痛くない滲出性中耳炎に注意
お子さんを耳鼻科に連れて行こうと思うときはどんなときでしょう?「急に耳を痛がったとき」と考える方は多いと思います。1~5歳くらいのお子さんが急に耳を痛がった場合、多くは「急性中耳炎」です。このような場合はまずは痛み止めを飲み、その日か翌日の日中に耳鼻科を受診してください。
ですが、中耳炎は痛みが必ずあるかというと、答えは「NO!」です。お子さんの中耳炎は急性中耳炎よりむしろ、「滲出性(しんしゅつせい)中耳炎」のほうが多いのです。
滲出性中耳炎のときには、鼓膜の奥にある中耳という空洞に痛みも強い炎症もなく液体が溜まります。自覚症状が乏しく、1~5歳くらいに多い病気です。親は気がつかないことが多いです。片耳だけの滲出性中耳炎であれば、反対側は正常聴力ですのでなおさらです。しかし、滲出性中耳炎の一部は数カ月や年単位で続いてしまい、難聴や慢性中耳炎などの後遺症になってしまうので何としても見つけたい病気でもあります。
では、どうすればよいかですが、「お子さんの鼻水が数日以上続いたら、耳鼻科!」というのが私の答えです。
中耳というのは、鼓膜の奥にある空洞です。音を伝える骨があり、ふだんは空気が入っていて液体はあまりない場所です。耳管(じかん)という管で中耳と上咽頭(鼻の奥とのどの間くらいの場所)はつながっていて、空気のやり取りをしています。しかし鼻かぜなどの状態になると、耳管の通りが悪くなり、中耳に液体が溜まってしまいます。痛みがなく、長期間液体が溜まり続けてしまうと滲出性中耳炎となります。
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滲出性中耳炎の診断は意外と難しいです。小児の耳は大人よりかなり狭く、耳垢が溜まりやすく、多くの場合は耳垢をとらないと鼓膜が見えません。しかし動いたり怖がったりする子も多く、小児の耳そうじは簡単とは言えません。
耳垢を取ったとしても、小児の鼓膜は小さく、滲出性中耳炎は鼓膜が赤くはならないので見逃しやすいです。拡大耳鏡という簡易の道具だけでの観察では不安です。内視鏡(カメラ)や顕微鏡で鼓膜をモニターに拡大して耳の診察を受けると安心です。いずれも耳鼻科でないとできない診療です。
なので「子供の鼻水が続いたら耳鼻科!」と考えることをおすすめします。耳そうじ、鼻水の吸引、中耳炎のチェックを受けた上で風邪薬などの処方も受けられます。
気軽に繰り返し耳鼻科に通っていただければ、お子さんも通院に慣れてくるものです。
お話
宮前平トレイン耳鼻咽喉科
院長 伊東 祐永 先生