Vol.02 看護師がアドバイス「コロナストレスに負けないきょうだい児の子育て」

Pepeファミリーケア研究会の協力のもと、withコロナ時代の子どもの健康と子育てについて連載コラムをお届けします。第2回はコロナ禍で幼稚園や学校に行けず、外で思うように遊ぶこともできず。そんなストレスのせいか、上の子が下の子に当たることが増え、どう対処すればいいのかわからない。そんなお母さんの悩みについて、同研究会発起人の一人でナーシングドゥーラ®横浜あおば代表の看護師、森 千草さんに伺いました。

≪森 千草さんからのアドバイス≫
現代の子育て社会は「孤育て社会」、「ワンオペ」とも言われています。古き良き昭和の時代には、祖父母も同居するなど、3世代や4世代での子育てが可能でした。何人もの大人と子どもが暮らし、大人たちは子どもを見つめ、愛情を注ぐ。現代のワンオペとはかけ離れた、育児にとってはまさに理想の時代でした。

しかし、「孤育て社会」と言われる現代では、出産して産科を退院したその日から、産後間もない母が一人で育児を担うのは決して珍しいことではありません。さらに、コロナ禍で外出や人との関りが以前より積極的にとれないため、お母さんたちの悩みはますます大きくなっているのが現状です。

一人っ子から兄・姉になる幼き子

まだまだ少子化といわれる現代ですが、複数の子どもをもち、懸命に育児をするお母さんもずいぶんいるものです。とはいえ、二人目の子どもが生まれるまで、第一子は両親から一身に愛情を受け、その愛を独り占めして育ちます。

ところが、二人目の妊娠または出産を機に、大好きな両親、母の愛情が自分一人のものではなくなるのです。一人っ子ではなく、兄または姉になります。この状況の変化は、一人目の子どもが小さい時であればあるほど、さまざまな反応を引き起こします。

兄・姉になった幼き子の反応

一人目の子どもとしては、弟や妹がライバルになることもあります。その結果、二人目の子どもを、敵対視し、叩いたりつねったり、おやつやおもちゃを取り上げたり、言葉で嫌悪感を伝えることもあります。しかし、この行為は、お母さんの前ではしないことがほとんどです。

なぜなら、大好きなお母さんに嫌われたくないからです。いつだって僕は、私は、「お母さんの一番」でありたいのです。まだ物心ついていない子どもであればなおさらです。以前のようにお母さんの愛情すべてを得られず、不安になるのです。その結果、ライバルを攻撃する。本能からくる自己防衛とも言えます。

上の子への、母の対応、大人の対応

一人っ子ではなくなった一人目の子の状況と心の内面を、まず見つめてあげることが大事です。二人目が産まれれば、その子はまだ赤ちゃんですから目は離せません。しかし、一人目の子の本能からくる行動を、まずは受け入れ、存在を認め、不安を安心に変えてあげてみてはいかがでしょうか。

例えば、上の子を抱きしめ、「大好き!」、「お母さんの大事な○○くん、○○ちゃん」などわかりやすい言動で、上の子を心から愛していることを、まずは繰り返し伝えてみます。上の子が、「お母さんは僕、私のことを見てくれている」、「お母さんは僕、私のことを愛してくれている」、そう感じられることが安心につながります。

また、上の子に賞賛の言葉を伝えることも、自尊心を支えることにつながります。そうして安心で満たされた上の子は、弟や妹への攻撃を圧倒的にしなくなります。弟や妹への愛情さえ芽生え、その時にはぜひ、赤ちゃんとの遊び方、触れ方、声のかけ方などを一緒に伝えてあげていただけたらと思います。

社会資源の効果的な活用を

日頃、育児をする中で、同時に家事もされているお母さんが多いと思います。それが、出産して日が浅いと、お母さん自身の体調も十分整っておらず、上記に書いたようなことが容易にできないことも多々あると思います。

お母さんだって人間ですし、まして出産後、特に2週間ほど経った辺りからはアドレナリンの分泌も減少し、疲労も溜まってきているはずです。さらに、夫婦ともに実家が遠いなどで周囲からのサポートを受けられない、まさに「孤育て」をされているお母さんは、上記のような子どもへの接し方をする心の余裕も、体力の余裕もないかもしれません。それはまったく不思議なことではなく、誰にでも起こり得ることなのです。

そんな時、勇気を出して、SOSを出してみませんか?区役所や子育て支援センターに相談するもよし、シッターを頼るもよし。
ちなみに私はナーシングドゥーラ®(※)です。地域には、育児を頑張るお母さん方をサポートするいろいろな団体や人たちがいます。一歩踏み出し、声をかけてみましょう。きっと育児のヒントがたくさんあります。お母さんの心身の安定にもつながります。勇気を出して、さあ、一歩前へ!

※ナーシングドゥーラ®とは
家族に寄り添い、笑顔を支え、地域での子育ての楽しさにつなぐ看護職です。具体的には産前産後、各ご家庭に合わせた育児プランをご相談し、家事育児のサポートを行います。きょうだい児の対応もいたします。看護職ですので、お子様やご家族のご病気のときも対応が可能です。

その他、ご家族のリフレッシュのためなどのお子様のお預かり、保育園・幼稚園への送迎、お子様の受診の送迎もいたします。産前産後に限らず、さまざまなご相談に応じています。詳しくはこちらをご覧ください。


Pepeファミリーケア研究会とは
人々が安心して楽しく育児ができる環境を確保できるよう、地域住民とのつながりを大切にした、継続的で包括的な保健・福祉・医療を行うことを目的とし、小児科医や看護師、助産師、理学療法士などさまざまな専門家が結集した「Pepeファミリーケア研究会」

育児を支える他職種交流の場や育児家庭の交流の場を設けたり、保健・福祉・医療の増進を図ったり、公的支援を利用できない育児家庭の支援や、育児に関する教育を行うなど、さまざまな活動をしています。


森 千草さん

正看護師資格を取得後、1年半ロンドン在住。帰国後は労災病院NICU、大学病院NICU・GCU、小児科外来勤務を経て、一般社団法人国際ナーシングドゥーラ®協会認定ナーシングドゥーラ®PRO取得。2019年、ナーシングドゥーラ®横浜あおばを設立。3人の男児の母。
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