不安を取り除く診療で親子の健康を守る女性ドクター

宮前つばさクリニック(川崎市宮前区)

小児科を中心に幅広く診療を行う宮前つばさクリニック。広くゆったりした待合室にはベビーベッドが置かれ、キッズスペースにはたくさんの絵本や院長の幸田恭子先生が自ら選んだ珍しいおもちゃなど、子供たちが楽しく通えるような工夫がいっぱいです。「親御さんには病気のことだけでなく、日頃から気になることを何でも相談してほしい」という幸田先生に、クリニックのことや子育てのアドバイスについて伺いました。

親子を一緒に診療できるクリニック

――こちらは、どのようなクリニックなのでしょうか?

このクリニックの院長は私で3代目ですが、私が小児科医なので、子供を中心に診療をしています。ただ、お子さんが風邪をひくと、親御さんも必ずと言っていいほど風邪をひいてしまわれ、お子さんを優先するがあまり、ご自分の体調をすごく悪くしてしまう親御さんを多くお見かけします。ですが、大学病院の小児科勤務の頃はその方たちを診ることができませんでした。ここではお子さんも親御さんも一緒に治療をしてあげることで、みんなが早く病気を治すことができる環境にすることを考えています。

それに大学病院では、病気には向き合えていたのですが、病気が落ち着けば開業医さんに患者さんを戻しますから、子供たち自身には、あまり向き合うことができなかったんです。ここでは、熱を出しやすい子だったら何に気をつければ良いのか、咳をしやすい子であれば、風邪をひいたときの対処法を前もって考えておくなど、子供たち一人一人の性質がわかるので、それを利用した治療をしていきたいと思っています。

――どのような患者さんが多いのでしょうか?

以前の先生の時からの大人の患者さんもいらっしゃいますが、この辺りはマンションがたくさんあってファミリー層や若いご夫婦が多いので、私がここにきてからは基本的に、小さなお子さんがお母さんに連れられて来院されることが多いです。出産を機にこの近所に引っ越して来られ、最初に予防接種の相談に来院される方もいらっしゃいます。予防接種は今、かなり煩雑になっていて、自分たちでやらなくてはいけないことがすごく増えていますが、出産後間もなくその煩雑な説明を受けても全てを理解するのは困難です。どうすれば良いのかわからないというお母さんも多く、相談にいらっしゃる方も少なくありません。ネットなどの情報もありますし、私もブログを書いていますが、わからないことがあれば、何でも相談に来てほしいと思っています。

宮前つばさクリニック(川崎市宮前区)

――診療の際に気をつけていることはありますか?

まずは、なるべくお話を聞くようにしています。患者さんが心配をしていることにできるだけ応えたいと思っていて、そのためには、何を心配しているのか正確に聞いて、それを解消してあげる事を一番に考えています。例えば、熱があって心配ですと来たときに、熱が続いていることを心配しているのか、それともほかの病気が隠れているから熱が続いているのではないかと心配しているのとでは、話が変わって来ると思うんです。なので、何に心配しているかを把握して、それに対してしっかりとお返事ができるようにと心がけています。

それに焦っていて、自分が何を心配しているのかわからなくなっていたり、言葉がうまくまとまらなくなっていたりする方もいらっしゃいます。そういうときは、話しているうちに落ち着いてきて、自分の中で考えがまとまることもありますから、お話を聞くことは大切だと思っています。

あとは、この先に想定できることを先に話しておいてあげることです。子供が急に熱を出すのはよくあることですけど、「診察をしたらこのことが気になるので、もしかしたらこの先に、こんな症状が出るかもしれませんので、こういうところをよく見ておいて、もしこんなことがあったらまた来てください」と伝えておけば、余計な心配をせずに、冷静に対処できるようになります。

――そこまで話してもらえば、親御さんも安心しますね。

私は患者さんや親御さんによく「こんなことを聞いても良いのでしょうか?」とか「こんなことで来てすみません」と言われるのですが、むしろ来ていただけてすごくうれしいんです。ここのようなクリニックは、そういう人が来られる場所でなくてはいけないと思っていますから。大学病院などは目的を持って、必要性があっていくところですけど、クリニックというのは気軽に来てもらって、例えば大学病院に行かなくても大丈夫ですよとか、心配を取ってあげる場所ですから、ここに来て何かしらの心配が取れたのなら、私としてはまったく困りませんし、むしろありがたいなと思っています。

――子供の健康のためのアドバイスはありますか?

最近の傾向として共働きの方が多くて、お子さんは保育園に行っているので、親子で一緒にいられる時間が少ないと思うんです。そんな中でできるだけ、お休みの日などにスキンシップというか、親子で仲良くできる時間を持ってほしいなと思います。皆さんお忙しいですから、週末は親御さんも疲れていてゆっくりしたいかもしれません。一緒にいることができるのは、お子さんが風邪をひいて親御さんが仕事を休んだときになってしまうということも少なくないかと思います。でも、やっぱり親子のコミュニケーションや意思疎通はとても大切なことで、もちろん子供の成長にも関係してきますし、子供も大きくなっていくとだんだん離れて行ってしまいますから、一緒にいられるうちに、愛情をたくさん注いであげてほしいと思います。


宮前つばさクリニック(川崎市宮前区)

悩む前に気軽に相談を

――こちらのクリニックの院長になられてから6年とのことですが、何か思うことなどはありますでしょうか?

スタッフに本当に恵まれていると思っています。みんな本当に良い人たちで、チームワークもバッチリです。私は、受付業務は受付スタッフに、看護業務は看護師に、すべてをお任せして、何かあったら話し合うということで風通しを良くすることを心がけていますが、皆ががんばってくれているので私が仕事をできていると実感しています。受付で優しく声をかけてくれるので、それがクリニックの話しやすい雰囲気につながっていると思いますし、子育て経験のある看護師たちが、患者さん親子のことをわかって、大変ですねって声をかけてくれます。それだけでも親御さんは、すごく安心すると思うんです。そういうことを親身になってしてくれる人たちで助かっています。

――先生は、なぜ医師を志したのでしょうか?

父が医師で、医師の子供って将来医師になりたいって言うと褒めてもらえるんです(笑)。それに小さな頃から、将来は医師になるんでしょって周りに言われますから、漠然とそうなるものだと思っていました。でも私は、医学部に入るのに2浪しているんです。2年も浪人すると、周りからもあなたは医師になれないのねって思われて、だんだんと傷ついてくるんですよ。それで、私は本当に何をしたいのかって考えたときに、「医師とか医療のことをまったく知らない。父は医師でしたけど勤務医でしたから、何をしているのかまったくわからない。何も知らないのに医師になりたいと思っていた」ということに気づいたんです。それで悩んだんですけど、私は人間にすごく興味があって、病気を治すことで人を助けることができればうれしいなと考えて、この1年は、とにかく必死にがんばろうって決めて勉強して、医学部に合格したんです。その1年が、私の人生のターニングポイントでした。

――最後にメッセージをお願いします。

先ほども話しましたけど、こんなことで行って良いのかと悩むよりも、とにかく来ていただければと思いますし、私でなくてもこの先生なら話しやすいとか、信用できるとか、お願いができるというところを作ってほしいと思います。この辺りには、クリニックがたくさんありますから、安心できるところを見つけて、もしそういうところがなければ、その選択肢として当クリニックもご利用ください。

先生の横顔

「雲井窯」の土鍋で米を炊くことが幸田先生のマイブーム。1 回に2 合炊ける土鍋だそうです。東日本大震災で節電をしている時期、鍋で米を炊いたところ、もっとおいしいご飯が食べたくなり、お母様愛用のこの土鍋を買ったそう。とても人気なので数カ月待つこともあるとか。10 分火にかけ10 分蒸らすだけでふっくら炊きあがる手軽さも嬉しいポイントだったそうです。


▲ 院長の幸田 恭子 先生 宮前つばさクリニック(川崎市宮前区)

帝京大学医学部卒業。帝京大学医学部附属溝口病院、東邦大学大森病院を経て、2011年宮前つばさクリニック院長に就任。日本小児科学会認定小児科専門医。

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