエの指導に当たるManami先生。子ども向けのバレエや、クラシックバレエをベースにテンポアップした動きを取り入れた「チア♡バレエ」のほか、大人向けに「ほほえみフラ」や「にこやか太極拳」「J-POPバレエ」など、さまざまなレッスンを展開しています。
最大の特長は「オリジナルバレエ」を取り入れていること。自分でバレエ作品を考えてつくるこのレッスンから、子どもたちはたくさんの学びを得るといいます。
Manami先生に話を伺いました。
自分で想像できるものを自分なりに表現する。
クラシックバレエは文字通り「クラシック」、つまり古典的なもので、演目が決められています。もしアレンジなどを加えた場合は「〜〜〜版」など、守られてきた伝統に手を加えている旨を明記する必要があるそう。
「クラシックバレエの作品はオペラから始まった、劇場で見せるためのものなので、子どもの感性にはなかなか合わないところがあります。自分が何を表現しているのかいまいち理解せず、踊っている場合が多い」とManami先生。
そこで取り入れたのが、オリジナルバレエです。これはManami先生が考えた、「子どもに寄り添ったバレエ」で、子どもたちの想像の世界をバレエで表現するというもの。例えばもふもふした子猫を表現して踊りたい場合、子どもたちは少なからず、子猫がどんな動きをするのかを知っているため、かわいらしさや元気さを表現することができます。これが「オリジナルバレエ」なのです。
「子どもたちが、自分が何を踊っているのかが理解できるバレエを作るのがオリジナルバレエのねらいです。決まった振付を先生から教わって、それを真似するだけのバレエよりきっと楽しんでもらえると思います」。
マインドマップで自分の作品をイメージする。
オリジナルバレエはまずマインドマップに自分のイメージを書き記していきます。例えば「冬眠から目覚めた熊」を演じたいという生徒は、動画を見ながらその動きを参考にイメージを膨らませて行ったそう。またある生徒は魚を演じる際、図鑑だけでは物足りず、水族館まで観察に行ったのだとか。このように文字やイラストで表現したいイメージをマインドマップに書いたあと、実際にどんな動きで表現するのか、ステージ上でどう動くのか、などを考えます。
「当アカデミーのキッズクラスは、3歳ぐらいから入会できるのですが、~何色のお花?どんなにおいがするの?~と伝えることができればオリジナルバレエはできます。こうして経験を積んでいけば、年長さんになると『足の赤ちゃん指くらいのスズランの妖精を踊りたい』と、具体的なイメージができるようになります。さらに小学生では、感情の変化を表現できるようになり、お互いに資料を持ち寄って、こういう動きが面白いんじゃない、こうすれば体で表せるんじゃない、と意見交換ができるまでの成長を見せてくれます」とManami先生。そんな生徒の姿から、想像力と創造性は着実に育まれていることを実感するそう。
さらに経験を積み、小学校高学年にもなるとバレエの専門用語を使ってマインドマップを書き上げ、ステージ上でどう動き、クライマックスが近づくに連れてどんなタイミングでお客さんの方に寄ると効果的かなど、演出も考えられるようになると言います。
自分の作品をつくり上げることで身につく力。
オリジナルバレエは1年間で2本の作品をつくります。まずは毎年7月に開催される発表会での披露が目標。そこに向かって生徒たちはイチから、想像力を膨らませ、先生に相談をしながら、ときにまわりの仲間からのフィードバックも取り入れ、自分だけの作品を完成させます。
「なかなか生み出せない、できないつらさや苦しさから、悔し涙を流して取り組んでいる生徒もいます。形のないものから、見る人にいかに感じ取ってもらうか。小学生くらいだとまだまだアイディアが少ない中で、諦めずに一生懸命考えて作っています。もちろん、私たちがしっかりフォローし、完成した作品で舞台を踏むと着実に力がつきます」。
年2回の合宿は大きな成長を促す機会。
そんな生徒の「諦めない心」を支えているのが年2回の合宿です。スクールの前からバスに乗り、スタジオがある宿泊施設までいくそう。春は「強化合宿」という名の通り、発表会に向けて意識を高めていくことが最大の目的。
とはいえ、子どもたちは普段、一緒にレッスンを受けている仲間と大きなお風呂に入るとか、みんなで食事をするとか、泊まりで過ごすことを楽しみにしています。無理もない話ですが、お互いを知るという目的もあり、私たちも子どもたちの新たな一面に気づけるとても大切な機会になっています。
普段とは異なる環境のなかで一生懸命、練習に打ち込む時間もあれば、みんなで並んでごはんを食べるなど、メリハリのある時間を過ごし、自制心を育みます。
合宿は縦割り。下は小学生から上は大学生までが、一緒に過ごします。
大学生のお姉さんが小学生の面倒を見てあげたり、演技のアドバイスをしてあげたり。小学生がレッスンを受けているときに高校生が「練習中にもしあの水筒が転がってしまうと危ないな」という想像力と状況判断力を働かせ、先生方が声をかける前に自ら動くシーンも見られるそう。合宿はバレエのスキルを上げるだけでなく、いろいろなシーンで人間力を高めるきっかけにもなっています、とManami先生。
秋の「お楽しみ合宿」はレクリエーションの趣が強く、施設がある公園でのびのび体を動かしたり、落ち葉を拾ってオブジェを作ったり。もちろん、バレエの練習も。年2回の合宿は個々のバレエのスキルと人間力を高め、仲間とのコミュニケーションを深める貴重なきっかけになっています。
「合宿のほか、クリスマスパーティとハロウィンパーティも好評です。年上のお姉さんと接することが刺激になり向上心が高まるほか、頑張ればこうなれるという自分の将来像に触れる機会にも。またお姉さんからやさしくされた経験が憧れとなり、自分がその立場になったとき、年下の子にやさしくすることができるようになります」。
たくさんの失敗と成功が自信につながる。
レッスンではたくさん、自己肯定感を育むシーンがあります。例えば始めたばかりの3歳の子にはその子なりの「できること」があって、それが「できた」とき、先生はたくさん褒めます。
「フォーメーションを組んで踊る、しっかりリズムを感じて動く。そしてステージに立って練習の成果を披露する。まずはそこが大事なのですが、それよりも幕が開くと舞台に出ていって、踊りを披露する意識が子どもたちにとってはすごいことなのです」。
普段のレッスンから褒めることを大切にしており、子どもたちのなかに自然と自己肯定感が育まれます。もし指摘したい場合も先に「ここ、すごくいいよね。だからここもこうすると、もっと良くなるよ」と褒めるところから入るようにしているそう。
「否定ばっかりだと、どんどん縮こまってしまう。いいところを伸ばしてあげたいというが前提にあるので、まず褒めてから指摘すると自ら意識するようになり、どんどん良くなっていきます」。
一度、ステージを踏むと大きな成長につながる、とManami先生。この経験を繰り返すことでバレリーナとしての成長はもちろん、諦めない心や人前に立つことへの緊張感の払拭など、たくさん得るものがあると言います。「バレエを通して培った人間力が、将来、さまざまなシーンで大きく寄与してくれるとうれしいですね」。