withコロナ お医者さんからのメッセージ<小児喘息のお子さんを持つお母さんへ>

新型コロナウイルスの感染拡大によって、先の見えない不安な毎日を過ごしている保護者の方たちも少なくありません。ビタミンママにもたくさんの疑問や不安の声が届いています。そんなみなさんの声に、お医者さんや学校の先生など、さまざまな専門家が詳しくお答えします。

Q:8歳の男児の母です。小児喘息があるとコロナにかかりやすく、重症化するのでしょうか?

A:小児喘息によって感染リスクが高まる心配はないでしょう。

気管支喘息と並んで新型コロナウイルス感染症のリスクが高いといわれている呼吸器疾患に慢性閉塞性肺疾患(COPD)が挙げられます。実はこの2つの疾患は(適切な治療を行わないと)最終的には同じ病態(肺気腫)に行きつくのです。

肺気腫の段階になると呼吸機能は極端に低下し日常生活で酸素が必要な状態となります。毎年このような状態でインフルエンザや肺炎に罹患してお亡くなりになる高齢者が3000~5000人いらっしゃいます。ですから同じ呼吸器感染症の新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいのはある意味当然といえます。

ですが小児喘息で肺気腫に至るようなケースはまず存在しませんので、小児喘息は新型コロナウイルス感染症のリスク要因ではないともいえます。
最近国内からの研究で、小児喘息の患者さんは、むしろ新型コロナウイルスに感染しにくいのではないか、という報告がなされました。

また、成人の吸入治療薬であるオルベスコが軽症の新型コロナウイルス感染に効果があったとの報告もありました。類似の吸入薬を使用中の患者さんが吸入薬の予防効果で感染が抑えられている可能性があるかもしれません。

現時点でわかっている新型コロナウイルス感染症状の主なメカニズムは以下の3つです。

①肺炎型:サーファクタント欠乏を引き起こすため酸素化が急速に悪化する病態。重症化するまで二酸化炭素の上昇がないため「息苦しい」という自覚症状が出にくいという特徴があります。このため自覚症状が出た時には手遅れになる場合が多いと考えられます。欧米では「サイレント ニューモニア」と言われています。

②血管炎型:全身の血管に炎症を生じるタイプです。血栓を形成することにより、脳血管障害、虚血性心疾患、肺塞栓症等の疾患を起こします。元々血管障害である重症の糖尿病の患者さんでリスクが高くなるのはこのためです。欧米で小児の川崎病類似疾患の報告が増えているのはこの血管炎によるものです。

③サイトカインストーム型:コロナウイルスに対する免疫細胞の過剰反応が全身で生じるため自分の身体を壊すことによって引き起こされます。いわゆる多臓器不全で亡くなる方はこのタイプです。比較的若い方で起こります。

Q:コロナ禍で注意することを教えてください。

A:コロナを恐れて通院を控えず、しっかり治療しましょう。

喘息は気道の慢性炎症なので、時間をかけてしっかりと治療することが大切です。なので症状がある時だけの中途半端な治療を行っていると知らず知らずのうちに呼吸機能が低下していくことになります。

コロナ禍だから感染を恐れて通院を控えるという自己判断はせず、かかりつけ医にきちんと相談することが大切です。今はどのクリニックでもかかりつけ患者さんがコロナウイルスに感染しないようさまざまな対策を行っていますのでご安心ください。

またうがい、手洗い、マスクに加え、三密を避けることは新型コロナウイルスに限らず、常に感染防止のために重要ですから、引き続き習慣化させるよう心がけましょう。

お答えいただいたのは

ときえだ小児科クリニック
院長 時枝啓介先生

産業医科大学医学部卒業。オハイオ州シンシナティ小児病院、慶應義塾大学医学部小児科、横浜市立市民病院小児科(喘息外来)勤務等を経て、2003年ときえだ小児科クリニック開院。日本小児科学会認定小児科専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医。医学博士。
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