中高一貫校に通うメリットのひとつとして、グローバル教育への注力が挙げられます。
グローバル教育に熱心に取り組んでいる中高一貫校では、海外の大学へ進学したい生徒を積極的に応援する学校も増えてきました。学校ごとに特色のある手厚いサポートで最短ルートで海外の大学へ進学する夢が叶えられるかもしれません。
海外大学への直接進学といえば、中学入学時にも高度な英語力を必要とする難関校が真っ先に思い浮かびますが、実は、入学試験はそこまで難しくなくても、海外大学への直接進学の実績を上げている中高一貫校もあります。海外進学への道のりで、どんなカリキュラムや制度が利用できるのか、具体的に説明しながら、注目校の取り組みを合わせて紹介していきます。
6年間の伸びしろに期待!
学習を積み上げ、直接海外進学へ
IB教育を履修し海外大学進学の資格を得る
海外の大学に進学するには、まず受験資格が必要です。そのための取り組みの一つが、国際バカロレア(IB)教育です。IB教育とは、多様な文化の理解と尊重を重んじ、よりよい平和な社会を築くことに貢献する若者の育成を目的に定められた教育プログラムです。国際的な視野で行動するための能力やスキルを育むとともに、16〜19歳を対象にしたDP(ディプロマプログラム)では、所定のプログラムを2年間履修し、最終試験を経て所定の成績を収めると、世界共通の国際的な大学入学資格(国際バカロレア資格)を得ることができます。
茨城県つくば市にある茗溪学園中学校高等学校は2016年に国際バカロレア認定校に。すると、IB導入前には、年間5校前後だった海外大学合格数が、現在では年間100校を超えるようになりました。さらに卒業生が海外大学での経験を在校生に伝えることで、在校生の世界や現実が広がり、これをきっかけに海外大学へ挑戦していく〝いい循環〞が生まれているといいます。
国内のバカロレア認定校(DP)は令和6年6月現在で69校(文部科学省公表)。インターナショナルスクールにおけるIB導入が目立つ中、玉川学園中学部・高等部の国際バカロレア(IB)クラスでも、同プログラムが実施されています。
日本と海外、両方の高校の卒業資格が得られるDDP
同じく海外進学の足掛かりとなるのが「ダブルディプロマ/デュアルディプロマ(DDP)」です。その名の通り、日本と海外の2つの高校の卒業資格が得られるというもので、最大のメリットといえるのが、海外の大学の受験資格が与えられることです。
例えば、神田女学園中学校高等学校では、アイルランド、ニュージーランド、アメリカなど、5つのエリアから、「学び方」「環境」「目的」に応じてエリアや学校を選択できます。森村学園中等部・高等部では、日本にいながらオンラインでアメリカの名門高校の授業を受講するデュアルデプロマで、卒業資格の取得を目指します。聖園女学院中学校・高等学校でも、2024年度からオンラインでカナダの高校の授業を受講することができるようになり、学校側も全面的にサポートする姿勢をとっています。
一つ気を付けておきたいのは同じDDPでも、卒業資格を取得できる条件が異なるというとこと。また、どの国のどの大学に受験できるようになるのかも、あらかじめ調べておく必要があります。
海外大学への推薦制度への加盟や独自の教育協定制度も
海外進学に向けた学校側のサポート体制にも注目です。例えば、在学している学校が、UPAS(海外大学進学協定校推薦入試制度)やUPAA(海外協定大学推薦制度)などの海外の進学制度に加盟していることも海外進学の近道といえるでしょう。UPASは、海外の大学が学内の多様性を高めるために優秀な日本人学生を受け入れる目的で設けた特別制度です。アメリカを中心とした欧米約70校が協定校として参加しています。UPAAも同様の制度で、現在9か国の大学が協定校として参加しています。どちらも海外の大学と日本の大学の併願が可能なため、進路の選択肢が広がります。
また、奨学金制度を適用している大学もあり、海外進学へのハードルを下げてくれるメリットもあります。いずれも学校がこれらの海外の進学制度に加盟していることが条件です。合格基準は一般大学の出願枠より低く設けられている傾向があるため、意欲ある生徒に海外進学の機会を与える画期的な取り組みといえます。
独自に海外の大学と協定を結び、一定の条件をクリアすれば進学が可能な学校もあります。長期の海外研修はもちろん、専門のスタッフやネイティブ教員が伴走し、海外への進路をサポートしてくれます。このように、海外進学は非常に身近なものになっています。グローバル系中高一貫校では、やる気さえあれば充分にチャレンジできる環境が整っているといえるでしょう。また、語学だけでなくグローバルマインドを育む独自の教育にも注目です。6年間をかけてじっくり取り組める環境だからこそ、さまざまなアプローチが可能なのです
グローバル教育最前線
注目校のカリキュラム・取り組み
茗渓学園中学校高等学校(茨城県つくば市)
日本の国際バカロレア(IB)教育のトップランナーとして、世界へと羽ばたく生徒を徹底サポートします。
globalポイント
■世界共通の教育プログラム(IB教育)で世界基準の人間力を育む
■毎日がグローバル!多彩な留学プログラムと帰国生が多い環境
【海外大学進学サポート】
■海外大学進学カウンセラーを設置
■海外大学出願に必要なTOEFLなどの個別添削サポート など
国際理解教育に重きをおき、正しい選択力と決断力、たくましい実行力、豊かな心を重視した全人的・総合的教育を行っている茗溪学園中学校高等学校。国際教育・海外大学進学サポートについてレポートしました。 1.世界共通の教育プログラムで世界基準の人[…]
森村学園中等部・高等部(横浜市緑区)
世界を自らのフィールドとして活躍する土壌をつくり、グローバル社会をたくましく生き抜く力を養います。
globalポイント
■世界の舞台で生きるランゲージ・アーツ(言語技術)を実践
■多彩な講座でグローバルマインドを育成
【海外大学進学サポート】
■海外大学進学協定校推薦制度(UPAS)に加盟
■US Dual Diploma Program(※希望制:英検2級以上を取得)
人徳を備え、自らの力で人生を切り拓き、世界の力、社会の力となる人材の育成を掲げる森村学園中等部・高等部。特にグローバル社会で活躍するための独自の教育や、海外大学進学サポートについてレポートしました。 1.世界の舞台で生きるランゲージ・アー[…]
神田女学園中学校高等学校(東京都千代田区)
「世界で活躍する女性の育成」を掲げる伝統校。多言語教育と異文化交流で一人一人の夢を実現をサポートします。
globalポイント
■母語+英語+第二外国語。多様な価値観を知る多言語教育
■世界各地で学べるプログラムと日常的な国際交流
【海外大学進学サポート】
■伝統のきめ細かな海外進路指導
■海外大学教育協定校制度に加盟
ほかにも!海外大学進学をサポートしている学校
湘南白百合学園中学・高等学校(神奈川県藤沢市)
海外協定大学推薦制度(UPAA)に加盟。サンフランシスコにある名門リベラルアーツカレッジ「セントメリーズカレッジ」とパートナー校提携あり。
湘南白百合学園中学・高等学校の基本情報、他の取材記事はこちら
昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校(東京都世田谷区)
グローバル留学コースは、生徒全員が10カ月間カナダに留学。敷地内のインターナショナルスクールとの交流プログラムや、短期留学プログラムも実施。海外大学推薦制度も充実。
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玉川学園中学部・高等部(東京都町田市)
6-12年生(小6から高3)を対象とした国際バカロレア(IB)クラスがある。「K-12国際教育センター」を拠点に年間200 名近い生徒の海外派遣、同数の海外生受入を行っている。
東京都市大学付属中学校・高等学校(東京都世田谷区)
ニュージーランドやマレーシアの姉妹校と提携し、語学研修のほか、提携校の生徒の受け入れも行っている。UPASに加盟している。
東京都市大学付属中学校・高等学校の基本情報、他の取材記事はこちら
トキワ松学園中学校高等学校(東京都目黒区)
海外大学進学を希望する生徒を対象にした高等教育機関ネットワーク“Navitas”と提携し、海外大学特別推薦制度を導入。海外研修プログラムで計画的に英語の運用力を伸ばせる。
文京学院大女子中学校高等学校(東京都文京区)
キャンパス内のインターナショナルスクールとの協働プログラムが充実。欧米を含む10カ国以上に留学可。海外大学推薦入学協定校もあり、海外大学進学も増えている。
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文教大学付属中学校・高等学校(東京都品川区)
さまざまな留学制度(希望制)の他、台湾の大学進学を見据えた中国語講座を双方向オンラインにて実施している。UPASに加盟している。
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横浜女学院中学校高等学校(横浜市中区)
国際教養クラスは教科学習を英語で実施(CLI L)。中3で生徒全員が約30 日間のNZ留学。高校では多彩な海外セミナー(希望制)も。提携大学への短期留学や推薦入学制度もある。
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入試の多様化が進む中学受験。中でも、英語入試は多くの学校で行われており、2023年の首都圏中学入試では、141校が導入しました(首都圏模試センター調べ)。 英語入試の増加に伴い、中学受験のために英語塾に通う子どもも増えています。 […]