〜夏休み〜優しさ・思いやりづくりの方法

國學院大學人間開発学部の先生方による子育てエッセイをお届けします。幼児期から小学生までの子育てファミリーへの応援メッセージが込められたエッセイです。

「夏休みの体験活動で優しさ、思いやりづくりをしよう」

今の子どもたちに足りない「人間力」、それは優しさや他人への思いやりだと言われています。具体的には、同じ気持ちになることで「他」を理解する「共感的理解」の喪失です。

普段の学校生活においては今日、頭で学ぶ知識の習得が優先されがちです。時間的に余裕にある夏休みこそ、そのような不足した「優しさ・思いやり」の心を育む絶好の機会です。

夏休み期間に、①自然体験、②スポーツ、③ボランティア活動といった、優しさや他人への思いやりがなければできない活動を通して、ハートフルな心を育んであげてください。この心は、子育ての喫緊の課題とされている「生きる力」の育成の中でもとても大切で、勉強とも相互に関係しています。実は、優しさ、思いやりの心は、学習意欲のアップにもつながるのです。

その1 自然体験を通して

「子どもたちは、自然の中に入ると、どうして皆、優しい顔になるのでしょうか?」。これは、教師からの問いかけです。たしかに、不思議ですよね。では、その理屈は?

それは子どもたちが「自然にもっと触れ合いたい、もっと寄り添いたい」という気持ちを持つからなのです。山や川に入ると子どもたちは、誰かに教わらなくても五感(見る、聴く、触る、味わう、匂う)を使って自由に楽しみます。

自然と一体になって遊ぶことや自然を感じることは、勉強して頭で学ぶ「知識理解」でなく、対象に寄り添う体験活動で感じて得る「共感的理解」です。そこから生まれる自然への優しさや思いやり、これが自然体験の中にはあるのです。

その2 スポーツを通して

スポーツを通しても優しさを育むことができます。スポーツ界で広く名が知られている人には共通して、体力、精神力、忍耐力などだけでなく、思いやりや優しさが備わっています。

ジャイアンツ原監督のお父さんで東海大相模野球部元監督の原貢さんも、「強いチームとは、道具を大切にするチーム」と断言します。道具に優しく、思いやるチームは、仲間や監督の気持ちも思いやり、励まし合えるチームです。

真に強いチームとは相手を思いやる「共感的理解」という優しさが備わっている人たちによって構成されるチームということです。
昨年の全日本代表のラグビーチームの「ワンチーム」の精神も、これと同じですね。

その3 ボランティア活動を通して

日本では、無償というイメージが強いボランティア活動ですが、海外では自発的に誇りを持って行う仕事と捉えられています。学校活動の中でも積極的に取り入れてられていて、多くの学生が学びとして行っています。

ボランティア活動には、真の心の優しさを発見するきっかけとなるものが多く、これまで知らなかった世界に触れることで、時に人生の進路を変えることもあります。障がい者施設や老人養護施設での活動で、実際に体験することによって初めて、頭で理解する「知識理解」としての同情ではなく、「共感的理解」として寄り添う心から、自分ができることは何か、「真に」相手の立場になって真剣に考えることができるのですね。

優しさや思いやりの心を育むためには、日頃から成果をきちんと賞賛してあげること(可視化)も大切。家庭でも感謝の言葉を添えて、細やかで簡単なことから実践してみてください。


國學院大學名誉教授 法人参与・法人特別参事 人間開発学部初代学部長
専門:教育社会学 新富康央
(2020年9月15日國學院大學 SUKU SUKU SCHOOL(FMヨコハマの番組『Lovely Day♡』8月放送)より転載。)

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