自己免疫性肝炎 ~自覚症状が少ない自己免疫疾患に注意~

中・高年の女性の発症が多い指定難病 進行すると肝硬変や肝不全にも

女性患者は男性の6~7倍 40~60代の発症が多い

自己免疫性肝炎(AIH)は身を守るための免疫機能が異常をきたし、主に肝臓の細胞を攻撃することで発生する、自己免疫疾患の一種です。自覚症状がほぼないうちに肝炎から肝硬変や肝不全、がんになるなど、進行が速い場合があるので注意が必要です。

2016年の厚生労働省の疫学調査によると、推定患者数は約3万人で、女性患者が男性の6~7倍、40~60代での発症が多い指定難病です。厚生労働省が規定する重症度分類で中等症、または重症であると判断されると、医療費助成を受けられます。

原因や発症するメカニズムは不明ですが、自己免疫が関係していると考えられます。また、何らかの遺伝的な素因に、ストレス、紫外線、ウイルス感染(A型肝炎ウイルス・EBウイルス・サイトメガロウイルス・麻疹ウイルス)などの要因が合わさって発症するとも考えられています。

発見するには健康診断などでの血液検査が重要

健康診断の血液検査で発見されるケースが多いようです。

倦怠感や疲労感、食欲不振などの症状がみられることがありますが、無症状のケースも珍しくありません。肝炎が肝硬変にまで進行すると、足のむくみや腹水による腹部の張り、黄疸、吐血などの症状が現れることがあります。

自己免疫性肝炎かどうか調べるには、血液検査が行われます。また、脂肪肝などと区別するために腹部エコー検査も必要です。どちらの検査でもはっきりしない場合は、肝臓の組織の一部を採取する肝生検という検査を行います。

それでも特徴的な結果が出なければ、副腎皮質ステロイドを投与してみて、その反応から診断することもあります。

発症したら長期間の治療が必要

治療は副腎皮質ステロイドの服用が主です。服用をやめると肝機能数値が悪化するので、基本的に一生、治療が必要です。副作用には感染症への抵抗力低下、骨粗しょう症、食欲増進による肥満や糖尿病、脂質異常症などがあります。

カロリーの高い食事や食べすぎに注意し、息切れしない程度の運動を心掛けましょう。シェーグレン症候群や関節リウマチ、慢性の甲状腺炎などの合併症、肝細胞がんを発症する可能性もあります。妊娠・出産時や歯科治療が必要な場合は、主治医の先生に相談が必要です。

薬の量が減ったら普通に日常生活を送れますし、仕事や旅行なども問題ありません。

自己免疫性肝炎の検査内容

  1. 血液検査
  2. 腹部エコー検査
  3. 肝生検
  4. 副腎皮質ステロイドの投与

監修

林医院
院長 林 毅先生


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