桐蔭学園トランジションセンターでは、ビタミンママと共催で、本連載の直後に同タイトルのZoomセミナーを開催します。講師が直接講義をし、参加者の疑問に答えます。
- 日時 11/7(土)15:00-16:30
- テーマ「新型コロナの第三波に備えて家庭・子どもの取り組みを今一度チェック!」
- 講師 溝上慎一
終了いたしました。たくさんのご参加ありがとうございました。
4.備えチェック
コロナ禍に限りませんが、課せられること、すべきこと、学習習慣や生活のリズムを確立することは、子どもの成長にとっての基礎・基本です。また高校生までは、そのような子どもの学習や生活を支える家族の関わり方も重要になると思います。この機会にチェックしましょう。
基礎編
□(子ども)学校の宿題・課題に取り組んでいますか
□(子ども)テレビやゲーム、スマホ等ばかりをしていませんか
□(子ども)早寝早起き・規則正しい生活をしていますか
□(子ども)毎日朝食をとっていますか
□(子ども)「おはよう」「おやすみ」の挨拶をしますか
□(ご家庭)家庭は子どもが安心して過ごせる安全基地となっていますか
□(ご家族)子どもは学校で取り組みやふだんの関心を話してきますか
□(ご家庭)学校からタブレット等端末の購入、貸し出しはなされていますか
□(ご家族)Wi-Fiのネットワーク環境は整備されていますか
発展編
□(子ども)自宅での過ごし方に工夫はなされていますか
□(子ども、とくに中高生)目標を立てて過ごしていますか(今日すること、1週間の目標など)
□(子ども)学校からタブレット等端末を利用したICT利用の課題(宿題)は出ていますか(先進的な学校では、家庭でもオンライン学習に取り組んで ICT利用に慣れるために出されています)
□(ご家族)プリンターはありますか
5.(おまけ)自律的に学べる子どもの学術的な説明
学術的に言えば、自律的に学べる子どもは、2つの力学を兼ね備えた学びをしていると考えられます。
1つは、「教員から生徒へ」「知識は教員から伝達されるもの」を特徴とする「教授パラダイム(teaching paradigm)」と呼ばれる力学です。
子どもは教師から授けられる知識や資質能力(技能)を理解して身につけようとします。これは、子どもの学びを作っていくときの基礎・基本と呼ばれるものです。
大人になれば、社会人としてしなければならないこと、課せられることや義務がたくさん出てきます。「これはやりたくない」「好きではない」などと言うことはできません。
外部から与えられることにしっかり取り組めることは「(社会的)適応(adjustment)」と呼ばれ、人が他者や集団、コミュニティの中で生きていく社会的存在であるために必要な力です。学校で教授パラダイムに基づいて学ぶことは、適応の力を育てることにもなります。
もう1つは、「学習は生徒中心」「学習を生み出すこと」「知識は構成され、創造され、獲得されるもの」を特徴とする「学習パラダイム(learning paradigm)」と呼ばれる力学です。
自分なりに理解しようと努める。その過程で、「なるほど」「そういうことだったのか」といった気づきや発見、意味を得る。その気づきや発見などは、多くの場合教師が予定していなかった、教師の枠を越えるもので、子どもの個性的な理解・世界観を育てます。
▲図表 教授パラダイムと学習パラダイム
図表に示すように、学校教育では教授パラダイムの枠に基づいて、知識や資質能力を子どもに授けます。
すべての子どもがこの枠に到達することが求められます。他方で、グループワークや発表などのアクティブラーニングを通して、同じ課題に取り組んだ他の子供たちの異なる考えや理解を受けて、「なるほど」「自分はこう考えた」といった教授パラダイムの枠を越えた学習パラダイムに基づく学びを行います。
自律的に学ぶ子どもは、教授パラダイムの枠をしっかり踏まえつつ、それを越える学習パラダイムの学びを行います。どんな子どももまずは教授パラダイムに基づいた学習を行います。それが基本です。
しかし、それだけでは将来自分でものを考えられる大人になれないので、教授パラダイムを越える学習パラダイムの学びを行う必要があります。両パラダイムがバランスよく取られるとき、子どもは社会的に力のある自律した大人へと成長していくと考えられています。
【大丈夫!コロナ禍の教育】は、桐蔭学園とビタミンママのコラボ企画です
バックナンバーはこちらからVOL.3 オンライン学習を組み込んだウィズ/ポストコロナの学校教育
VOL.2 学校再開後の学習や生活に関する留意点
VOL.1 休校中のモチベーションダウンと学校再開後の対策
溝上慎一(Shinichi MIZOKAMI, Ph.D.)
学校法人桐蔭学園 理事長、桐蔭横浜大学 学長・教授、学校法人河合塾 教育研究開発本部 研究顧問
プロフィール
1970年生まれ。大阪府立茨木高校卒業。神戸大学教育学部卒業、1996年京都大学助手、2000年講師、2003年准教授、2014年教授を経て、2019年4月より現在に至る。京都大学博士(教育学)。
- 1
- 2