「尊在」づくりの方法

國學院大學人間開発学部の先生方による子育てエッセイをお届けします。幼児期から小学生までの子育てファミリーへの応援メッセージが込められたエッセイです。

「尊在感」を伝えよう

コロナの影響で休校が続き、子どもたちは先生や友だちと会う機会が短くなりました。この状況では孤独感を感じることや、自分のことを客観的に見ることが難しい環境にいることがあります。

お子さんには「自分はこの世に一人しかいない、かけがえのない存在である」ということをきちんと伝えてあげたいですね。自分が「尊」い存在であると、子どもたちが認識することを「尊在感」と私は名付けました。

この尊在感を感じられると、子どもたちは希望を見失わず頑張ることができます。「尊在感」を伝えることは、究極の子育ての目標とも言えるでしょう。

家族の「愛(合い)言葉」

では、どうやって「尊在」づくりを行ったら良いのでしょう。その方法の一つとして、家族の「愛(合い)言葉)」を作ってみることをお勧めします。

例えば、我が家で実践していたのは「子育てあいうえお」です。「ありがとう」「いってらっしゃい」「うまいね」「えらいね」「おかえりなさい」。何でもないような言葉ですが、以前行った学生調査では「いってらっしゃい」「おかえりなさい」は、小学校中学年頃からかけられなくなっていました。

大事な言葉なので、ぜひ継続してかけてあげてほしいです。他にも「よかったね」は、兄弟でお兄ちゃんが褒められた時に弟が素直にこの言葉を言えたら、お兄ちゃん以上に褒めてあげましょう。1日の最後には必ず「おやすみなさい」を言うのもいいですね。

愛情ある言葉を掛け合うことで、子どもは自分が大切な存在だと自覚できるようになり意欲につながりますし、家族の良い関係づくりにもなります。

「増やす言葉」と「減らす言葉」

 これは、「尊在づくり」の方法の2つ目です。日常の言葉の中で「増やす言葉」とは、子どもとの会話の中で、「どれどれ」「なるほど、なるほど」「そうか」など、子どもの発達にとって大切な、存在感を認めてやる言葉です。

その逆に、子どもの発する「うるさい」「いやだ」や、親の「早く、早く」「ダメね」「どうしてできないの」などは、「減らす(べき)言葉」です。自分はダメ人間だと、自己否定意識を持たせます。「増やす言葉」「減らす言葉」を、家庭内でちょっとでも意識してみることで、子育ての大いなる「旗振り」になるのではないでしょうか。

自分はどちらが多いか、家族で話し合ってみると良いでしょう。実際、お父さんが数えてみると、お母さんが「は・や・く」を1日26回、お子さんに言っていたとか。

「持ち場」づくりの大切さ

 「愛言葉」や「増やす言葉・減らす言葉」の他には、子どもの「持ち場」を作ってあげるという方法もあります。「持ち場」とは役割のことです。「持ち場を得て子どもは光る」という言葉もあるように、自分がやれることや、自分が生かせる場所を持つことは、自分の存在価値を高め可能性を広げていきます。

以前、大横綱・千代の富士が「強いから横綱なのではなく、横綱だから強いのです」と言っていました。体格には恵まれなかった千代の富士関でも、横綱という「持ち場」を得ることで、自分なりの自信と強さを確立させたのです。

 家庭内で考えると、良い機会がお手伝いです。親の都合で場当たり的に頼む「お手伝い」ではなく、「お仕事」として任せてみましょう。掃除を頼む時は具体的に場所を決め、階段の特定のある場所を任せるなどしてあげてください。「一人掃除」と名付けています。お子さんの階段の特定の思いれの場所は、いつもピカピカですよ。もちろん、幼児でも大丈夫です。

我が家では子どもにそれぞれ「いただきます係り」(3歳児がこの言葉をかけないとご飯が食べられない)や「玄関大臣」などの「お仕事」を用意しました。役割を与えると、子どもは責任感がわき、一生懸命取り組むようになります。そしてその目に見える成果は、より一層子どもにやる気と自信を与えてくれます。上手に「持ち場」を作って、お子さんの「尊在感」を高めてあげることが大切です。

法人特別参事(名誉教授) 新富康央
(2020年8月28日國學院大學 SUKU SUKU SCHOOL(FMヨコハマの番組『Lovely Day♡』7月放送)より転載。)

最新情報をチェックしよう!