カテーテル治療でも入院不要!最新の技術で痛みを取り除く
――「モヤモヤ血管」があるかどうかの判断はどのようにして行われるのでしょうか?
初診では、患者さんがどのような症状を抱えていらっしゃるのか、時間をかけてじっくりとお話を聞き、どこが痛いのか、どんな痛みがあるのか、どんなときに痛みが出るのか、痛みの期間はどれくらいかなどを確認します。1~2ヶ月超えても痛みが消えないとか、長期間にわたって痛みが続いているような場合は、かなりの確率でモヤモヤ血管があると考えられます。
次に超音波検査を行い、モヤモヤ血管があるかどうかを調べます。0.01mmほどの細さですから直接モヤモヤ血管が見えるわけではありませんが、モヤモヤ血管があるとそこに血液を送ろうとする大きな血管も増えます。われわれが治療にあたるのは主にひざ関節や肩関節といった関節部分で、そもそもあまり血流の必要がないところなのです。正常なときにはない血管が増えていたら、そこにはモヤモヤ血管の存在が大いに疑われる、と判断できます。
――「モヤモヤ血管」が痛みの原因だと判明した場合、どのような治療を行うのですか?
治療方法は大きく分けて2つあります。1つは運動器カテーテル治療、もう1つはモヤモヤ血管を減らす注射による治療です。
どちらの方法を取るかは、重症度によって判断します。例えば、肩の痛みであれば、動く範囲、痛みの程度などを確かめて判断します。炎症がひどくほとんど動かないという方はモヤモヤ血管も多いということになります。
診断の結果、軽症であればまず注射をお勧めしています。注射は効果が局所的なので、重症の方にはカテーテルでの治療を行います。
治療に使用するカテーテルは0.6mmと細く、とてもやわらかなもので、血管を傷つける心配はありません。専用の透視装置を使って、カテーテルをモヤモヤ血管の近くの血管まで到達させ、薬剤を注入します。この薬はごく小さな粒子で、一時的にモヤモヤ血管につながるルートを「詰める」役割を果たします。これによりモヤモヤ血管に血が流れなくなって消滅する、という治療方法です。
カテーテルでの治療時間は、肩関節であれば平均30分ほどです。直接メスを入れないため傷口はごく小さく、10分ほど押さえたあと絆創膏を貼るだけで十分です。治療後は1時間ほどベッドで安静にしていただき、その日のうちに帰ることができます。
お仕事が忙しくまとまった休みを取れない方や、すぐ復帰したいとお考えのスポーツ選手でも、安心して治療を受けていただけます。
―― 治療後のアフターケアやセルフケアの指導なども万全、とおうかがいしました。どのようなことを行っているのかを教えてください。
カテーテル治療後は1ヶ月ごとに通院していただき、経過を見ます。神経の過敏さというのは人それぞれ程度が違うので、治療後すぐに痛みが軽減されたという患者さんもいれば、2週間後くらいから徐々に良くなっていく方もいらっしゃいます。だいたい3~4回通っていただければ、痛みがなくなって通院終了ということが多いです。
重症の場合はもう少し期間がかかったり、カテーテル治療後に注射を追加するケースもあります。
理学療法士によるアフターケア「コンディショニング」も行っています。痛みが出ている間は無意識に避けている動作があったり、逆に痛い部分をかばうため無理に使っている筋肉があったりするので、体の動きを正常に近づくよう整えます。われわれの治療は「局所ではなく全身で捉える」というのも特徴の一つ。日常生活を送る上での姿勢とか、日々無理なくできる運動方法など、一人一人に最適な治療アドバイスをするよう心がけています。
また、痛みには精神面や脳の機能も大きく影響しています。モヤモヤ血管が消えて炎症が治まったとしても、脳が良くなったと感じなければ、患者さんの訴えとしては、「まだ痛い」となるわけです。体のコンディショニングや患者さんとの対話を通して、痛みを感じる脳の機能を正常に整えていくことも大事だと考えています。