コロナ禍を受けて、國學院大學の先生方により緊急展開された連載企画「すくすく子育てエッセイ(在宅編)」をお届けします。自宅でテレワークを続けながら子育てに奮闘しているパパママや、お友達とも自由に遊べず寂しい思いをしている子どもたちへの応援メッセージが込められたエッセイです。
あるお父さんからのお便りです。「来る日も来る日も自宅にいるので、ストレスが溜まってきています。感染も怖いので滅多に友達とも遊べないですし、本当に大丈夫かと思っています。母親との関係を見ているとお互いにストレスが溜まっているようです」。
新型コロナがパンデミック(世界爆発)を起こしています。4月7日、緊急事態宣言も発令されました。それに先んじて、3月2日からは、全国的に学校、幼稚園で休学・休園となりました。「緊急事態」がいつ終わるのかもわからず、親はもちろん、何よりも、子どもたちの焦燥感とイライラは募るばかりです。幼児や子どもの心身面の影響、保護者の精神的負担などが、社会問題化しています。
しかし、発想を逆転して、これを機に、親子関係を見直す良い機会ととらえてみてはどうでしょうか。「今だからできること」。それこそが、新型コロナウイルスに打ち勝つことになると考えます。
例えば、「ピーターパン症候群」という言葉があります。これは、精神的に大人にならない男性を指す言葉です。しかし、米国では違う意味でも使われます。子どもの気持ちが理解できない、子どもと遊べない大人の病理を指します。
アメリカ版ピーターパン症候群を映像化したディズニーの『フック』(1991年)という映画があります。これは、「永遠の少年」ピーターパンが家族を持った40歳の仕事人間という設定です。弁護士になった彼がある時、宿敵海賊フックに子どもたちを誘拐されネバーランドに向かいます。だが、家族を省みない猛烈な仕事人間となっていた彼には、仲間だったネバーランドの子どもたち(ロストボーイ)の言葉がわからず、目の前の料理も見えません。
しかし、子どもの心を取り戻す中で、彼らと遊べるようになり、海賊フックを倒してロンドンに帰って来ます。その時の彼は、我が子を心から受け止めるようになっていました。携帯電話を放り投げ、しっかり我が子を抱きしめます。でも、私たちの周りにも、ピーターパン症候群の親も居るのではないでしょうか。子どもと共に生活し、接する時間がある今こそ、自省してみる機会でしょう
「明日、地球が滅びようとも、私は今日、りんごの木を植える」。
これは、宗教改革者M.ルターの言葉とされています。たしかに、子育ては、どのような災害に遭遇しても、止めることはできない永遠に続く崇高な活動です。私たちが、この新型コロナウイルスという「終わりの見えない」困難に直面して、まずできること。それは、親としての通常の責務をきちんと果たすように努力し続けることではないでしょうか。
今こそ、家庭はもちろん、地域ぐるみ、学校ぐるみで、子育てをやり続けるように努力しなければなりません。この「ぐるみ力」こそが、子どもたちの「笑顔」を取り戻させる、あるいは、子どもを「笑顔」に変える力となることでしょう。