「病気を診る」のではなく「子ども自身を診る」ことを大切に

▲明るい色の内装なので子どもも安心してくつろげます(そがこどもクリニック:横浜市都筑区)

2001年から18年間、大学病院に勤務し、専門の先天性心疾患や川崎病など小児心疾患をはじめ、一般的な病気から希少疾患までさまざまな病気にかかわってこられた曽我 恭司 院長が、2019年10月より開院した「そがこどもクリニック」。大学病院時代からの「ママの悩みに寄り添いたい」という想いを胸に、育児のサポーターとして、地域のプライマリケアに努めています。

――親御さんの悩みに寄り添いたいという思いが開院のきっかけと伺いました。

大学病院に長く在籍するあいだ、重症の患者を治療することを第一に求められていました。しかしママたちの話をよくよく聞いてみると、たとえ心疾患の治療で来院していても、治療以外ことでも悩んでいて、それを相談したいというご要望も多いのです。そこで、プライマリケアとして必要な治療をしながら、親御さんの話を聞く場をつくりたいと思いました。

院内は内装を明るい色にして、子どもが安心できる空間づくりをこころがけています。また、これは私のモットーでもあるのですが、白衣は着ません。大学病院の医局でも、たとえ院長に注意されようとも、ほとんど白衣を着ずに通しましたし、今もそれを貫いています。ピンクやオレンジのシャツを着て、笑顔で診察します。

診察の際は、不調や病気はもちろんですが、子ども自身を診る、つまり日常や育ち方、環境などもトータルで診るようにしています。付き添いの親御さんは、その時のお子さんの咳や鼻水、腹痛などの症状を話してくれますが、本当に困っていることは他にあるのかもしれないからです。

たとえば、子どもの体重が増えない、平均から外れているなどでお母さんが一人悩んでいるケースは少なくありません。しかし、医学的に見ると、ひと月ごとの成長に問題なければ、少しくらい平均から外れても気にすることはないのです。それを話すとお母さんはとても安心し、精神的にも安定して育児をすることができます。

反対に医学的に見ると気になる症状なのに、それに気づいていないケースもあります。たとえばチックなどは、代表的な例で、意外と気づいていない親御さんが多く、「おや?」と思ったときはそれも診るようにしています。

このように、医学的に気になることと、お母さんが悩んでいることに乖離があるケースは少なくないのです。このギャップを解消して、安心して子育てできる環境を作ることも地域医の役割と考えています。

――来られる患者さんは、ご専門である心疾患のお子さんが多いですか。

大学病院で、長く治療に携わっていましたので、心疾患の患者さんもいらっしゃいますが、小児心疾患は、そもそも絶対数が少ないので、当院での患者さんの割合としては多くありません。多いのは風邪や腹痛、発熱などを伴う小児特有の感染症や、アレルギー、便秘、夜尿症などです。


▲お子さんの便秘や夜尿にお悩みのママはぜひご相談ください(そがこどもクリニック:横浜市都筑区)

心疾患についていうと、2020年の1年間で、4名に対して手術や治療を受けてもらうために大病院に紹介状を書きました。単なる咳や風邪だと思っても、実は心疾患の初期ということもありますから、早期の発見と治療がとても大切です。

私は小児循環器内科が専門ですから、手術は行えず、手術前の管理や術後の成長を含めた経過観察を行っています。私が内科を選んだのは、このように術前から術後の管理まで、長く患者さんと接することができるからです。子どもの成長を長く見守れることにやりがいを感じています。


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わんぱくだった子ども時代から物理を愛する医学生へと成長


感染症拡大予防対策として、ベンチにはパーテーションを設置しています(そがこどもクリニック:横浜市都筑区)

――小児循環器を専門にされたきっかけを教えてください。
先天性心疾患は、心臓のどの部分に負担がかかるか、大きくなるかといったことが物理の理論を使って理詰めで説明できることが多いのです。私は物理が好きだったので、医学生のときに勉強していて、こうした病態生理が面白いと思いました。

お話を聞くと、幼少期から勉強熱心だったのだろうと想像します。

とんでもないです。遊んでばかりでしたね。中学生のとき、近所の人に「いつまで遊んでいるんだ」と叱られたことをいまだに覚えています。ケンカもよくして、親が職員室に呼ばれたことも一度や二度ではありません。

ただ小さい頃から算数、数学が好きで、ずっと理数系科目は得意でした。医学部を選んだのは、親が医者ではありませんが医療従事者だったことも影響しているのではないかと思います。

――コロナ禍の中、子どもが日常生活を過ごすうえで、注意すべきことを教えてください。

子どもたちにはマスク着用、手洗い・うがいなど、基本的な対策をしつつ、なるべくコロナ禍以前に近い日常生活をしてほしいです。感染が怖いからと、社会とのかかわりを避けてしまうと、成長の貴重な機会を失いかねません。外でよく遊び、ウイルスを持ち込まないためにも、帰ってきたらすぐ手洗い・うがいし、リビングに入る前に着ていた服を脱いでしまい、できればシャワーをましょう。

小児科学会としては、子どもから子どもへの感染はかなり少ないと考えています。それよりも、大人から子どもにうつすことのほうが多いようなので、親がウイルスをもらわない、家庭に持ち込まないようにすることも大切です。


院長の曽我恭司先生 そがこどもクリニック(横浜市都筑区)

昭和大学医学部を卒業後、同大学病院小児科、富士吉田市立病院、町田市民病院などに勤務。東京女子医科大学付属日本心臓血圧研究所国内留学、昭和大学病院小児科講師、横浜市北部病院こどもセンター準教授などを経て、2019年そがこどもクリニック開院。昭和大学横浜市北部病院こどもセンター客員教授。日本小児科学会認定小児科専門医、日本小児循環器学会認定日本小児循環器学会専門医。


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