心療内科・精神科医として、子どもから大人まで、幅広い年齢のココロの診療にあたっている「陽だまりクリニック美しが丘」理事長の西山晃好先生に、不登校に関わる子どものココロの変化についてお聞きしました。
最も身近な人たちの世界から
「仲間たち」の世界に
先生によると、ちょうど中学受験の勉強をスタートさせる小学4年生くらいから、子どものココロは大きな変化を迎えるといいます。
それに伴い、ココロの問題、対人関係の問題が生じる子どもたちが出てきます。
それまでの子どもを取り巻く環境は、自分の親や養育者など最も身近にいる人たちとの関係が軸にあり、友人との関わりは家ぐるみになるなど、家族を中心に置いた友人関係であることが一般的です。
しかし、このころから次第に、学校のクラスの仲間や友だちグループが自分のココロの拠り所の中心になってきます。
グループの中で一体感のようなものが形成されるようになり、「他人と比べてどうか」「他人からどう思われているか」「どう見られているか」と、周りの目を気にするようになります。
社会的な視点、グループとしての視点が、自分が生活する上で大きなウエイトを占めてくるようになります。この変化で、子どもと親との距離感も変わってきます。
集団の中に
スムーズに入れないことが不登校に
これは自然な成長の過程ですが、そこで強く意識してしまったり、少しうまくいかなかったりすると、結果、集団の中にスムーズに入れず、そのことが不安や苦痛となり、さまざまな症状として出てくることがあります。
その一つが、学校に行かないという行動、つまり不登校です。クラスの中で孤立している、または本人が孤立していると感じてしまうと、学校に行くこと自体が怖くなってしまいます。
この「仲間たちの世界」のステップは、「人の成長における一つのハードル。
最初のふるいのようなもの」だと、西山先生は説明します。
「学校生活を通して集団の中で何かを成し遂げる、仲間と連帯感をもって達成する、という体験を通して、子どもたちは日々成長していきます。
今後の社会で必要となる信頼感を育むことにもつながります。
しかし、それに適応することが難しい子どもたちがいるということも、忘れてはいけません」。
子どもの特性が要因となっていないかを
クリアにしてから問題の解決へ
「学校に行きたくない」と訴える子どもに対して、親は「いいから、早く行きなさい」「教室で座っているだけでいいから行きなさい」などと、つい言ってしまいがちです。
しかし、学校に行けない子どもにとっては、このことを非常に苦痛に感じてしまう場合があります。
「今の状況を乗り切っていく(学校に行けるようにする)ために周りの人たちがサポートするというやり方もありますが、そうすることがその子を追い詰めてしまうと思われる場合は、『今は無理して行かなくていいんだよ』という方向で考えてあげることも大人の役割です」と西山先生。
「学校に行けない状況が、子どもの特性が要因となっていることも考えられるため、周りの子どもと少し違うな、と心当たりがあれば、専門家に診てもらうといいでしょう。
そして、特に問題がないと分かった場合は、あらためてこの課題をクリアするだけの力があるかどうか、解決にはどのようなサポートが必要かを見立ててあげることが重要です」。
まずは心が傷つき、辛い状況にある子どもたちに、休める環境をつくり、いつも以上に声をかけ、会話するようにしてください。そこから問題解決の糸口が見えてくることもあります。
また、子どもの具合の悪さは、親の精神状態にも影響が及びます。家庭内だけで抱え込まず、ときには学校と連携したり、専門家の力を借りたりすることが大切です。
がんばらせるべきか、見守るべきかは
子どもの特性を考えて慎重に
もしかして特性があるのかも?
次に思い当ることがあれば専門家に相談してみましょう。
□ 友だちから孤立しているようだ
□ 友だちとよくトラブルになる
□ みんなと遊ぶことより 1人でいることを好む
□ こだわりが強い
□ 片付けができない
□ 宿題に集中できない
□ 興味のあることには夢中になるが
興味のないことはやらなくては いけないことでもやらない
子どもの「気になる」行動は、それだけで発達障害が疑われるものではありません。 ただ、複数の「気になる」ことや困りごとがあるとき、あるいは成長とともに困り感が増してくるようなことがあれば、早めに誰かに相談し、専門機関を受診してみまし[…]