子育てと絵本
―友だち・疑問・数や形・言葉―

國學院大學人間開発学部の先生方による子育てエッセイをお届けします。幼児期から小学生までの子育てファミリーへの応援メッセージが込められたエッセイです。

絵本の読み聞かせは、子どもの成長にとってさまざまな意味と効果があります。今回は「子育てと読書」をテーマに、おすすめの絵本を紹介します。

『ともだちや』―友達ってなんだろう―

4、5才は、友達との関わり方に親子共に悩みが出てくる時期です。この『ともだちや』は、友達とは単に寂しいから一緒にいるのでなく、もっと心の深いところでつながっているものだと教えてくれる本。人間関係の本質を問う内容で、子どもだけなく大人にもおすすめです。

また、この本は『おれたち、ともだち!』シリーズのうちの一冊。お気に入りのシリーズができると、同じ「作者」の他の絵本へ興味が広がります。こうした興味の広がりは、小学校以降の国語の学習で、作者を意識して物語を読んだり、日常生活の中で同一作者のシリーズ作品を進んで読書したりする子どもの姿につながります。

『野菜のおなか』―子どもは小さな科学者―

「なんで?」を繰り返す2、3才の子どものなぜなぜ期。素朴な質問に答えられなくて困ったことはありませんか?この時期の子どもは哲学者であり科学者です。大人が当たり前に思っていることでも疑問をもち、どんどん質問してきます。

そんな時大人は答えを知らなくてもいいのです。「じゃあ、一緒に調べてみようか」と面倒に思わずに根気よく付き合ってあげることが大切です。そのことが子どもの興味の幅を広げます。

『野菜のおなか』は野菜の断面がシルエットで出てきて「これなんだ?」と次々に問いかけてきます。クイズや野菜スタンプ、続きの絵本づくりなど、ストーリーを読むだけなく想像力を育むこともでき、様々な広がりを楽しめる本です。

『時計の王様』―数や形、時間への興味を広げよう―

時間の概念や見通しを持って生活できるようになる4、5才にぴったりなのが、この『時計の王様』。王様の顔が時計になっていて、お子さんと一緒に「今、何時かな?」と会話をしながら読んで欲しい本です。

今の子どもたちはスマホなどデジタルの時間を見ることが多く、家に時計がないことも。アナログ時計は時刻や時間の概念の理解を促し、「何時になったらおやつを食べよう」といった見通しをもって生活することを学ぶのにも役立ちます。

『あっちゃん、あがつく たべものあいうえお』―日本語の音と文字に興味をもてるように―

子どもたちが言葉を覚える時、身近にあるものからランダムに覚えることもありますが、カテゴリーや関連語のように構造化して覚えることもあります。

この絵本は、子どもたちの興味をひくような馴染みのある食べ物がたくさん出てきて、それが色々な言葉に派生していきます。お子さんの語彙が自然に増えていく、そんな絵本です。

文字が大きいので、書き方のお手本にもなりますし、小学生になって辞書を引く時の「あいうえお検索」の理解にも役立ちます。文字に関心をもつきっかけにもなる本です。

『ことばあそびうた』―言葉遊びを楽しもう―

幼児期後半から語彙が増えてくると、言葉遊びを楽しめるようになります。しりとり、早口言葉、回文など言葉遊びにも色々ありますね。谷川俊太郎さんの『ことばあそびうた』は古い本ですが、お子さんと一緒に言葉と音を楽しめる詩集です。

子どもによっては、物語より詩のようなリズムがある言葉に興味をもつ子もいます。言葉遊びというとレベルが高い感じがしますが、身体の動きを入れると小さな子どもでも十分興味をもてます。

ヨーロッパに比べると日本は小さい頃から詩を鑑賞したり詩を詠んだりする学習機会が相対的に少ないので、幼児期から詩に親しんでほしいですね。

人間開発学部准教授 吉永 安里
(2020年12月17日國學院大學 SUKU SUKU SCHOOL(FMヨコハマの番組『Lovely Day♡』11月放送)より転載。)

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