死亡原因として重要であるのはもちろん
流産・早産や不妊の原因になる重大な病気です。
ヒトパピローマウイルス(HPV)と
子宮頸がんの関係
2018年の人口動態統計によると、子宮頸がんで亡くなった人は2871人、一生のうちで子宮頸がんと診断される人は73人に一人と推定されています。
子宮頸がんの95%以上はヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因で、性交渉によって感染します。したがって、性交渉をもつ年齢に達する前のHPVワクチン接種完了が最も予防に有効です。しかしHPVには複数のタイプがあり、性交渉経験があっても子宮頸がんと関係の深いタイプのHPVには未感染という可能性があるので、成人でもワクチン接種を受ける意義はあります。
子宮頸がんと最も関連性が高い16型・18型の2種のウイルスに対する予防効果を有する2価ワクチンと、16・18・6・11型(6型と11型は尖圭コンジローマという良性のいぼの原因になるタイプ)を予防する4価ワクチンで、子宮頸がんの70%が予防できると考えられています。
最近、より多くの子宮頸がん関連HPVを予防できる9価のワクチンも販売が開始されました。9価ワクチンによって子宮頸がんの90%以上を予防できると考えられています。
国内外で証明されている
HPVワクチンの効果
オーストラリアや欧米では、HPV感染や、子宮頸がんの前がん病変(細胞・組織にがんの手前と考えられる異変がある状態)の減少が報告されています。世界で最もHPVワクチンの接種が進んでいるオーストラリアでは、2028年には子宮頸がんが撲滅できると試算されています。
日本国内でも、新潟県ではワクチン接種女性でHPV16型・18型の感染率が減少したとの報告があります。秋田県、宮城県、愛媛県の松山市でも、接種女性や接種世代において子宮頸がん検診での異常検出率が有意に低下したと報告されています。
接種後の女性に多様な症状が出現したとの報道を受けて2013年6月に厚労省が積極接種勧奨を中止した後から、日本におけるワクチン接種率は大幅に低下してしまいました。しかし厚労省研究班の大規模研究などによって「多様な症状」はHPVワクチンの副反応とは言えないと結論付けされていますし、症状への対処法についても研究が進んでいます。
世界保健機構(WHO)もHPVワクチンに安全性の問題はないとの見解です。厚労省は、ワクチン積極接種勧奨の必要性に関する見直しを2020年8月から始めています。
寄稿
優ウィメンズクリニック
院長 大井 理恵先生