自分に合った治療薬の使用がカギです。
潜在患者数は増加。
コロナ禍では社会生活のしにくさも
ぜんそくの患者さんは年々増えており、現在の日本の潜在患者数は1千万人以上とも言われています。治療法の進歩もあって死亡率は減少傾向ですが、それでも年間で千人以上が亡くなっています。
治療中にもかかわらず、半数程度の方は何らかの症状が持続していて、生活に影響を及ぼしているのが現状です。特に昨今ではCOVID-19の出現により、咳の症状があると、社会生活がしにくくなっています。
症状の緩和に期待!
トリプル吸入薬と生物学的製剤
トリプル吸入薬は、ステロイド吸入薬をベースにして、長時間作用型β2刺激薬と長時間作用型抗コリン薬の2種類の気管支拡張薬を配合した治療薬です。今までは前者2種類の合剤が主でしたが、トリプル吸入薬によって、より効果のある吸入治療が出来るようになりました。
生物学的製剤は注射薬で、吸入や内服治療を行っても、改善が乏しい場合の選択肢の一つです。特に長期間のステロイド内服治療は全身性の副作用が懸念されます。
喘息の病態には、IgE、好酸球が主体になって働きますが、それらの活性を抑えるように開発されたのが生物学的製剤で、現在、4種類の製剤が使用可能です。生物学的製剤によって、悪化の抑制、症状の改善が期待でき、ステロイドの内服をしている場合はその減量、中止が可能となります。
この4種類の治療薬はそれぞれ喘息病態のどの部分を抑制するのか、役割が異なります。喘息の病態は一様ではなく、IgEの要素が強いタイプ、好酸球が多いタイプ、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎などの併存疾患の存在など多種多様です。呼吸器専門医、アレルギー専門医が病態を評価し、各々に合った治療法の選択をする必要があるのです。
多くの恩恵がある生物学的製剤ですが、薬剤費が高額であるのが欠点です。しかし年収や年齢によっては高額療養費制度が活用できますし、付加給付制度、医療費控除による所得税抑制などの助成制度を利用して負担額を減少できる場合もあります。
喘息で症状が残存している方、今の治療で落ち着いていない方は、専門医に相談してみましょう。
寄稿
コスギコモンズクリニック
院長 髙木 誠先生