絵本の読み聞かせは、子どもの成長にとってさまざまな意味と効果があります。今回は「子育てと読書」をテーマに、おすすめの絵本を紹介します。
色っておもしろい! 『あおくんときいろちゃん』
絵本の中の特に「色」に注目した本です。登場人物に顔は描かれておらず、形と大きさ、そして色のみで感情が上手に表現されています。最後は2つの色が混ざりあって緑色に。想像力がかき立てられる名作です。
2、3才なら色や形の面白さを、4、5才ならストーリー展開を、それぞれ楽しむことができます。年齢や性格によって興味を持つところも変わるので、親御さんはいろいろな絵本の楽しみ方を知っていると、もっと絵本を活用できると思います。
耳をすまして楽しもう! 『ぽとんぽとんはなんのおと?』
聴覚を刺激するような本です。冬眠中の穴の中に聞こえてくる音を小熊が母熊に「なんの音?」とたずねます。親子のやりとりが可愛らしく、小熊と一緒に春を待つことを想像する楽しさがあります。
日頃、自然の音に耳を傾けることは忘れがちですが、身の回りの音に耳をすませてみると、これまで気付かなかった音が聞こえてきて、心が落ち着いたり季節を感じることができたりします。
感性を高めるのに、ピアノなどの音楽でなくても、まずは身の周りにある音から始めるのも良いでしょう。自分の中にある気持ち良い音をメロディーにのせてみるなど、音楽的な表現を楽しむ心を育むことから始めてみることも大切だと思います。
小学校ってどんなところ? 『1ねん1くみの1にち』
小学校に向けて意識のつながりに役立つ一冊です。特に初めて小学校に通うご家庭にとっては、親子で学校って楽しそうだなと思える絵本です。
絵本と言っても写真絵本で、賑やかで漫画のように楽しい本です。小学校のリアルな日常が撮られているので、一日の流れがよくわかります。
給食や運動会の練習の様子は親御さんも楽しめるのではないでしょうか。こういう本を読んでいると、実際に入学した時に行われる「学校探検」もスムーズに受け入れられ、楽しみにできると思います。
本を通して広がる世界と子どもの育ち 『カラーモンスター』
コロナ禍で人間関係が疎遠になり、ストレスが溜まってしまう時、どう自分の気持ちをコントロールしていくのか教えてくれるのが、この本です。
世界中で愛読されているこの本は、色と気持ちを結び付けて上手に表現しています。最初は複雑でぐちゃぐちゃな気持ち=色を一つずつひも解いて整理していきます。
うれしい気持ちはおひさまのようにかがやく黄色、悲しい気持ちは雨の水色、怒りは炎の赤、穏やかな気持ちは風にそよぐ緑になり、そして最後は人を大切に想うピンク。
いろんな気持ちがあっていい、うれしい時はうれしい自分を受けとめ、悲しい時は泣いたっていい。自分と向き合い、どんな気持ちも自分自身であると受け入れて自分を愛せることは、大切なことですね。
絵本は、言葉を育むためだけのツールではありません。子どもの成長の中で経験してほしい5つの領域「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」を、絵本を通してバラバラではなく総合的に育むことができます。楽しみながらいろいろな力を育むことができるのが本の魅力です。
人間開発学部准教授 吉永 安里
(2021年1月15日國學院大學 SUKU SUKU SCHOOL(FMヨコハマの番組『Lovely Day♡』11月放送)より転載。)