駅から徒歩5分。ショッピングビルが立ち並ぶ利便性の高い街並みの中、落ち着いた雰囲気で迎えてくれるのが「やすこレディースクリニック」です。院長の林康子先生は、さっぱりとした人柄で患者さんからの信頼も厚く「やすこ先生」の愛称で親しまれています。「健康に気を付けている方でも病気になる可能性はあります」と、定期的な子宮がん・乳がん検診を勧められていて、病気に関して正しい知識を持つ事が今後の生活を豊かにすることに繋がると語る林先生に、クリニックのことや今後の展望などについてお話を伺いました。
病気を見逃さないのが大前提 患者さんと話す時間を大事にする環境づくりを
――こちらのクリニックの特徴をお聞かせください。
婦人科には様々な年代や症状で来られる患者さんがいるので、静かで落ち着いた空間を保てるよう工夫しています。受付にある犬の人形は、スタッフが私の愛犬「チェリー」を参考に作ってくれました。本物そっくりなかわいらしい表情に癒されるとみなさんに好評です。
待合室には本や雑誌のほかに、病気や検査に関するパンフレットやスタッフがまとめた資料(風疹、おりもの、貧血、お腹の痛み)も置いてあるので、待ち時間を使って婦人科にかかる症状の基本的な情報を知る事ができます。
また、お待たせする時間をさらに少なくしたいという思いから、新しく予約システムを導入しました。婦人科は問診が長いので予約システムの導入は難しいと言われていますが、改良を重ね、現在で3代目のシステムになり、より待ち時間が少なくなるよう努めています。ホームページにて、30日前から予約が可能。曜日と時間が選べます。空き時間の確認もできるのでスムーズに手続きを行うことができます。
――診察の際に心がけていることを教えて下さい。
病気を見逃さないためには、細かい問診が重要です。問診票には初診で約30個のチェック項目があり、デリケートな質問や、可能であれば基礎体温表の用意をして頂くなどの準備が必要です。そのため、落ち着いて問診票の記入ができるように、ホームページからダウンロードをして自宅で記入できるようにしました。その情報をもとに診察をし、いま患者さんの身体にどんな症状があって、次に何が起き、どうしたら症状が改善できるのか、その答えを見つけるのが私たちの仕事と考えています。
――日頃より気になる症状をメモしておくのが大事ということですね。病気の発見には具体的にどのような検査が必要ですか?
定期的な子宮がん検診や乳がん検診、加えて超音波検査の受診をお勧めしています。例えば子宮がんの検査のみをした場合、卵巣がんがあったとしても発見することはできません。そのほかには子宮筋腫や子宮内膜症のような、悪性でなくとも辛い症状が出る病気がたくさんありますので、ぜひ超音波検査も受けて頂きたいです。
このような子宮がん検診や乳がん検診の受診が、女性が自分の身体と向き合うひとつのきっかけになって欲しいです。今は昔に比べて子供を産む数が少ないため、生涯経験する月経回数も多く、がんのリスクも増えています。そのために早期発見、治療ができるように日頃から検診を受けるようお勧めしているのです。
――医師を目指されたきっかけ、特に産婦人科医を選ばれた理由を教えて下さい。
人と関わることが好きだったので、将来つく職業が人に喜ばれる仕事だったら嬉しいなと思っていました。
学生時代は理系の学校に通っていて、大学に行って仕事を持つという事が当たり前の環境でした。ただ当時は、女性が仕事をして生きるというのが大変な時代。家族には女性という理由で薬学部を勧められて悩みました。どちらにせよ大変なら、自分のやりたいことをしよう、学んだことを生かしてたくさんの人に喜んでもらおう、と考え医学部を受験しました。
産婦人科医になったきっかけは、実習で産婦人科に行ったときです。もちろん当時は、女性の医師はほとんどいません。そんな中、患者さんは混雑した待合室にズラッと並んで待たされている状況でした。ようやく受診が始まっても、隣の問診は筒抜け、プライバシーの配慮をしようという発想がまるでありませんでした。
その環境にショックを受けましたが、同時に「もしかしたら自分のニーズは産婦人科にあるのかもしれない」と感じました。人と話して一緒に何かを解決するというのが好きだったので、患者さんと密にコミュニケーションをとる必要がある婦人科は向いていたと思いますし、女性として自分が産婦人科医になることで、この環境を改善できるのではないかと考えたのです。その思いから、クリニックの診察室と処置室は完全に分けていますし、声が外に漏れないように配慮しています。
――先生はどのような子供でしたか?
小さい頃は算数が大好きでした。パズルのように問題を解いて答えが出るのが不思議で面白く、楽しかったからです。ちょうど先日同窓会があり、そこで友人が小学校の文集をもってきていて、「将来なりたいものは?」という質問があり、私のページには「答えを出すのが楽しいから、数学者になりたい」と書いてあったほどです。
答えを出したいという性分と、人が好きで喜ぶ顔が見たいという気持ちが今の医師である私を作ったんだなと感じています。
女性が正しい知識を得ることで 幸せな人生を選択できるように
――今後の展望をお聞かせください。
目の前の患者さんの苦しみを理解して、楽にしてあげたいという気持ちのもと、患者さんの症状の理由を見つけて改善する答えを出す診療であり続けたいです。
横浜市の産婦人科のレベルは非常に高いです。私自身も、日々進歩する医学の情報を知るために、クリニックを休診にして学会へ行くことがあります。そこで得た知識を検診などでお会いする度に患者さんにお伝えしていきたいと思っています。
ワクチンや病気に関して私が正しい情報をきちんと説明し、その患者さんがお子さんや知り合いにその情報を話すことで少しずつでも女性の知識や関心が増えていき、その結果みなさんが幸せな生活を送れるように心から願っています。
――最後にメッセージをお願いいたします。
「ワークライフバランス」という政府の取り組みを聞く様になりました。女性は仕事や育児、そして介護など様々な問題を抱える可能性があります。その中で、自分の人生を選択して生きていくという意識をもつことが大切です。
生理がくるからといっていつまでも妊娠できるわけではありません。医学は進んできていると言えど、40才を過ぎると当然妊娠率は下がっていきます。
健康でいるためにできることは、正しい知識を学び、自分の身体と向き合って理解したうえでその知識を利用することです。
インターネットの情報はたくさんの情報を簡単に得ることができる半面、中途半端な情報が一人歩きして実際は間違っていることも多いので、気になることは病院に行き確認をすることが大切です。最近はスマートフォンで、基礎体温を記録するアプリケーションなども簡単に利用できます。それについても、ただ体温を記録するのではなく自分の身体の状態もあわせて記録することが大事ですね。
どんな小さな悩みでも構いません。抱え込んで悩んだりしないで、気軽に相談にきていただけたらと思います。
ずばり、「マイブームはチェリーよ!」と、楽しそうに愛犬のチワワの話をするやすこ先生。勤務を終え、帰宅するとすぐに駆けつけてくるチェリーがかわいくてたまらないご様子。「遠出でも」と思いつつも、完全オフはめったにないので、散歩や買い物など日々の何気ない生活を一緒に過ごすことが息抜きにつながっているそうです。
▲院長 林 康子先生(やすこレディースクリニック:神奈川県横浜市都筑区)
日本医科大学卒業。日本医科大学付属第一病院、下館市民病院、横浜日赤病院などの勤務を経て、2003年にやすこレディースクリニックを開院。日本産婦人科学会認定専門医、母体保護指定医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医。