1学年が120人という小さな学校で行われているのは、夢に向かってはばたく生徒を応援する大きな教育です。
明るくてエネルギッシュ、いつも笑顔が絶えない聖ヶ丘の生徒たちは、自己研鑽という羅針盤をもって成長していきます。
▲天文部の活動が行われる天体観測室。夏には合宿で夜を徹して星空を眺めるそう。|多摩大学附属聖ヶ丘中学高等学校|東京都多摩市
QへのAを知るためにとことん探究 教師も生徒も本気で面白がる
多摩大聖ヶ丘(以下、聖ヶ丘)の教育を象徴する「A知探Q(えいちたんきゅう)の夏」は、2018年度から始まった特別講座で、夏休みに開催されます。
コンセプトは、「教科書にはない学びを!」。先生方が自らの「得意」をテーマにゼミ形式で行うもので、企画や開催方法は先生方に一任。中1から高2までの生徒が混ざって参加することで異学年交流ができる点も特長です。
英文レシピで作る「英語でうどん」、2泊3日の研修旅行で生態系や自然保護を学ぶ「ブラヒジリ尾瀬」、実際に弁護士が来校して行う「模擬裁判による裁判員チャレンジ」などバラエティーに富んだ約40の講座があり、すべての先生が最低1講座を担当します。
開講に先駆け、教師間で事前プレゼンも行い、さらにブラッシュアップするという徹底ぶりに加え、開講前には30秒ほどのCM動画を自作して生徒にアピールするなど、教師陣の日頃からの熱意が感じられます。
昼休みや放課後は、このCM動画を見ようと各教室のプロジェクター前に生徒たちが集まり、「やってみたい!」「先生やるな~」と盛り上がります。結果、心をがっちりつかまれ、複数のゼミにチャレンジする生徒も少なくありません。
2019年度はさらにグレードアップされ、前年と同じものが一つもなかった点からも、先生自身が面白がってこれに参戦していることがわかり、その背中を見ること自体が聖ヶ丘の教育のベースともいえます。
▲生徒の探究心を育てることを目的としてはじめたA 知探Q。校長先生をはじめ、すべての先生が必ず1講座以上を担当します。|多摩大学附属聖ヶ丘中学高等学校|東京都多摩市
論文を読み解く講座は校長自らが担当!
「ロンブーン」は、学術論文を読み解く方法を学ぶ講座です。「国語の成績をアップさせたい」「AO入試・面接に役立ちそう」「校長先生と話したい」など、参加の理由はさまざま。
題材になった「働かないアリに意義がある(長谷川英祐著)」は、働きバチやアリはみんな必死で働くと思いきや、実はその7割はボーっとしており、さらに1割はまったく働かないという内容です。
「だったら自分は働かないほうがいいな」という一人の生徒の言葉がみんなの笑いを誘います。「でも退屈だよね」「何のために生きているんだろう」などの意見は「集団社会の中でそれが必要とされる理由」にまで発展し、ディベート力もついていきます。
2020年度は、コロナ禍の休校による授業の遅れを取り返すため、例年は「A知探Q」に使っていた夏休みの時間を通常授業に切り替えました。
残念という声も多くありますが、夏休みにも学ぶという基本的な姿勢は同じです。2020年度の「A知探Q」は「コロナに負けない」をキーワードに真の意味での開催となりました。