温厚な父、ピアニスト志望だった母、そして3人の兄と妹、弟、さらに祖父母と10人の大所帯の中で、私は長女としてたくさんの愛に包まれて育ちました。
紫明(しめい)って、珍しい名前でしょ。「山紫水明」をイメージして祖父がつけてくれたんです。
ピアノは3歳から習い始め、大阪音楽大学ピアノ科を卒業後、大阪フィルハーモニー交響楽団のクラリネット奏者だった川崎良一と結婚しました。夫はのちに、大阪文化祭賞を受賞したほどの名手で、強い探究心があり、奏法の研究のためイスラエル、ウィーン、パリを経てベルリン国立芸術大学に留学。
私も3歳になる長女をつれて、ベルリンへ留学しました。「お金持ちだったのね」と言われそうですが、一番大切にしていたグランドピアノを手放して旅費を作り、片道切符で夫のもとへ行ったんです。二人とも学費は奨学金。夫は現地の日本レストランでアルバイトをしながらの生活でした。
貧しくも芸術的な感性があふれる環境の中で、多くの感動と刺激を受けました。忘れられないエピソードのひとつが、芸術大学での最初のレッスンです。
ベートーベンのピアノコンチェルトのソロパートを必死で練習していったのですが、レッスンでは先生がソロパートを弾かれ、私は初見でオーケストラパートを弾かされたのです。しどろもどろの私に先生は「私のすべてをあなたに注ぎましょう」と言ってくださり、涙がこぼれました。それまで1日8時間ぐらい練習してもできなかった箇所が、スラスラと弾けるようになっていく経験は今でも不思議です。
帰国後、ベルリン留学の経験を生かし、「芸術的水準の高さを日本にも」という夢と理想を描いて、大阪の地でアサフ音楽院を設立。2006年に横浜に移転し、のべ1000人の生徒を育成しました。
また、スズキ・メソードとグレン・ドーマン博士の教えのもと、二人の娘とともに「音符ビッツ」を開発しました。「音符ビッツ」は脳科学理論に基づいた教材で、CDと併用することで脳が6倍活性化されることが解明されたことから、視覚と聴覚の統合学習法として、大きな成果を上げています。心・脳・身体をバランスよく育み、音楽の基礎を築くと同時に豊かな知性と感性が培われます。そして社会貢献ができる人材の育成を目的とします。
アサフ音楽院には音符ビッツ教室、ピアノ教室のほか、ハープ教室、ヴァイオリン教室もあります。各種コンクールに入賞など国際経験豊かな講師の指導により、筑波大学附属駒場中高、東京芸術大学などへの進学実績をはじめ、優秀な人材を輩出しています。
アサフ音楽院 院長 川崎 紫明 先生(写真左)
アサフ音楽院 副院長 四宮 香子 先生(写真右)
▲ビタミンママBook 3/1発売!「0〜4歳の気になるジャーナル」↑