―――小児科医を志した理由を教えてください。
小学生のころに大きなけがをして世田谷区にある国立小児病院に入院し、何度も手術を受けた経験があるんです。
いまにして思えば私も痛いしつらかったけれど、両親もものすごく不安だったと思います。それが小児科の医師たちの昼夜を問わない懸命な治療によって和らいでいき、回復し、退院。私も両親も笑顔になりました。
そのとき、本当にすごい仕事だなって思ったんです。同時に、同じ病棟内には同年代でとても長く入院している子たちがいることを知りました。難病に苦しみ、外で遊ぶことも学校に行くこともできない子供たちと、それを懸命に支える小児科医とその両親。そんな姿を見て、私も役に立ちたいという一心で小児科医を志しました。
このエリアは、子育てはもちろん、仕事にも一生懸命なお母さんが多いですね。お母さんたちの一番の心配事はお子さんの健康と成長です。その不安に寄り添い、笑顔に変えるのが私の仕事。子供のために頑張るお母さんたちの助けになりたい。子供たちの健康と成長、そしてみんなの笑顔を支えたい。そんな思いで毎日診療にあたっています。
―――開院の際は、ハード面にもソフト面にもこだわったと伺いました。
ハード面でいうと、小児科ですからバリアフリーや空気清浄機、授乳室、子供用のトイレの設置はもちろんですが、院内感染予防には特に気を配っています。
病気を治しに来たのに、ここで感染しては元も子もないし、お母さんたちもそこにはとても敏感です。ですから、感染症の疑いのある場合は通常の入り口の隣に出入り口を設け、別室で待機していただいています。でもハード面よりもっと重要なのはスタッフの気配りです。話しやすくて相談しやすい雰囲気があれば、ちょっとしたことも話せて、「だったらこうしましょう」という個別の対応ができます。
また、近年は外国人の来院も増えてきました。日本語がほとんどわからず、頼れる人もあまりいないという状況はとても不安だと思います。その際はもちろん英語での診察をしますが、自宅で見るべきお子さんの症状や緊急時の見極め方や対応などが書かれた外国人向けの小冊子もお渡ししています。
―――2019年6月から、頭蓋変形外来を開設されたと伺いました。
人間の頭ってきれいな球形ではないですよね。ましてや乳幼児だとちょっと歪んでいることも少なくありません。
その原因はさまざまですが、ほとんどの場合は妊娠中や出生後の向き癖による外因性のもので問題ないのですが、まれに病的変形の場合があり、完治が難しい疾患です。
この治療のために、東京女子医大病院(以下女子医大)に通院し、横浜付近に在住の患者さんに協力できればという思いから開設したのが「頭蓋変形外来のフォロー外来」です。毎週日曜日の開設で完全予約制です。対象者はすでに女子医大・頭蓋変形外来に通院されている方のみとなりますが、これによって少しでも子供たちと親御さんのお役に立てればと思っています。
▲サウスウッドこどもクリニック:神奈川県横浜市都筑区
―――お母様方へのメッセージをお願いします
お母さんたちに特に考えていただきたいのは、いまのお子さんの症状に必要な治療は何か?ということです。
症状によっては、長く通院し薬を飲まなくてはいけないこともあります。心配のあまり、一見症状が治まったように見えたときに「治った」と自己判断して、通院や薬の服用をやめてしまうケースが結構あるのです。
また、長く薬を服用することで「副作用は?」「成長に影響があるのでは?」のような不安を感じて、服用回数を勝手に減らす場合も少なくありません。が、特に喘息やアトピーなどの慢性疾患の場合は規定量の薬をきちんと使い続けることがとても重要で、それを怠ると、症状がぶり返すことも多いのです。
不安に思ったらすぐ相談に来てほしいですね。お子さんの健康とお母さんの笑顔を守るために、私はいつでもとことんお話します。
▲子供のことが大好きな栗屋先生。育児経験のある先輩ママスタッフが子育ての相談に乗ることも多いそう(サウスウッドこどもクリニック:神奈川県横浜市都筑区)
▲感染症の疑いがある方は専用の入り口を通り、隔離された待合室へ(サウスウッドこどもクリニック:神奈川県横浜市都筑区)
▲サウスウッドこどもクリニック院長 栗屋 敬之 先生
国立宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)を卒業後、順天堂大学小児科に入局。順天堂医院、順天堂浦安病院小児科、東京都立豊島病院小児科、東京都保健医療公社豊島病院小児科医長を経て、2016年にサウスウッドこどもクリニックを開院。日本小児科学会認定小児科専門医。