13歳~16歳までの人生でもっとも多感な時期を、どこで、どのように過ごしたいか。
保護者として、子どもにどのような教育を受けさせたいか。
それは小学生の子どもをもつ多くのご家庭にとって重要な関心事です。
その選択肢のひとつとして、近年注目をあつめているのが中学受験。
青春時代をめいっぱい楽しく、有意義に過ごすために、中学受験がもたらすメリットについて考えてみましょう。
知りたい!中学受験
中高一貫校の3つのメリット
中学受験を経て入学する中高一貫校。
なかでも今回は、私立中高一貫校にスポットを当て、その環境や学習の様子、学校生活についてふれながら、実際の私立中高一貫校の取り組みを交え、そのメリットを探っていきます。
VUCA (先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態)と表現されるこれからの時代に、社会を担う世代となる今の子どもたち。
ICT技術の汎用可能性がますます広がり、環境問題をはじめとする社会課題が山積するこれからの時代、これまでとは違った能力が必要とされるといわれています。
従来の「知識重視」の教育から「思考力重視」の教育へと変革が行われている今だからこそ、私立中高一貫校で行われている多彩な取り 組みに注目が集まっているといえます。
また、個性重視、得意を伸ばすなど、学校や社会において個別の能力の発揮が求めらる昨今、一人一人の適性に合った環境選びは、子どもの能力を伸ばすうえでも、スクールライフを快適にするうえでも重要です。
子どもに合った学校選びの大切さも 中学受験が注目される理由のひとつといえそうです。
メリット1
6年間の一貫教育で多感な10代を
「じっくり」過ごすゆとりがある
中高の6年間を 有意義に過ごす13歳~18歳までの6年間は、人間形成において最も大きな成長を遂げる重要な時期です。
高校受験で中断されることなく部活動や行事などの「経験」を積み重ね、好きなことにじっくりと向き合うことができるのが中高一貫校の大きな魅力です。
中高の6年間を有意義に過ごす
中高一貫校では、6年間を有効に活用した教育が行われており、系統立てて取り組まれる教育プログラムやキャリア教育は、年齢に合った内容できめ細かに 実施されています。
6年間という十分な時間があ るため、さまざまなことにチャレンジできるのも中高一貫校の大きなメリットです。
十分に時間をかけられる環境だからこそ、部活動や委員会活動行事の実行委員など、生徒が主体となって責任感をもってじっくりと取り組む経験ができます。
たくさんの行事に加え、自由参加の教育プログラムを実施する例えば語学留学やボランティア、インターンシップなど、 「もっと何かにチャレンジしてみたい」と考える生徒学校に向けてのたくさんの選択肢が用意されています。
中1~高3が一緒に参加する縦割りでの取り組みを行っている学校が多く、部活動や行事、学習発表の場などを通して、低学年のうちは自分の数年後を想像し「自分もああなりたい」といった具体的な目標を持ちやすく、高学年にとっては後輩と接することで自律心や責任感が生まれるなど、両者に大きなメリットがあります。
高校受験対策に時間を割かずにすむ分、勉強以外の取組についても大いに力を注ぎ、青春を謳歌できる環境です。
メリット2
充実した教育環境がかなえる専門的な学びや安定した学校生活
私立中高一貫校の大きな特長のひとつに、環境・設備の充実が挙げられます。
各校が独自の建学の精神をもち、豊富な施設を生かして趣向を凝らした教育プログラムを実施する恵まれた教育環境は、子どもたちの充実した学校生活を支えます。
私立中高一貫校ならではの恵まれた環境
「教育環境」といってもその言葉の意味は広範囲で、明確な教育理念、大学に匹敵するような充実した教育施設、考え抜かれたオリジナルの教育プログラムやカリキュラムなど多岐にわたります。
行事や委員会活動など勉強以外の取組みにも、さまざまな意義や目的があります。
注目すべき点が多彩なことで、志望校選びの判断材料にもなります。
1. 教育理念が明確
私立中高一貫校の建学の精神や教育理念は、学校によってさまざまです。
老舗の名門校には語るべき沿革や受け継がれている開祖の思いなどがあり、新設校には新しいからこその斬新な取り組みがあるなど、その教育理念は学校のカラーや校風に色濃く反映されています。
また私立中高一貫校では教員の移動がほぼなく、生徒たちも含め、その学校を「選んで」在籍している人々が長い時間をかけて独自の校風やカラーを作り上げています。
キリスト教や仏教など宗教の精神を教育理念に掲げる学校では、礼拝や坐禅を取り入れたり、その宗教の教えを学ぶ授業があったりと、生徒の精神面での成長の糧として宗教を生かす取り組みを行っています。
また男子校、女子校というくくりも私立中高一貫校ならでは。
男女の成長の相違点を上手く生かした取り組みが豊富です。
教育理念は、その学校が目指す教育のあり方を知るための大きな指針です。
理念に沿ったさまざまなカリキュラムを作成し実施しているため、志望校決定の際の端緒として最適な判断材料といえます。
2. 教育施設の充実
教育施設の充実も私立中高一貫校の特長のひとつとして挙げられます。
理科実験室や実験器具などが充実し、理系進学に力を入れている学校。
ネイティブ講師が多く、グローバル教育に特化したエリアを学校内に設置するなど英語教育を重視している。
人工芝のグラウンドや広い体育館、室内温水プールなどスポーツ施設が充実しているかで、その学校の教育方針を垣間見ることもできます。
そのほか、ICT環境の充実も私立中高一貫校の注目すべき点、一人一台のタブレット端末所持、オンライン授業への対応、AIを使用した教材、電子黒板の使用などが早くから実施されてきました。
環境が整えられた自習室や校内塾など、自習習慣の定番をサポートする施設があるのも大きなメリットです。
3. 独自の教育プログラムが豊富
私立中高一貫校では充実した環境を生かし、さまざまな教育プログラムやカリキュラムを実施しています。
2020年の教育改革で新学習指導要項が導入され、2022年には高等学校での「総合的な探究の時間」が必修化されました。
しかし、私立中高一貫校のなかなには、このような取り組みがずっと以前から、生徒一人一人の興味関心をテーマにひとつのことを深く学び、自分で考え、人に伝える取組「探究学習」を行っている学校が多くあります。
生徒の興味の向くままにじっくり取り組む教科横断型学習や、キャリア教育を織り交ぜたもの、体験学習をともなうものなど、その取り組み方は多種多様です。
実際の学校をのぞき見!
鎌倉学園中学校・高等学校
モットーは文武両道!部活動や生徒会活動が盛ん
運動部はもちろん、文化部の活動も活発!
高校でも約7割の生徒が何らかのクラブ活動・同好会に所属しているなど部活動が盛んです。
公式野球部や剣道部、考古学部、鉄道研究同好会など、全国的に有名なクラブも多数。
生徒会活動などの自治が活発なことでも知られています。
立正大学附属 立正中学校・高等学校
都内では珍しい専用施設も!挑戦したい部活動に出会える
武道系の部活動が盛んな同校には、都内でも珍しい弓道部が。
また授業はもちろん、柔道部・空手部・剣道部が使用する武道場は400畳の広さを誇ります。
約5,300㎡の人工芝グラウンドをはじめ、室内プール、屋上テニスコート、ゴルフ場など運動施設が大充実。
玉川聖学院中等部・高等部
聖書の教えをもとに育む人としての生き方や思いやりの心
プロテスタントのミッションスクールの女子校として、聖書を通して自己と向き合い、社会の課題解決に向けて自分の使命を全うする強い心を育成。
学力はもちろん、それだけでは測れない人間力を、実体験をともなう多彩な行事で育みます。
高輪中学校・高等学校
「男子校」を生かした取り組みで心身ともにのびのび過ごす6年間
「見えるものの奥にある見えないものを見つめよう」を教育理念を掲げ、男子校らしいのびのびとした校風が魅力。
取り残さない教育で学習面のサポートも手厚く、クラブ活動とのバランスも〇、自然体験学習や農耕芸体験学習など心身の成長を促す行事も豊富。
青稜中学校・高等学校
自主習慣が自然と身に付く!放課後学習を支える「Sラボ」
生徒の学習支援や進捗確認を行う放課後学習支援システム「Sラボ」では、自習室に専任チューターが常駐。
気軽に質問できる環境で全体の7割もの生徒が利用しています。
解放時間も21時までと長いため、部活動後に参加する生徒も多いそう。
玉川学園 中等部・高等部
教育施設は圧巻の充実ぶり!最新機器がそろう恵まれた環境
理系分野、芸術分野、それぞれに専門校舎を有する同校では、最新機器を積極的に導入。
専門的な実験や研究にも対応できる機器やプラネタリウム、天文台をはじめ、3Dプリンターなどのデジタルツールも充実しており、生徒の豊な学びを支えます。
桐蔭学園中等教育学校
探究のサイクルを経て自ら考え解決する力を育む
「探究」を教育の柱とのひとつとする同校では、1~5年(中1~高)で探究学習「未来への扉」に取り組みます。
探究に必要なスキルを習得するとともに、実際に課題に取り組むことで、さらなる課題を発見し”探究するサイクル”を繰り返し、思考力を育みます。
湘南白百合学園中学・高等学校
高大連携が深める多彩な学び。キャリア教育の一貫にも
さまざまな
大学との連携による多彩な授業を積極的に実施し、質の高い学びを展開しています。例えば連携協定を締結した北里大学では教授の講演会をはじめ、医学部ツアーを実施。医療系への進学を考えるキャリア教育の一貫にもなりました。
メリット3
個別の進路指導やキャリア教育など 「将来」につながる取り組みが豊富
高校卒業後の進路は、子どもたちの将来に直結することが多く、中高生のキャリア教育は進学先や就職先を真剣に考える大きな助けになります。
また、日々の学習フォローの手厚さや、大学進学対策、上位校への進学率の高さは、私立中高一貫校の大きなメリットです。
中高の「その先」を照らす 私立中高一貫校の取り組み
大学進学のための手厚い対策はもちろんですが、それは日頃の学習フォローや基礎学力の定着があってこそ。そのための対策も万全なのが私立中高一貫校の魅力です。
1. 日々のフォローや大学受験対策が手厚い
私立中高一貫校の場合、必修科目の履修を5年間で完了し、高3の1年間は大学受験対策に当てる先取り教育を行っている学校が多くあります。
大学入試には、一般選抜をはじめ、指定校推薦や公募推薦を利用する学校推薦型選抜、高校時代の活動成果をもとに受験する総合型選抜があり、受験携帯や必要科目もさまざま。
多様化する大学受験に合わせた志望校別の対策に熱心な学校が多いのも特長です。
受験科目に合わせて選ぶ選択授業や、小論文、面接対策への個別対応など、生徒のニーズにあった受験対策を実施し、早い段階から大学受験を意識させるなど、「受験に前向きな雰囲気」が生まれやすいのも私立中高一貫校の大きなメリットといえそうです。
高校受験がなく、ひとつのことに長く熱中できる環境が総合型選抜に有利だという見方もあります。
また学習の理解度を測る小テストやレベル別講習といった日々の学習フォローの手厚さや、クラス編成が自由に行える私立の利点を生かし、生徒一人一人に目が行き届く小規模クラスの一子など、勉強に対するきめ細かな対応が進学率の高さにつながっているといえます。
2. 大学付属校や推薦枠の豊富さ
中学受験の志望校決定の際に、大学進学を見据えている場合、大学の付属校を
検討する方も多いでしょう。
付属校の場合、一定の成績を収めていれば内部進学が可能なため、受験勉強にしばられることなく、部活動など好きなことに打ち込むことができます。
内部進学を希望したまま外部受験をする併願制度を取り入れている学校も多く、安心して他大学受験に挑戦できるのも利点です。
近年は、外部受験を後押ししている付属校も増えており、併設大学の高度な施設や講義などを教授しながら、じっくり自分の将来と向き合うこともできます。
また、学校推薦型選抜の指定校推薦に力を入れ、私立大学と提携するなど、枠を増やす働きかけをしている学校も増えており、より生徒の進学先の選択肢が広がっています。
3. キャリア教育の充実
系統経った取組が必要なキャリア教育に6年間という十分な時間を当てられるのは一貫校ならでは。
まずは自分自身を知り、どのような分野に興味があるのか、そのために必要な学びは何か、将来についてじっくり考えるための取組が充実しいます。
大学での模擬授業や職業体験など実地で学ぶものをはじめ、卒業生や社会で活躍する人たちと「仕事」について対話する機会を多く設けるなど、具体的な職業について考えるきっかけ作りにも熱心です。
OB・OGとのつながりの強さは私立中高一貫校の特長のひとつですが、これらの先輩の存在も、現役の生徒たちにとっては身近なロールモデルとなり、例えば女子校では、結婚・出産など女性にとって人生の転換期となる時期を見据えたライフデザインに取り組ませるなど、きめ細かな教育がなされています。
このように各校が打ち出すその学校の特色こそが、私立一貫校のメリットそのものだといえます。
実際の学校をのぞき見!
東京都市大学附属中学校・高等学校
入学前から見据える大学受験。レベル別クラスで無理なく対策
目指す大学のレベルや学習の習熟度に合わせて、中1からⅠ類、Ⅱ塁のクラス分けを行っています。
6年間を2年ごと3期に分け、自学習慣や基礎の定着、キャリアデザイン、高3では志望校別に6つのコースに分かれて受験対策が行われます。
多摩大学附属聖ヶ丘中学高等学校
面倒見の良さは少人数校ならでは。生徒一人一人に目が行き届く環境
1学年120名が基本の小規模校のメリットを生かし、中1、2で30人クラスを実施。
基礎学力や自学習慣の定着を目標とする中1、2での小規模クラスは、先生の目も届きやすく、生徒一人一人にきめ細かな指導ができる環境を整えています。
成城学園中学校高等学校
内部進学率の高ささからうかがえる生徒主体の自由な校風が人気
毎年、卒業生の50~65%が内部進学を希望する同校。
高2、高3で内部進学か他大学への受験を希望するかでクラス分けをするため、希望進路に合わせた授業選択が可能です。
内部進学コースの場合、英語以外の外国語や芸術科目などの履修ができます。
日本女子大学附属中学校高等学校
女子大では珍しい理系学部も!中高大とじっくり学べる環境
他大学の理系学部への進学が目覚ましく、医学部や薬学部などへの学校推薦型選抜も活発。
内部進学先の日本女子大学には、女子大には珍しい理学部があり、2023年4月に開設された国際文化学部に続き、建築デザイン学部、食科学部(仮称)も開設予定。
文教大学付属中学校・高等学校
独自のキャリアノートで自分の適性を具体化
企業と共同開発したキャリアノートを使用し、6年間行う「文教キャリア教育プロジェクト」の中には、農業体験を通して農家の課題や流通など幅広く学ぶ機会や、企業訪問など職業への知見を広めるものも。
自分の将来を具体的にする大きなきっかけになります。
大妻多摩中学高等学校
世界に視野を広げるきかっけに!海外研修で行うキャリア教育
中2の海外研修にキャリア教育を組み込んだ「グローバル・キャリア・フィールドワーク」を実践。
中2生は全員参加し、研修先に移住する日本人に現地で働くことについてインタビューすることで、海外への進路選択などのキャリアデザインにつなげます。