うちの子は勉強ができない、やる気がない、と辟易しているママ、パパも少なくないでしょう。でも実はそれ、発達障害かもしれません。まずは正しく理解することから始めましょう。
発達障害とグレーゾーン
「発達障害」とは、LD(学習障害)、ADHD(注意欠如・多動性障害)、ASD(自閉スペクトラム症)の総称です。生まれたときから脳機能の発達にかたよりがあり、学習面や行動面、コミュニケーション面での困難を示します。
小児科や児童精神科、小児神経科などの医療機関を受診しますが、発達障害は診断が難しく、確定診断されないこともしばしば。確定診断は出なかったけれど、定型発達とも言われなかった。しかし、先述したような困難が見受けられる。このような場合をグレーゾーンと称します。
注意したい点 その1
宿題ができない。
小学校低学年のころ、漢字や計算などのドリルが宿題として出されます。低学年ですから、量はそんなに多いものではありません。
でも、それができない。理由としては気が散る、座っていられない(多動)などが考えられ、親御さんとトラブルになることも珍しくない。そんなお子さんは注意が必要です。
注意したい点 その2
ワーキングメモリーが弱い。
例えば算数で、低学年のうちはワンステップの問題が多いと思います。例を挙げると「花壇に花が○本あります。×本もっていくと残りは何本でしょう」というものですが、これが2ステップになると頭の中で整理できなくなる。低学年のうちは、なかなか気づかないところです。
もしお子さんに得意不得意のばらつきが大きくあり、知的障害ではないが定型発達でもない場合は「発達凸凹(発達障害orグレーゾーン)」と理解し、対策を講じることが重要です。
まわりの子とわが子がどう違うのか。
わが子の発達について、気づくきっかけを与えてくれるのはお友達関係です。言葉を発し始めたら、まわりのこと比べてしゃべっている言葉が幼い、単語でしゃべっていて文章になっていない、「はい」「いいえ」は答えられるけれど「これは何?」と聞くと言葉に詰まる、など。もしそういった傾向が見られるようなら、それもサインのひとつです。
このサインを見逃さないためにも小学校の参観日など行事には、できるだけ参加するようにしましょう。できるだけ参加するようにして、わが子と同い年の子と見比べる機会を増やすことが大切です。お仕事が忙しく、わが子の発達に気づかないままとならないよう気をつけてください。
このほか、落ち着きがなく集中力が続かない、提出物が出せない、友達とのコミュニケーションがうまくとれない、などの「困難」が見られるようでしたら、すぐに専門の機関にご相談ください。
その子に合わせた勉強法を。
うちの子は勉強が嫌いなのかも、と思うママ、パパも少なくないでしょう。もしかするとそれも、お子さんからのサインかもしれません。小学校低学年の勉強って、そこまで難しくないと思います。嫌いでも、できる子はできます。低学年の単元ごとのテストはだいたい、80点以上取れるような設計なんですね。でも、60点台だと「おかしいぞ」と思ってください。
では、どうすればいいのか。集中力がないとよく言いますが、そもそも、子どもの集中力はそんなに長くもつものではありません。もし、お子さんが勉強中に集中力が切れて、例えばそこにあるものを手にしてしまうとか、そういった姿勢が見えたらいったん、それを許容しましょう。会話中に、話が脱線する場合も同じです。ある程度、それに付き合ってから元に戻す。くれぐれも、強制的に引き戻すようなことはやめましょう。
ワーキングメモリーが弱いと、自分のなかで処理するのに時間がかかってしまいます。それを親から見ると、「やる気がない」「ダラダラしている」と見えるのかもしれません。
先にも言いましたが強制は絶対にNGです。例えば20問の計算ドリルの場合、4種類の問題が5問ずつあったとします。それに丸印などをつけて分けてから、「まずはこの5問をやってみよう」「次はこの5問ね」と、ゴールを先に明示してあげる。また、処理速度が遅いと20問を淡々とこなすというのが特性上向かないので、学校の先生と相談して4問を2回ずつでもいいですか、と合理的配慮をお願いするのもいいかもしれません。
面談をすると、親御さんが思っているほどやる気がないとは思えないケースは多々あります。正しい指示の仕方さえ理解しておけば、お子さんは「できた」を体験することができ、それが大きな自信につながるのは間違いありません。
また、できたことを認めるのも大事ですが、指示したことがちゃんとできた、そのプロセスをしっかり褒めてあげましょう。結果はすぐに出るものではありません。プロセスの積み重ねです。そういった意味でも、プロセスをしっかり褒めることが大切です。
学校に行きたくない原因も…
「不登校」と聞くと、いじめが原因? と思われる方も少なくないでしょう。でも実際、その理由がいじめというのは少なく、勉強がついていけない、まわりとのコミュニケーションがうまくいかない、といったところが多く、発達の凸凹が不登校に大きく影響している場合もあるのです。
例えば言語能力が低いとコミュニケーションがうまくいかない。知覚推理が低くて算数が苦手。こうしたストレスはわかりやすいのですが、ワーキングメモリーが低いと音の取捨選択が難しく、聞くべき大人のか雑音なのかの判別ができず、常にいろいろな音が入ってくる。それによって学校にいくと疲れるな、とか。また授業が終わって次の授業への切り替えが、処理速度が低いためになかなかできず負担になる。これらが積み重なって学校に行けなくなる、というケースも実際にあります。
この場合も決して無理に学校に行かせようとせず、まず何が起きているのかをお子さんから聞き出しましょう。そして必要に応じて教育相談に行ったり、検査を受けたり、といったところが大事になってきます。
客観的事実を受け止めることが大事。
うちの子に限って… という気持ちはとてもよくわかります。ですが、まわりのお子さんと比べてみる、テストの点数を受け止める、当たり前のことが当たり前にできないなど、低学年だからまだ大丈夫ではなく、客観的事実をしっかり受け止めてください。
小学校2年生で受けたテストが60点だったとき、「低学年だしまだ大丈夫」という根拠のない安心感をもたないことが大切です。少しでも不安に思うことがあれば、すぐにご相談ください。
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