絵本の読み聞かせは、子どもの成長にとってさまざまな意味と効果があります。今回は「子育てと読書」をテーマに、おすすめの絵本を紹介します。
『もいもい』—絵本は赤ちゃんの優れたおもちゃ
この本は東大の赤ちゃんラボが実験を重ねて、赤ちゃんが好む色や形を科学的に実証して作った絵本です。実は親御さんが選ぶ絵本と赤ちゃんが好きな絵本が違うことがあります。
それは、赤ちゃんはストーリーを楽しむのではなく、本を読んでくれる大人の反応や自分でページをめくることを楽しんでいるからです。おもちゃのように絵本に触れているのですね。
最近の赤ちゃんは表紙を見るとスライドさせようとするそうです。タッチパネルでなく本はめくる媒体だということも一つの学びですね。小さい頃からさまざまなものに触れることは、ものをどう扱うかの学習にもなります。
『パンツのはきかた』-生活の自立を促す-
2、3才になると自分のことを自分でやりたがるようになります。でもうまくできなくて親御さんはつい手や口を出したくなる。そんな親子のせめぎあいの時期にぴったりの本です。
この絵本は女優の岸田今日子さん作、佐野洋子さん絵の作品で、ブタさんが一生けんめい一人でパンツをはこうと奮闘するとっても楽しい絵本です。
子どもは、親が直接こうしなさいなどと強い口調で言っても反対のことをしようとするものですが、絵本を間に挟むと柔らかいニュアンスで伝えることができ、素直に受けいれてくれます。楽譜がついているので歌も覚えて、楽しくできることを増やせるようになりますね。
『おおきくなるっていうことは』-自分の成長に自信をもてるように-
中川ひろたかさん作のこの絵本は、5、6才の年長さんにぴったりの本です。成長には体やできることが増えるといった外面の変化だけでなく、小さな子を思いやる気持ちをもつようになるなど、内面の変化もあります。
大きくなるっていうことは自分だけでなく、みんな平等に年を重ねて、そして自分より小さな子も大きくなっているんだよということを伝えてくれるこの絵本。
下の子たちを見て、自分の成長に思いが至るようになったら、本当に大きくなったということですね。そんな心の成長を親御さんも一緒に楽しめ、大きくなったことに誇りをもてる絵本です。
『ごめんやさい』-人と人をつなぐ言葉を育む-
「ごめんなさい」と子どもたちが言う場面で、どんな風に言ったらお友達と仲良くなれるかを優しく伝えてくれるわたなべあやさんの絵本です。大人もそうですが、厳しい言葉でガミガミ言っても子どもが傷つくだけで改善するわけではないことはよくありますね。
子どもは2、3才位だと、悪いことをしてしまった時にどう言ったらいいかわからなかったり、相手の気持ちや状況がわからなかったり、素直になれなかったりすることがあります。
そんな時この絵本を読んであげてみてください。「ごめんやさい」って可愛らしい感じで言うと、お互いの頑固な気持ちが和らいで自然に笑顔が生まれます。柔らかい言葉が子どもたちの人間関係をつなぐ緩衝材になることを教えてくれる絵本です。
人間開発学部准教授 吉永 安里
(2020年11月12日國學院大學 SUKU SUKU SCHOOL(FMヨコハマの番組『Lovely Day♡』10月放送)より転載。)