心の温かさ伝える一期一会の物語
『幸福の黄色いハンカチ』
昭和育ちの人なら誰もが知っている山田洋二監督の名作邦画。
網走刑務所を出所した男が、ナンパで出会ったカップルと共に、妻が住む夕張の町に帰るまでの心温まるロードムービーである。
日本映画の定番ともいえる作品だが、原作はニューヨーク生まれの作家ピート・ハミルのコラム『ゴーイングホーム』。戦地へ赴く家族の生還を祈り家の外に黄色いリボンを飾る、という古い風習をベースに書かれた随筆である。
人を殺めた前科を持つ男に高倉健。ナンパなバカップルを演じたのは金八先生になる前の武田鉄矢と『前略おふくろ様』の海ちゃん役でブレイクした桃井かおり。ミスマッチな三人の珍道中は、やがて男が愛した妻(倍賞千恵子)が暮らす夕張の町に入り、張りつめた空気へと一変する。
青空にはためく黄色いハンカチのラストシーンは、何度見ても自然と胸が熱くなる。
たとえそれが旅で出会った見知らぬ他人だったとしても、その人の幸せを心から願い、応援したいと思う瞬間が、人間にはある。