Vol.01小児科医に聞く「withコロナの中で子どもの健康を守るには」

Pepeファミリーケア研究会の協力のもと、withコロナ時代の子どもの健康と子育てについて連載コラムをお届けします。第1回はwithコロナの中、子どもが健やかな毎日を過ごすために保護者はどうすればいいのかについて、そがこどもクリニックの院長、曽我恭司先生に伺いました。

≪曽我先生からのメッセージ≫
社会的に甚大な被害をもたらした新型コロナウイルス感染症は一つのピークを越え“アフターコロナ”という言葉をよく耳にするようになりました。日本は欧米に比べれば被害は少なかったものの東アジアの中では死者数は多く、死亡率は高い方であり、決して安心できる状況にありません。
なにより撲滅できておらず、ワクチンも治療薬も未開発というのが現状です。わかっていることも限定的で、今後も流行を繰り返すことが予想され「ウィズ(with)コロナ」、つまりコロナウイルスと共存していくと考えたほうがよく、厚生労働省から「新しい生活様式」としていくつかの提言がされています。

感染症やアレルゲンを家庭に持ち込まないために

私には大学病院勤務時代に生まれた子どもが二人おります。小児科医という仕事柄、多剤耐性菌、インフルエンザやRSウイルスなどさまざまな菌、ウイルスに接触することが多く、自分自身に症状がなくても子どもたちにうつす可能性があるため、帰宅するとリビングに座る前に入浴するという習慣でした。感染症に限らず花粉などのアレルゲンを家庭に持ち込まないようにするために、皆さんもご家庭で心がけてみてはいかがでしょうか。

子どもは保育所、幼稚園、学校で健やかに成長していく

子供たちがSocial distance(社会的距離)を2m(最低1m)空けるのは非現実的でしょう。子どもは保育園、幼稚園、学校でお友達と一緒に遊び、学ぶことによって、成長していきます。保護者や医者が頑張っても与えることのできない経験を、子どもたちは子ども社会の中で得ることができます。

言葉の発育が遅い子や、人見知りがひどくてコミュニケーションがとりづらく発達障害を疑われていた子が保育園に通園することにより、数カ月で見違えるほどの発達をすることはよくあることです。子どもたちはさまざまな人、物との接触を通して成育して行くので周囲の大人が手洗いの徹底と環境整備に心を配り、感染予防を図りつつ、成長を促してあげたいと思います。

緊急事態宣言の中、公園で鬼ごっこ(泥警?)をしたり、サッカーボールを蹴ったり、バドミントンをしたりしている子どもをいつも以上に見かけた気がします。スマホやゲームなどの電子機器による子供たちの健康被害が言われるようになって久しいため、日中に屋外で体を動かし、早寝、早起きの習慣が広まるとよいと思います。

子どものマスク着用率と2歳未満のマスク着用について

これまで、幼稚園児や低学年の学童が素直にマスクを着けてくれることは少なく、着けていると「偉いね」と褒めていましたが、最近は2~3歳の子どももおとなしく着けてくれています。「マスクを着けてほしい」という保護者の真剣な願いが通じて着けてくれるようになったんだと思います。

しかし日本小児科医会は「2歳未満の子どもにマスクの着用は不要であり、むしろ危険」と注意勧告しています。これは乳児の呼吸器の空気の通り道が狭いため、呼吸がしにくく、心臓への負担になること。そしてマスクそのものや嘔吐物によって窒息のリスクが高まる。また顔色や表情の変化など、体調異変への気付きが遅れる、などの理由からです。さらにフェースガードの辺縁は鋭利であり危険を伴うため、こちらもお勧めできません。

オンライン診療のよさ、通院のよさ

オンライン診療の推進が行われ、私も数件行いました。基本的には親御さんのオンライン受診に対する強い希望がない限り、待合を工夫するなどして来院受診していただきましたが、「ごめんなさい。お母さんの言う通り軽いね。いつもの薬でよいね」ということも、「お母さん、いつもと違うよ。ゼイゼイしていて苦しそうだよ」と病院に紹介をしなければならなかったいう怖い思いをしました。感染するかもしれない不安を抱えて来院してもらうのか、それともオンライン診療でいいのか、今後は安心して通院できる環境および的確な診断ができるオンライン診療の準備と慎重さが必要かと思いました。

何回も診ていて子どもとともに親御さんの性格も知っていると「このお母さんの心配の仕方なら大丈夫そうだな」、「このお母さんが連絡してくるのだからつらそうなのだろうな」と感じたり、子どもと直接話をしたりすることにより、的確なアドバイスができることも多々あります。そのためにも、ぜひかかりつけ医を持っていただきたいと思います。

ワクチンの接種や乳幼児健診はかかりつけ医と相談を

病院、クリニックでの感染を恐れ、乳幼児健診の受診率、ワクチンの接種率が低下していることが報告されています。乳幼児健診は、年齢ごとに起こりやすい病気や問題を早めに見つけて治療、療育に結び付けること、予防接種は感染症の感染や重症化を予防することが目的です。それらが極端に制限されることによって、予防できる他の重大な病気の危険性が高まることは絶対に避けなければなりません。

今後も数カ月、あるいは数年、現在の状況が続く可能性もあり、その間に乳幼児健診や予防接種を回避するデメリットは大きいと考えられます。まずはかかりつけ医と相談し、上手にスケジュールを組んで実施してください。

新型コロナウイルス感染症対策は他の多くの感染症の対策と共通であり、正しく恐れ、適切な行動をとって、子どもたちの発達、生活を支援していきましょう。


Pepeファミリーケア研究会とは
人々が安心して楽しく育児ができる環境を確保できるよう、地域住民とのつながりを大切にした、継続的で包括的な保健・福祉・医療を行うことを目的とし、小児科医や看護師、助産師、理学療法士などさまざまな専門家が結集した「Pepeファミリーケア研究会」。育児を支える他職種交流の場や育児家庭の交流の場を設けたり、保健・福祉・医療の増進を図ったり、公的支援を利用できない育児家庭の支援や、育児に関する教育を行うなど、さまざまな活動をしています。


そがこどもクリニック
院長 曽我恭司先生

昭和大学医学部を卒業後、同大学病院小児科、富士吉田市立病院、町田市民病院などに勤務。東京女子医科大学付属日本心臓血圧研究所に国内留学し、昭和大学病院小児科講師、横浜市北部病院こどもセンター准教授などを経験し、2019年10月にそがこどもクリニックを開院。昭和大学横浜市北部こどもセンター客員教授。日本小児科学会認定専門医。日本小児循環器科学会認定専門医。
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