小学校入学前に身につけておきたい!やればできると思う気持ち “自己効力感”を育てる

沼田先生  ビタミンママ
あいさつや文字の読み書き、時間を守ることなど、幼稚園の間にできるようになってほしいと思うことはさまざまありますが、果たして、それらはすべて必要なのでしょうか。
そこで小学校入学を前に身につけておきたいチカラについて、“ぬまっち”の愛称で親しまれる東京学芸大学附属世田谷小学校の沼田晶弘先生にお話を伺いました。

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自己肯定感は素晴らしい
でも誤解していませんか?

子どもの自己肯定感を高めることに注目されています。どんな自分でも肯定できるという強い力で、確かに素晴らしいものだと思います。だけど、解釈が違ってきている気がします。失敗したらかわいそうだから、失敗させない、というように。

たとえば運動会。子どもたちは本番に向けて一生懸命、練習します。そして迎えた本番。子どもは全力を尽くしたのですが3位でした。でも、「あんなに練習して頑張ったけど3位でした。でも、ママの中では金メダルだよ」って発言。違いますよね。3位は銅メダルです。これ、自己肯定感を上げるためにこんなことを言うんです。

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自己効力感とは簡単に言うと、やればできると思う気持ちです。わかりやすい例で言うと、渋谷で終電に向かって走っている人は自己効力感が高いんです。なぜか。自分が走れば終電に間に合う、乗れると思っているから。間に合わないと思っている人はそもそも走りません。この「やればできる」と言う気持ちを小学校に入るまでに育ててほしいんです。

幼稚園・保育所までは毎日元気に通っていればそれだけで、「デキた」ことになる。でも小学校に入ると通っているだけではできないことがいっぱい出てくる。小学校で最初に、子どもたちがつまずくと言われているのが九九です。あれこそ、練習しないとできません。が、幼稚園感覚が抜けていないと、学校に通っているだけでできるようになると思っちゃう。
つまり幼稚園の間に練習を積んで、何かができるようになるという経験してほしい。

ぬまっち先生のクラスで
自己効力感を高めた方法

以前、ボクは1年生のクラスで足し算の81マス計算をしました。陰山さんがやっているアレです。目標時間が2分を切ること(これも陰山さんと同じです)。
なぜ2分なのか。それは、やれば切れる数字だから。2分を切らせたいのではなく、やれば2分を切れるという経験を積ませたいんです。

なんでも最初からできるわけじゃない、結果が出るまでやって、自分で成功したっていう体験。
これがあるからその子たちは2年生になって九九の81マスを1カ月で全員、2分切りました。

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余裕があるときの10分が将来の大きな投資になる

クラブハウスが流行ったとき、自己効力感が大切で、自分でできる気持ちと、最後まで責任をとることが大事って話をしていたんですね。そこであるお母さんからこんな話がありました。

子どもが皿洗いのお手伝いをしたい、と。そこでボクは「中途半端な終了体験ではなく成功体験を積ませたいから、親は手を出してはダメ」と伝えました。皿を洗っている最中に水がこぼれるからって手を出してしまうと、子どもは「なんとかやり切った」って経験をするだけで終わってしまう。

だからそこを予想して、絨毯やマットは外しておきましょう、と伝えました。で、やっぱり床はびちゃびちゃに。そのお母さんはグッとこらえて、「水がこぼれてるよ」って子どもに言いました。するとその子はありえないぐらいのキッチンペーパーを出して、お母さんはカーッとなったけれどそれでも我慢したそう。その夜のクラブハウスでボクは「よく我慢した、えらい!」って褒めました。

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するとお母さんは「子どもが明日もやってあげるっていうんですよ」って。ボクは絶対にいいことが起きるからやってもらいな、ってアドバイスしました。その日、その子はキッチンペーパーを先に敷いて洗い物を始めたそうです。しかも、そのキッチンペーパーは濡れなかった。つまり、洗い物を完遂し、こぼした水は拭かせたことでその子の中に「水をこぼしてはいけない」というマインドが入ったんです。

つまり、その経験からこの先、子どもに洗い物を任せられますよね。横で手を出していたら、ずっと出し続けなきゃならない。今日は手がかかるかもしれない、1週間は手がかかるかもしれない。でも、その先、完全に任せられるってことを考えたら、どうでしょうって話です。

忙しくて今日の10分が大事なことだってあります。そのときはそのときでいい。余裕があるときに、将来の投資をしてみてはいかがでしょうか。自分で失敗の後片付けまで全部やり切った。これが自己効力感につながり、他のこともここまでやろうとしますよ。

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お話を伺ったのは

東京学芸大学附属世田谷小学校 沼田晶弘先生

東京学芸大学教育学部を卒業後、インディアナ州立ポールステイト大学大学院に進み、インディアナ州マンシー市名誉市民賞を受賞。
スポーツ経営学の修士を終了後、同大学職員などを経て2006 年より国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭に。子どもの自主性、自立心を引き出す「ダンシング掃除」や「MC 型授業」「文珠11(イレブン)PLUS」など、ユニークな授業が話題に。

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