「美しが丘西クリニックプラザ」というメディカルモールの中にあるクリニック。
落ち着いたダークブラウンと白を基調としていて、「昭和モダン」をほうふつとさせます。日差しも明るく差し込む広い待合室は、間接照明もありリラックスできる空間になっています。
咽頭、喉頭の専門医でもある手塚克彦先生は、勤務医時代に培った多くの経験を経て、患者のニーズに応えていけるようなクリニックでありたいと、土日にも診療を続けています。
このあたりを歩けば、みんな知り合いというふうになれたらいいなと思って
――なぜ耳鼻咽喉科の医師になることを選んだのですか?
大学のカリキュラムでのど、耳、鼻などいろいろな勉強をするんですが、私はのどが一番興味深かったんですよね。のどは「食べる」ときに働きの大きい場所です。普段食べられるときにはあまり考えませんけど、実は大事な働きをしているんですよ。食べることは人にとってとても大切なことだし、人生においても大きな楽しみの一つ。この部分を治すことができる仕事はやりがいがあると考えるようになりました。また、中でも嚥下障害について研究していくことにしました。
あと、私は子供が好きなので、子供の患者さんが多い耳鼻咽喉科を選んだというのも理由のひとつではありますね。
――土曜、日曜日に診療する理由を教えてください。
開業当初から土日は診察を続けています。日曜日に診察をしているのは、せっかく開業をするのなら、地域貢献がしたいとの思いがあったからですね。これからももっと地域に根差したクリニックにしたいんです。このあたりを歩けば、みんな知り合いというふうになれたらいいなと思っています。
先程も言いましたが、耳鼻咽喉科は子供の患者さんが多いんですよ。子供は休みの日に体調が急変することもあるので、開いている病院があると安心ですよね。お仕事でこの日しか仕事が休みではないとか、日曜しかお子さんを連れてこられないという方のためにも開けておきたかったんです。実際は、地域の方だけではなく近くの病院がやっていないのでとおっしゃって、遠方から来院される方も多いです。
数多くの選択肢を提示することで患者のニーズに応えていく
――専門である「のど」ではどんな相談がありますか?
食べ物が飲み込みにくいなどの嚥下障害を感じて来院される方がいらっしゃいます。年齢を重ねるとどうしても飲み込む力が弱くなるので仕方がないところもありますが、誤飲などから肺炎を引き起こすこともあるので注意が必要です。来院される方は少なくとも寝たきりになっているわけではないので、そこまで症状がひどい方は少ないということもありますが、どこが悪いのか、どこに気を付けたらよいのかアドバイスすることで変われるんですよ。
細かいものやパラパラしたものが飲み込みにくい場合は、調理のときにとろみを付けたり、背もたれにもたれたままではなく、背筋を伸ばして食べる!食べるときの姿勢を変えるだけでも違ってくるんです。
飲み込む力を鍛えるリハビリなどもありますが、専門家の指導が必要で家でやるのはなかなか難しいので、できることから改善していくように伝えています。
――同クリニックならではの機器はありますか?
他のクリニックではあまり行っていない検査になりますが、声帯の振動をスローモーションで観察し声がれの原因を調べる喉頭ストロボコピー検査を行っています。大学病院などにはよくあるんですが、個人病院にはあまりないかも。勤務医時代に咽頭や喉頭の専門外来を担当してきたので、この機器が診療にとても有効なので、クリニックにも置いています。
振動をスローモーションで見ると、あらゆる病気が分かります。例えば、声帯ポリープがある、悪性腫瘍があるなどです。そのほかプロの声楽家や歌手の方で声の響きがおかしいという場合などにも、どこに原因があるのかを調べるのにも有効です。
優しく穏やかな先生の人柄。子供たちにもわかる説明を心がけています
―花粉やハウスダスト、アレルギーなど増加している症状はありますか?
花粉症なども含めた子供のアレルギー性鼻炎ですが、低年齢化していると感じます。原因は排ガス、PM2.5、食生活の問題などさまざまな要因があるので一概にどれとはいえないので、有効な予防がこれ!と断定するのは難しいですね。ひどくなるとつらいので、もしかしてと思ったら早めに来院してください。飲み薬や鼻のスプレーなどで症状が和らぐと子供も楽だし、生活も落ち着きますから。
高齢の方に関しては、めまいや耳鳴りでしょうか。クリニックには赤外線眼振検査機も備えているので良性発作性頭位めまい症やメニエール病などの検査、治療を行うこともできますし、なにか違うなと感じたらまずは来院していただけたらと思います。
保険適用になったのを受けて、2016年6月より開始した治療方法があります。舌下免疫療法といって、アレルギーを起こすスギ、ダニ(ハウスダスト)の原因物質を少量から投与して体を慣らしていく治療法の一つです。これまでの皮下注射に加え薬体を舌の下に入れて行います。
クリニックでは投薬、レーザー治療などの対処療法もやっていますが、免疫療法は体質を変えることによって根治を目指すものなので、アプローチはまったく違います。
現在、対象は12歳以上となっていますが、年齢を引き下げようとの動きもあります。根気強く続けていく必要があり、特に10代の若い方にはお薦めしたい治療法です。ただし、レーザーによる治療もうまくすれば3~4年効果が持続するので、こちらの方が手軽でよいという人もいますよ。花粉の時期がはじまる1月までに施術すれば、徐々に効いてくる免疫療法と違い効果がすぐ出ますしね。ただし、鼻の形によっては施術できないこともあるので、自分に合ったものを選んでほしいですね。
――乳幼児によくみられる症状はありますか?
仮性クループです。風邪から発症することが多いんですが、ひゅーっひゅーっとオットセイの鳴き声のような声が出て、呼吸困難になることもあります。声帯の下の気管の入り口が風邪などをひいて弱って、むくむことで気道が狭くなり起きる病気です。
夜中にひどくなることが多いので、赤ちゃんもお母さんもびっくりされてしまうと思いますが、赤ちゃんが泣いてしまうと余計にむくむので、とにかく慌てないことが一番です。しばらくすれば少し落ち着くので、落ち着いてきたら救急を利用してください。もしそのまま症状が落ち着いたとしても翌日ぶり返すことがあるので、病院で一度診てもらうと安心ですね。
――学童期の子供たちに多い症状はありますか?
子供たちに多いのは副鼻腔炎と中耳炎でしょうか。鼻の病気に関していえば、鼻をかむことが大切になってきます。小さい子は鼻をかむのが難しいと思うんですが、鼻水がたまると炎症が起きてしまって、病気を発症してしまうんです。あと、中耳炎にもなりやすい。
普段から家でティッシュなどを使って、鼻息をかけたりして練習しておくとよいですね。保育園に入園して半年くらいは鼻、耳の病気で何度も来院する子がいますけど、抵抗力が付いてくるとだんだん落ち着いてくるものです。ですが、しっかり治しておかないとその後もかかりやすくなるので、放っておかないで早めに来院して欲しいですね。
6年程前から飼っている2匹の親子犬「ワイマナラ―」がマイブームと話す手塚先生。シルバーグレーのつややかな短毛を持つ大型犬で、体重は約28 ㎏、リードを引く力も強いので、毎日の散歩は先生自身にとっても良い運動になるとか。クリニックのホームページには愛犬たちと撮った写真を掲載していて、見ているだけで自然と笑顔になるそうです。
▲院長 手塚 克彦先生(てづか耳鼻咽喉科クリニック:神奈川県横浜市青葉区)
三重大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科入局。日本赤十字医療センター、関東遁信病院、竹田総合病院勤務を経て、東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科医局長、都立神経病院神経耳科医長を務め、2000年にてづか耳鼻咽喉科クリニックを開院。医学博士。