「遺伝的に運動神経が悪い」と決めつけていませんか? 運動神経は後天的に発達する部分が多く、幼少期の過ごし方次第で大きく発達すると言われています。
生活の中に運動遊びを取り入れるコツを日本女子体育大学体育学部子ども運動学科 森田陽子教授に伺いました。
すべては親の行動次第?!
運動神経は遺伝しない
「私の運動神経が悪いから、子どもも運動が苦手」。保護者の方からよく聞かれる言葉ですが、実は運動神経に遺伝的な要素は少ないと言われています。
私は常々、子どもの最初の体育の先生(「体を育む」という意味も含まれます)は「親」だと考えています。運動神経が発達する0〜12歳の間に積極的に運動経験を積んだ子どもには運動好きが多いと言われていることから、生まれてからの生活習慣で運動の得意・不得意が変わってくるということがわかります。
両親が運動好きで普段からよく体を動かしている、アウトドアの趣味がある場合など、子どもも自然と一緒に体を動かしているのです。
また、子どもは真似をするのが大好きです。パパ・ママが運動している姿を自然と真似るようになり、運動好きに育っていくことは十分に考えられます。
日常生活にひと工夫①
お手伝いは運動遊びの一環!
日常生活に運動を取り入れることを大げさにとらえる必要はありません。実は、家事全般は子どもにとってとても良い全身運動になります。例えば「雑巾掛け」は「高ばい」の動きで、腕力・腹筋・背筋とさまざまな部位が鍛えられます。就学後は、跳び箱やマット運動などで取り入れられている動きです。ひと工夫するなら、首を上げて前を向くとさらに筋力アップにつながります。洗濯物を取り入れて畳んでもらうことは指先などの巧緻性を高めます。
パパ・ママのマッサージをお願いするのもおすすめ。上に乗って腰やふきらはぎを踏んでもらうことで、子どもにとってはバランス感覚が養われます。お手伝いのいいところは、運動につながるだけでなく親から「ありがとう」と感謝されたり、「上手だね」と褒められたりすることで自己肯定感が上がる点です。お手伝いはとても優秀な運動遊びであると共に親子のコミュニケーションにもつながります。
日常生活にひと工夫②
チョコチョコ歩きで1日の歩数を稼ごう
日に平均12000歩ほど、歩いていた昭和の子どもに比べ、現代の子どもたちは多くて6000歩、少ないと4000歩ほどしか歩いていないと言われています。子育て中のパパ・ママから「うちの子は昼寝が短い」「夜、なかなか寝てくれない」という相談を受けますが、動く量が足りていないから、単純に疲れていないことも大きな要因だと感じます。将来的にも運動に興味がもてない、健康を維持する体力が保てないなどの弊害も生まれかねません。
歩くことは運動の基本ですから、まずは日常の中で少しでも歩く時間を増やしてみましょう。駐車場を利用する場合は入り口から離れた場所に停めてみる、エレベーターではなく階段を使ってみるなど、日に少しずつ歩数を増やせるよう工夫してみてください。そんなに歩けない、と思い込んでいませんか? 実は子どもは1歳で1km、2歳で2kmと、年齢分の距離を歩くことができるとも言われています。時間に余裕があるときはベビーカーを使わず、一緒に散歩を楽しんでみましょう。
お話を伺ったのは
日本女子体育大学体育学部子ども運動学科 森田陽子教授
日本幼児体育学会理事。専門は幼児体育。乳幼児の運動遊びと発育の研究を軸に、保育の現場で有用な運動遊びの監修にも従事。NHK Eテレ「いないいないばぁっ!」の体操「ピカピカブ~!」の監修も務める。