子どもの発達の悩みにどうむき合うか?<武蔵小杉小児科・てんかんクリニック(武蔵小杉駅)>

まわりの子と比べて発達が遅い、気になる行動や困った行動がある、情緒的・精神的に不安定……、子育て中の悩みはつきません。
私たちはこうした子どもの発達の悩みにどう向き合ったらいいのでしょう?
武蔵小杉小児科・てんかんクリニック院長、日暮憲道先生にお話を伺いました。

お話


武蔵小杉小児科・てんかんクリニック院長
日暮憲道先生

子どもを取り巻く背景は一人一人違います

武蔵小杉小児科・てんかんクリニック

子育て中は他の子と自分の子を比べ、つい、「うちの子ちょっとおかしいんじゃない?」などと思ってしまったりするものです。
でも、たいていの場合、わが子の気になるところがどのような背景から生じているのか、また、比べている子をとりまく背景の細かいところまでを見通して判断しているわけではありません。

ですから、なんとなく、お子さんの不安なところを見て、「まわりの子はできているのにうちの子はできていないじゃない?」と思ってしまうのです。実際、同じようにできてない子もたくさんいると思うのですが。

子どもの行動はその子を取り巻くさまざまなことが絡み合って生じます

例えば「お母さんと離れるのを非常に嫌がる」状況も、離れるのがなぜ嫌なのか、という理由は一人一人異なり、お子さんの発達の段階や特性はもちろん、家族構成や今置かれている環境など、その背景が複雑に絡み合っています。

ですから、単純に「分離不安」という言葉で片付けられるものではありません。シンプルに、まだまだお母さんとの愛情を求めているだけかもしれませんし、逆に、お母さんとは離れられるけど、幼稚園のような集団の中に入るのが怖い、という子もいます。

このように、子どもの行動は、その子を取り巻くさまざまなことが複雑に絡み合っているため、十把一絡げに判断することはできません。
ましてやその対策は、それこそ、その家庭の考え方によっても違ってくるため、一様にはいきません。
ネットやSNSなどの情報は参考になるものもありますが、わが子にあてて発信されたものではないことや、PV数を稼ぐことを目的に、より面白く衝撃的にインパクトを求める内容や不安をあおる内容も多く、信頼性の乏しい情報も多数存在していることを頭に入れておく必要があります。

その子にとってのいいことや
正しいことを考えよう

もしその子が、少し発達に問題のあるお子さんだった場合も同じです。
その状況を比較して問題視するより、身体的に問題がないのであれば、その子にとって何が一番幸せかを考えることの方が重要なのではないでしょうか。仮にあとから発達の遅れなどの問題があるとわかったとしても、その子が元気に楽しく育っていく権利があることは変わりません。“その子にとって”いいことや正しいことを親御さんが一緒に考えていくことが大事になります。

よく言われている「発達障害」、いまは広く「神経発達症」と呼ばれていますが、これは疾患名や診断名にもなるものです。
しかし、放っておいたからといって命に関わるものではなく、健康で元気に毎日を過ごすことができます。
少しこだわりが強かったり、落ち着きがなかったり、といった発達の特性がありますが、こうした特性がもたらすさまざまな問題は、環境との相互作用の中で起こってきます。

この子にとって
何が一番ハッピーなのかを考えてみよう


その子を取り巻く環境との相互作用の中で、それが問題になることもあれば、問題にならないこともある、ということです。

現代は、義務教育の下で強制的に集団に適応していかなければいけないことが数多くありますが、そういうとき、その集団の中で無理をしてでも頑張らせるにはどうしたらいいかと頭を悩ませることではなく、その子が安心していられる居場所が十分に確保できているかどうか、を見極めることです。

発達段階は工夫してのりきろう


発達段階ではどうしても解決が難しいものもありますが、工夫することでうまくのりきれるものもあります。
大切なのは100%を目指さないこと。どうしても難しければ「そういう環境にしない」ことも一つの方法です。

お友だちとものの取り合いになってしまったとき、なかなか渡せない

簡単な選択肢を出したり少し見通しを立ててあげることも大切です。
「じゃあ、○○くんがここまでやったら貸してあげようか」「これが終わったら次はこっちのおもちゃもやってみよう!」などと、その子ができそうな流れを提案してみましょう。

集団指示が聞けない

集団指示に入る前や後にもう1回その子の前で指示を伝える機会をつくってみるとうまくいくこともあります。

コンビニの前を通るといつもお菓子を買ってほしいとかんしゃくをおこす

「○○をがんばったときは買おうね」など、買える条件を提案してみる。
究極はコンビニの前は通らない。

こうあるべき”という
先入観をなくして子どもと向き合う

子どもを辛くしているものの一つに先入観があります。

友だちとはいつも仲良くしなくてはいけません。
食べ物は好き嫌いを言ってはいけません。
みんなの前でしっかり意見を言えなくてはいけません。
やりたくないと言ってはいけません。

―もちろん、そうできたら素晴らしいことですが、先入観で、これらは普通にできなくてはいけないことと思い込んでいることで、無意識に子どもに強要して、傷つけてしまっていることもあるのです。
「静かにできていい子ね」「ちゃんと勉強できて偉いわね」など、正しくできたことをほめることは大切ですが、そのような強要や抑圧の中でアンバランスになると、そのうち行動のモチベーションが興味や探究心ではなく、他人の顔色や評価となってしまうことで悩んでいる子もたくさんいます。

自分は怠けたらいけない、周りから期待されているのだから、嫌だなんて言っちゃいけないんだ、と思ってしまい、無理に頑張りすぎることで、徐々に心理的に辛くなってしまうこともあります。

一人で悩まず第三者も交えて問題を考える

子育ての問題は、「この行動が問題なのかどうか?」という疑問が出たところで、まずその子の特性に気づくことが大切です。
それを「無理してちゃんとやらなきゃいけない」「がまんしなさい」ということは解決にはなりません。

なぜそのような行動をしているのか、という背景を探り、その上で、次はどういうふうに調整していこうか、と考えます。
そのためにも、客観的に第三者の存在が必要だと思っています。
客観的な意見を入れることで安心感も生まれますし、解決に向けた方向性が定まってくると考えます。

大切なのはそこが子どもの安心できる居場所かどうか

地域の療育センターや児童精神科など専門の相談機関もありますが、そういうときの対応の仕方や考え方を一緒に考えていくことは小児科医の最も大切な役割の一つだと思っています。
病気の時だけでなく、子育てのパートナーとして、どんな小さなことでも、まずは小児科に相談しに来てもらえたらいいと思います。
子どもの健やかな成長・発達を支えていくパートナーとして少しでも役に立てたらと願っています。

▼相談先を利用するための方法を4つのステップで紹介しています。自治体の連絡先の一覧も掲載。

子育て相談

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