産婦人科医としての経験、プラスαの幅広い知識
——医師を目指したきっかけは、お父様への尊敬の念だったそうですね
父も産婦人科医で、私は子どものころからクリニックで診察している父の背中を見て育ちました。自然分娩を大切にしてきましたから、急に産気づいたり様態が急変したりというのは珍しいことではありません。優しい父は、なるべく家族のイベントに参加しようとしてくれていましたが、急遽中止ということもありましたが、残念とか不満という気持ちより「命を守る医師という仕事はそういうものだ」という感覚で育ちました。そんな父に憧れ、この道を選んだのは自然なことだったと思います。
医師になった後は、あとでお話しするように、本当にさまざまな経験をしました。そして、この「つづきレディスクリニック」の前院長で、大学の大先輩でもある佐藤宏樹先生から「ここを引き継いでほしい」と声をかけていただき、2019年に院長に就任しました。
——産婦人科全般、女性特有のがんの研究・臨床に大きく貢献していらっしゃいます
聖マリアンナ医科大学卒業後は、初期研修センターでの産婦人科に加え、救命救急や内科、外科、小児科など、さまざまな臨床経験をしたので、広い視野と知識で患者さんを診ることができるようになったと思います。その後、カナダのブリティッシュコロンビア大学へ留学し、婦人科疾患に対する医療や女性医学の研究と臨床に携わった経験も大きいですね。帰国後は、婦人科腫瘍専門医として大学病院で勤務する傍ら、厚労省の若年がんの研究チームに所属しました。
——月経困難症の治療に用いる低用量ピルについて教えてください
ひどい生理痛に悩まされている患者さんはとても多く、学校や会社に行けない10代20代のかたもかなりいるのです。でも、ほとんどが市販薬を飲んで耐えているのが実態です。そこで私が勧めているのが、低用量ピルです。
ピルというと、避妊薬としてのイメージや、副作用が心配などの先入観から使用をためらう人も少なくありませんが、それは誤解です。毎月の憂鬱な生理痛を解消する優れた薬なのです。日本では15歳以上の方が飲むことが多いのですが、WHOでは12歳からの服用が認められるほど安全性が高いものです。安心して、相談に来てください。
そのほか当院は、更年期障害治療や妊婦検診、婦人科・がん検診、ワクチン接種など幅広く対応しています。婦人科の治療法は、一人ひとりの生き方の違いや年齢、その時々の生活の状況などによって変わるものです。丁寧に、ゆっくり、わかりやすい説明を時間をかけて行い、納得していただいてから治療することを心がけています。
診療前後の看護師によるカウンセリング、婦人科診察への敷居を下げるオンライン診療など、安心の環境づくり
——婦人科検診や出産対応について教えてください
婦人科検診は全般的に、出産は妊婦健診のみに対応しています。当院には看護師9名が在籍していますが、そのうちの3~4名が常駐しており、医師の診察の前後に、看護師による問診を兼ねたカウンセリングの時間があります。不調や検診、日々不安に思うことなど、何でも話せると好評です。
妊婦健診にいらしたプレママにも、看護師の問診・カウンセリングの時間があるので、医療従事者として、そして先輩ママとしての意見や経験談も聞けて精神的にも安定するとのうれしいお声もたくさんいただいています。
このように妊婦時期を安心して過ごした後、出産はスタッフ・設備の整った近隣の病院をご紹介することもできます。もちろん、里帰り出産の方もたくさんいらっしゃいます。当院で妊婦検診を受けているかたが万が一緊急措置が必要になった場合は昼夜問わず診察を受けられるよう、昭和大学横浜市北部病院・昭和大学藤が丘病院・新横浜母と子の病院とオープンシステムも取り入れています。
——オンライン診療はコロナ禍以前から取り入れていると伺いました
婦人科への受診にハードルの高さを感じる女性は少なくありませんから、2019年からオンライン診療を開始しました。コロナ禍では少しでも患者さんの心の支えになればという思いで、不調の相談や処方箋の発行も行っています。オンラインで受診される患者さんが増えると、来院する患者さんが減りますので、対面での診察を必要とする方が来る際の安心感にもつながります。院内でも換気、消毒を徹底し、安心して通えるクリニックづくりに努めています。
——今後の展望についてお聞かせください。
とにかく、女性のさまざまな悩みを改善できるクリニックづくりが目標です。たとえば、歯科の先生をお招きして妊婦さんを対象に歯科検診を行ったり、美容師さんと連携して在宅医療を受けている患者さんの髪を切ったり、足のむくみをとるための訪問マッサージを行ったり。医療以外との連携も大切にして患者さんのために新しいことをどんどんやっていきたいですね。
もうひとつ、本来であれば2020年の東京五輪で協力ドクターとして参加する予定でした。狭き門を通過したのですが残念ながら延期にともない白紙に。語学力と経験を生かして、もう一度選考に通過することも直近の目標の一つです。