子育てに効果的!家庭でも生かせるコーチングの手法

自立は、子どもの将来に大きな影響を与えるということですね?

そうです。私の教え子の例をいくつか紹介しますが、みな小学生のころから、自分の意思を持ち、その後も興味のあることに向かって突き進んでいました。子どもにとって必要な自立とはそういうことだと思います。

(Aさん)小4からロボット制作に夢中になり、4年生、5年生と国際大会に出ていた女の子です。シンガポールの姉妹校の子と仲良くなってずっとメールでやりとりしていたことがきっかけで、シンガポール国立大学に進学したいと、6年生でターム留学へ。中高に進んでも、海外交流プログラムやサイエンスプログラムに参加していました。

彼女が高1になったときは「相変わらずシンガポール国立大学を目指して頑張っています」といっていましたが、先日、お母さんにお会いしたら「医学部に進むことにした」と。お母様いわく「親に何の相談もなく全部自分で決めて、すべて事後報告なんですよ。本当に困りました」といいながら、とても素敵な笑顔で話してくれました。少しは相談してほしいという親心もあるとは思いますが、自分で決めてやり遂げるように育てたお母様のコーチング力は素晴らしいと思います。

(Bくん)

小学校にボランティアに来てくれた大学生から、留学の話を聞き、「自分もそうなりたい」と思ったそうです。念願がかない、高校生で1年間の語学留学へ。しかし、そこで出会った台湾や中国、韓国の子たちは2年間の留学でアメリカの大学の入学資格を取得し、卒業後はアメリカで起業するという夢を持っていたそうです。

Bくんは日本では成績もよく、将来はグローバルな世界で活躍したいと考えていましたが、井の中の蛙だったことに衝撃を受けたそうです。そこで、世界の大学への進学を視野にさまざまな情報を収集したところ、政府が学費や生活費などすべてを出してくれるフランスの奨学金制度があることを知り、すぐに志望書を書いたそうです。

「親に学費の負担をかけられないから日本の国公立しかないと思っていたが、それは自分への言い訳だった」というB君。自分の力で人生を切り開く方法もあることがわかってよかったと、笑顔で報告してくれました。自分がどうなりたいのかを見極め、その目標を達成するためにはどうすればいいのかを考え実行する。そういう力はこれからさらに必要になってくるでしょう。

■川原田先生からのメッセージ
あたりまえのことですが、コーチングをすることが目的ではなく、自ら考え、進む力を養うための手段の一つとしてコーチングという選択肢もあるというお話をしました。子育てには悩みがつきもの。程よい距離間で、考えを引き出しながら、自ら進む子を育てていきましょう。

川原田康文先生■相模女子大学小学部校長

≪profile≫
・神奈川県の中学校教諭、神奈川県教育委員会指導主事、横浜国立大学教育人間科学部准教授、立命館小学校教諭を経て、相模女子大小学部へ。副校長を経て、2020年、校長就任。
・ロボティクス教育研究の第一人者として、教材やテキスト作成、ロボットの競技大会に多く携わる。さらに、小・中学校向けに、Pepper(ソフトバンク)を活用したプログラミング授業の構築や、社会貢献プログラムの教師用指導書も監修・執筆。

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