子育てに効果的!家庭でも生かせるコーチングの手法

■お話■
相模女子大学小学部校長
川原田康文先生

コーチングとはどんなものですか?日常の子育てにも役に立つのでしょうか。

コーチングは、コミュニケーションを使ったサポートシステムです。家庭内にコーチングを取り入れるとしたら、親がコーチの役割をして、子どもをサポートします。親は先回りせず、子どもの考えを引き出して自立を促すものですから、大いに役立つと思います。

子どもの自立を妨げる親の行動として2つのパターンがあります。ひとつめは「親自身が子離れできない=過保護パターン」。そしてもうひとつは、「アドバイスしているつもりで実は子どもの行動を決めているパターン」です。こうした親の行動によって、子どもは考える力、自立する能力が失われてしまう場合があります。

実際にはどんな例があるのでしょうか。

まず、「親自身が子離れできない=過保護パターン」についてお話します。
イギリスの科学者の論文にも「過保護は子どもの成長を止める」というものがありますが、大切なのは、距離を置いて見守りながら、いざという時だけ手を差し伸べることです。小学生になっても幼稚園のころと同じように世話を焼きすぎるのは過保護といえます。
たとえば、本校は私立ですから遠方からの通学もあり、1年生の間は親御さんが学校まで送ってくるケースがあります。それは問題ないのですが、親とずっと手をつないでいたり、親が教室まで送ってきたり。2年生になっても毎日昇降口まで送ってくるケースもあります。小さいときから何かあったら親がカバーするのが当たり前という感覚はなかなか拭い去れるものではないので、気持ちはわからなくはありません。

しかし、それが子どもの自立を妨げていることに気付き、せめて手をつなぐのはやめるとか、送るのは正門までにするなど、親も子離れするように心がけましょう。コーチングを家庭教育の中でも取り入れていくことで、親の成長と子どもの自立を目指しましょう。

「アドバイスしているつもりで実は子どもの行動を決めているパターン」という例も、ぜひ教えてください。

日常的にいろいろなシーンがありますので、いくつかご紹介します。

【例1】遊園地に行きたい。

明日は遊園地に行きたい!

子どもの発言に対して、

「あなたは絶叫マシーンが苦手だからAランドがいいんじゃない?」「暑いからプールのあるB遊園がいいかもね」

と、親はアドバイスしているつもりでも、実は子どもの行動はその言葉でほとんど決まってしまい、子どもは考えることをしません。

「遊園地ではなにがしたいの?」「暑いけど大丈夫かな?」

と、子どもに考えさせるような質問をすれば、

「あの乗り物に乗りたい」「じゃあ、プールがある遊園地のほうがいいかな」

という具合に、子どもが考え、それを引き出すことができます。逆に「お母さんはどこでもいいから、どこの遊園地がいいのか考えておいて」と突き放されても子どもは考えられません。

程よい距離間で、具体的な質問をされることで、子どもは深く考えるようになります。その積み重ねが、自分の気持ちや発想力を大切にしながら人に伝える、あるいは人の意見にも耳を傾け、多角的な視野に気付くなどの能力につながるのです。

同じようなシーンは、学習面でもあります。

【例2】テストが80点だった
親であるあなたはこの点数が不満です。そのときに「何で80点なの?」「勉強したの?」と一方的に叱るのはNG。では、どうするのか?いくつかの対応が考えられます。

対応1■未来志向に変えていく
「この点数をどう思っている?」と質問して、振り返りを促しましょう。「何が悪かったのか?」「どういう勉強をしたのか?」などのヒアリングをし、「次は何点をとりたい?」「じゃあどうすれば?」という未来志向に変えていきます。

対応2■よくがんばったとほめたうえで反省と改善を促す
ほめたうえで、「80点は自分にとって満足?」と聞いてみます。「85点だったらよかった」と子どもが答えれば向上心がある証拠。「じゃ、5点は何だった?」「ここの計算ミスだと思う」「計算練習をもっとやればよかった」「教科書をちゃんと見ておけば」など、自ら反省し、改善点を見出せるようなコミュニケーションが大切です。

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